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四天王緊急ミーティング


 魔王城三階にある小会議室で四天王による緊急ミーティングが行われた。


 小会議室は二階の大会議室と異なり設備が乏しいのだが、室外に声が漏れないのが都合いい。

 巨漢のサイクロプトロール、妖惑のサッキュバス、聡明のソーサラモナーが自分専用のマイボトルを持参して机に置いているのだが、サッキュバスのマイボトルの中身は……恐らく酒だろう。

 少し頬がチークを入れたように薄っすらと赤く染まっている。昼間っからほろ酔い?

「デュラハンったらあ、あまり胸元ばかり見ているとムッツリスケベなのがバレるわよ~」

「断じて見てないっ――! そもそも私には顔がないから目もないのだ!」

 そもそも、洗いざらして首元が緩くなった白いTシャツを着てくるなと怒りたくなる。もう冬なのに季節感がなさ過ぎる――。四天王の一人としてもっと自覚し、正装をするように指導してやりたい。

 隣に姿勢正しく座っているサイクロプトロールを少しは見習ってもらいたい。普段は上半身裸なのに……きちんとシャツを着ているのだ。力自慢の巨漢が……白いワイシャツにカフスボタン……。凶暴なイメージが微塵も感じられない。ズボンも黒のスラックスだ。

 ソーサラモナーはいつもと同じだ。薄汚れたローブ。魔法使いなんてそんなものだ……埃臭いから洗濯して欲しいぞ。


「時間がもったいないから率直に聞く。この世で驚くほど恐ろしい物とはなにかを聞かせて欲しい。魔王様が変身したがっている」

 それだけ言えば今日の議題が伝わるのだ。さすが四天王と褒めてもらいたいところだ。

「……」

「恐いものか……」

「要するに、この前に勇者一行が攻めて来た時、あまり怖がられなかったのが魔王様はショックだったんだな?」

「魔王様優しいから……顔立ちも童顔だし」

「そこで変身って訳か……」

 四人で腕を組んで難しい顔をする。私も難しい顔をしているのだが、伝わっているかどうか……。


「だが、ラスボスがピンチになると変身するのは何故だ? なぜ最初から変身しないんだ?」

 サイクロプトロールの意見に同感だ。それが正論だと思う。

「フッ、そんなの簡単さ。ラスボスにとって変身後の姿は、醜態なのだ」

「――醜態!」

「ああ。普段は見られたくないのさ。だが、負ける訳にもいかないから仕方なく変身して醜態をさらけだす。『窮鼠猫を嚙む』と同じさ」

 ソーサラモナーの丸い眼鏡がキラリと光った。

「なるほど」

 ……窮鼠猫を嚙むとは……微妙に違う気がする。鼠は変身しない……ハムスターはハムスターだ。

 そんな醜態を見せたがっている魔王様……我々とは次元が異なるお方だ。


「はい!」

 急に手を上げたのはサイクロプトロールだ。四人しかいない狭い会議室で律儀に挙手して発言権を求めないで欲しい。

「どうぞ」

「恐いと言えばやっぱり、下半身全裸のロリコン親父が怖いと思うが、どうだろう」


 うわー鳥肌が立つほど怖い!


「きゃー怖いわ! 下半身全裸だから半裸なんだろうけど、そこが一層怖いわ!」

「そうなのか? それほどまでに怖いのか」

「ロリコンだけなら怖くないが、下半身全裸ってところがミソだな。怖さ倍増だ」


 魔王様が下半身全裸姿で現れたら……。――滅茶苦茶怖い!

「その姿で、『フハハハ、世界の半分をやろう』とか言ったら――大変だ」

 なにがもらえるの分かったもんじゃない! ゾワッと鳥肌が立つ!


「アイデアはいいと思うが、やっぱり下半身裸は駄目だ。色々な制約に引っ掛かる」

 R15だとかPG12とか……。

「そこはモザイクでなんとか誤魔化せないだろうか」

 それはどういう処理だ? 新しい魔法なのだろうか……。

「たとえば……魔王様は『モザイク』を唱えた! 魔王様の下半身にモザイクがかかった!」

「勇者は『モロミエ』を唱えた! 魔王様のモザイクが消え去った!」

「キャ~! 大変だわ」

 サッキュバスが大笑いしている。会議中なのに~!

「駄目だ駄目だ! 却下だ」

 魔王様が下だけとはいえ衣類を脱いだら、確実に防御力が下がり弱くなってしまうではないか。


 怖いものイコール強いではないのだ。



読んでいただきありがとうございます!

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