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帰路と叉路

「その先に高台があります。あそこで休もうと陛下からの提案です」

「了解」


 ぼくの休憩提案がモラグさんから屋根で跨乗(デサント)中の部下に伝えられ、そこからハンヴィーに同乗している銃兵部隊の部下に伝達され、アルフレド王の返答が返されてきた。

 手信号らしいけど、よく通じたな。王様ノリノリで先行しちゃって二百メートルは離されてるのに。


「モラグさん、食事の支度を手伝いますか?」

「いえ、結構ですよ。“金床亭”で軽食を作ってもらいましたから」


 自分たちは“武器庫”でどうにかなるという過信から、食事のプランが適当だった。

 ぼくも女将さんに頼んで“金床亭”の料理はインベントリー収納しておいたけど、鍋に入ったシチューが何種類かと、大量の平焼きパンだ。

 対して、王たちが用意したのは片手で食べられる肉入りサンドイッチみたいなもの。出先で簡単に済ませるなら、これが正解だった。よく考えたら、この状況でテーブルと皿と食器が必要な食事って、ないな。


 それはそれとして、相変わらず美味い。平焼きパンにスパイス入りラードを塗って岩塩まぶした薄切り肉と晒してないスライス生玉ねぎを挟んである。なぜこれが美味いのかわからない。ぼくが作ってもこうはならない。

 戦さ場慣れしているのか真っ先に平らげたアルフレド王が、高台から見下ろしの地形を確認しながらぼくを呼んだ。


「マークス、“はんびー”は、あとどのくらい走れるんだ?」

「走り方しだいですが、二、三百キロ(千ファロン強)じゃないですかね。首都までは持ちますか?」

「おそらく大丈夫……だろうがな」


 荷物になるので、予備燃料やスペアタイヤは向こうに着いたら渡す予定だった。あまり長期間経つとタイヤも燃料も劣化するので常備戦力には出来ないと伝えてある。

 研究し尽くして新しい技術発展が得られればそれで良いらしいけど。いまの話は、それじゃない。


「どうしたんです。ルートに問題でも?」

「問題というほどでもないが、意見を聞きたい。この先の二叉路で、山道と海岸沿いに分かれる。この巨体で山道はキツいかと思ったんだが、海岸を回ると十キロ(五十ファロン)ほどの迂回になる」


 この二台だと、どっちの道が良いかという質問だが、距離は大した問題でもなさそうだ。王たちは来るとき馬車で通ったというから、山道の方でも道幅や勾配は問題ないかも。それより気になるのは、強度だ。


「どのくらいの重さまで耐えられる道なのか、ですね。路肩が脆いとか、崩れやすい場所なら無理です。BTR(こっち)の重量はハンヴィーの倍以上ありますから」

「地盤は硬いし整備もされてるぞ。なんせ元・国営鉱山だからな。先王時代に掘り尽くして遺棄されてからは反政府勢力の総本山だ」

「こんなところに?」

「ここ以外の叛徒どもは、あらかた俺の代で狩り尽くした。往路(くるとき)も何十人か削ってやったんだがな。この二台で問題ないなら、ちょっとばかり()()()()に付き合ってもらえるとありがたい」

「なるほど」


 狼煙か呪術か煙幕か。いちばん大きな山の上に赤黒い煙が上がっていた。

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