戦前の戦後処理
王城に到着したぼくらは謁見の間でアルフレド王から大量の報奨金と王自らの手で打ったという剣を受けた。凄いはすごいのだろうけど、ぼくは剣などろくに使えない。とりあえずインベントリーに収納して、いつか礼装とかするときに下げさせていただこう。
「いま戦争の準備で王城はバタバタしてるからな。飯は迎賓館で我慢してくれ。料理人は同じだしな」
さすが質実剛健で知られるドワーフ、合理的な割り切りが凄いな。謁見の間でも畏まらず要件をサクサク進めてたしな。そもそも王が出てくるセレモニーとか省略して一緒に入室してるし。
良くも悪くも賓客に対する態度ではなく家族への扱いだそうな。
サシャさんなんか渋い顔をしてたけど、ぼく個人としては、特に不満はないかな。
クラファ殿下も気にした様子はなく、アルフレド王に確認する。
「陛下、戦争というのはエルロティアとですか」
「あいつらは後だな。まずはヒューミニアの残りとだろ。決着まで、二日ってところか?」
「銃兵部隊を残したのは、まさか彼らだけで」
「だけで、とはいうがなクラファ。マークスから受け取った“えすけーえす”があれば、戦争というより虐殺だ。敵が出てくるまでの待ちを考えて二日といったが、当たれば半刻と持たんぞ?」
まあ、そうかな。装甲馬車や盾持ちの重甲冑はアサルトライフル弾では抜けないだろうが、この世界の装甲は動力が生身の人間や馬だ。稼働部は脆いし露出も多いから狙い撃ちされると重装甲もあまり意味がない。
魔導師が集団で出て来たら苦戦するかも、というくらいか。練兵場の城壁に立て篭もった五十人以上の銃兵部隊を駆逐できるとは思えない。地龍という選択は賢明だったな。
「そもそも、出て来ますかね」
ぼくの素朴な疑問に、アルフレド王は苦笑して肩を竦めた。
いまやヒューミニアに残っている王族は王と第一王子だけ。そのふたりが倒れたら国は瓦解する。それ以前に、求心力と影響力を失ったであろう王たちを排除して、クラファ殿下を担ぎ出そうなんて勢力まで出て来かねない。そんな状況で大きく目減りした戦力を国外に出すかな。
アルフレド王の余裕を見る限り、対抗勢力はもう出て来ているのかもしれない。
「そんなわけで、俺が王城に戻ったのは、ヒューミニアが片付いた後に残るエルロティアの火種をどうするかって算段のためだ」
勇ましい感じで玉座に座った王は、サシャさんをチラッと見て伸ばしかけた背筋を戻す。
「ま、まあ、政務が滞っているというのも、あるがな」
「おそれながら、陛下」
ぼくはアルフレド王に、念のため確認を取る。
「ぼくとクラファ殿下は、一両日中にエルロティアに向かいます」
「ああ、聞いてる」
引き止める気はないし干渉もしない。協力できることがあれば何でも、どれだけでも手を貸すと断言してくれたのだ。そんなアルフレド王に、ぼくは正直な手の内を見せた。
「“エルロティアとの戦争”は、要らないかもしれませんよ?」




