アルフレディア
アルフレド王がいった“二刻”は馬と馬車での想定だったようだ。ハンヴィーの先導で順調に行程を消化したぼくらは、二時間と掛からず首都へと到着した。
……らしい。
「モラグさん、人やら建物が増えて来ましたが、“アルフレディア”は、どの辺りですか?」
「もう入ってますね」
「え?」
「厳密な区分でいえば、この先にある……王城を囲む水堀のなかが首都ということになるのですがね。皆あまり気にせず、この辺りまで引っくるめて首都と呼ばれます」
「城壁は?」
「何度か建てようとはしたらしいですが、商都としての発展が早過ぎて断念してます。いまは、もう無理でしょう。こんな広範囲は囲えませんし、意味もないです」
「たしかに」
アルフレディアの人口は二千ほどという話だけども、流入する短期滞在者がその数倍いて、だいたい五千前後のひとが暮らしている。人口比率は混血を含むドワーフ系が四割、エルフ系が二割で獣人系が三割、その他……というかどの系列にも属さない人間が一割だそうな。
「まあ、どの系列も純血は一割くらいです。特にハッキリした区別があるわけではないです」
それでも比率に現れているのは、他と混じり合わない暮らし方というか、生活習慣や居住区の違いのようだ。例えば、軍のように皆が同じ暮らしをする集団では扱いも待遇も差異はない。
「銃兵部隊もそうですが、能力主義の現場に純血は少ないですね。コルニケアの贔屓目もあるかもしれませんが、混血の方がなんというか……逞しいところがありますから」
モラグさんは少し気を使った表現をしたが、実際それは事実なのかもしれない。純血種は一般に雑種より脆い。あと、血統云々よりもそれを“気にしない”感じがコルニケアの気風に合っているようにも思える。
「王城の近くに迎賓館という名ばかりの宿がありますので、クラファ殿下とマークス殿は、今日はそちらでお休みください。大袈裟な式典はありませんが、おふたりを歓迎いたしますよ」
「ありがとうございます」
人通りが多くなって静々と進む車列は、なかなか王城に近付いていかない。ゆっくり動くBTRの屋根で、ぼくは“武器庫”を立ち上げ商品在庫一覧を確認する。
最初はいつ買おうと同じことだと思っていたんだけど、意外に在庫の量と種類と値段が変動しているのがわかった。どういうことなのかは……あまり考えない方が良いのかもしれない。
武器や兵器が異世界転生した理由なんて、きっとあまり幸せな話じゃない。
今後使いそうな銃や兵器や弾薬を、いくつか選んで“購入済”欄に送る。必要なときがきて売り切れでした、は避けたい。
「マークス殿、もうすぐ着きますよ」
周囲の歓声に顔を上げると、いつの間にか王城が目の前まで迫っていた。




