翻弄される者たち
襲撃してきた盗賊たちに拠点を吐かせ、そこを捜索したところ魔術杖が出てきた。モラグさんたちは簡単にいうけど、戦闘終了から三十分と経っていない。
銃兵部隊ってホント有能なのね。というか、口には出さないでくれたけど南東側の敵はクラファ殿下が丸ごと吹き飛ばしちゃったので、代わりに南西側で可能な限りの情報収集を行ってくれたっぽい。
現在、彼ら手分けして焼け跡の捜索をしてくれてる。
「盗賊団の拠点から、ワンド以外に目ぼしいものは発見されませんでした。書類も貨幣もありません」
「魔術杖は処分し切れなかっただけか。貧乏性が仇になったな」
魔法の杖をストックしておくメリットがあるのかと思ったけど、王とモラグさんの話を聞く限り、逆だ。
盗賊団の連中は、足がつくから換金できなかったのだ。使い込んだワンドなんて個人情報の塊みたいなもので、売ったら即座にバレて素性を辿られる。そのくせ貨幣価値は金貨数百枚だから捨てるのも躊躇われる。魔石・魔珠を分解するにも、どんな警報装置が仕込まれてるかわかったもんじゃない。
で、こうなったと。
「尋問は続けていますが、あまり有用な情報は与えられていない印象です。あちらが逃げ出す時間を稼ぐ捨て駒ですね」
モラグさんが指したのは、南東側の焼け跡。本命の魔導師たちが捨て駒より先に全滅という想定外が起きたわけだ。
「陛下!」
捜索中の銃兵部隊から声が上がり、アルフレド王とサシャさんが駆け足で向かう。モラグさんはといえば、王への中間報告を済ませたのでまた尋問に戻るようだ。
「予想外の足止めを食らいましたね」
「そうでもないな。あの赤色烽火を見たときから、わたしも兵たちも覚悟はしていた。軍や戦闘集団で危急を告げる招集信号だからな」
狼煙、こっちじゃ烽火というのね。煙の色と上げ方で通達内容を変えるんだろう。マークスの知識に“赤い狼煙は集合の合図”というはあったが、それ以上のことは詳しくない。
「姫様、その……狼煙の招集範囲は、どのくらいです」
「範囲? いや、不特定の対象に向けてのものではないので、わからんな。視認範囲というならば、二キロメートルくらいがせいぜいだろう」
「クラファ、マークス!」
声に振り返ると、アルフレド王が呼んでいる。直前まで何か引っ掛かることがあったのだが、その途端に忘れてしまった。もう……




