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【完結】国賊王女のサーバントに転生したら、特殊スキル「武器庫(アーモリー)」が覚醒しました!  作者: 石和¥
3:邂逅コルニケア編

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ブレスオブファイア

 いきなり知らない単語がいっぱい出てきて、ぼくだけ置き去りになってる。

 装甲馬車は、前にも見た。小銃弾程度なら弾くのも理解している。魔導なんだかも、たぶん元いた世界にあったカタパルトやらいうのの亜種だろう。射程次第だけど、どうにかなる。


「姫様、“地龍”って……ドラゴンのことですか?」

「翼のないドラゴンだな。飛ばないが硬い鱗を持っていて、人を喰らって街を滅ぼす」

「そんなのがいるんですね。その鱗、硬いって強度はどのくらいです」

「長弓の(やじり)や対人の攻撃魔法は易々と弾く。“ゆーえむぴー”は無理だ。おそらく、“えすけーえす”も通用しない(とおらん)


 なるほど。拳銃弾(UMP)は話にならない。アサルトライフル弾(SKSカービン)も無理っぽい。となると、フルサイズ小銃弾(M240やMG3)も難しそう。重機関銃弾(Kord)でどうにか、というところか。

 いざというときのバックアップは欲しい。それか、いっそのことハンヴィーで打って出て翻弄するかだ。


「アルフレド陛下、コルニケアの布陣はどのようにお考えですか?」


 兵士たちには各個射撃練習を行うよう伝えて、ぼくらは少し離れた位置に移動する。練兵場の指揮官が監視・指導するところらしく一段高くなっていて、全体が見渡せる。


「サシャ、クラファたちにも見せてやれ」

「は」


 絶望的な表情を抑えて、サシャさんは簡易テーブルに地図を広げる。コルニケアを中心に描かれた簡易的なものだけど、敵軍侵攻の障害になる地形と、こちらが迎え撃つ防衛施設、守るべき人口密集地はわかる。

 そこに、サシャさんが色分けされた木片を置く。簡易的な造形で、なんとなく兵種が理解はできた。


「いま確認されている敵の配置は、このように」

「装甲馬車を移動盾にして後続を押し上げるか。まあ、俺でもそうする」


 装甲馬車が中央前方、歩兵がその後ろ、そのまた後ろに弓兵と魔導師、左右離れた位置に騎兵。

 配置は、ごく普通だ。

 わかってたことだけど、これはコルニケアの兵が銃を持っている前提での布陣だな。


「ケウニア側からコルニケア領内に入る場合、国境の関所がある隘路(ここ)を抜けるしかありません。最も狭い場所で幅二十メートル(十分の一ファロン)。ここを避けた場合、他には山地(やま)渓谷(たに)を越えるしかありません。甲冑を身に付けての移動は、ほぼ不可能です」

「逆にいや、敵にここを抜けられるとコルニケア(こっち)()()だ。山がちで騎兵(うま)が少ない上に寡兵、となれば数の暴力を止められん」


 なるほど。関所から入ってすぐのところに練兵場、その外周に組まれた城壁はコルニケアに入ってきた敵軍を迎え撃つような配置になっている。街道の西側は崖と谷間で塞がれ、東側に城壁があるのだ。初めて入国したときには特に気にしてなかったけど、あれが防衛線だったんだ。


「あの……すみません陛下、お訊きして良いのかわかりませんが、コルニケアの軍って、どのくらい」

「マークス」


 姫様が小さくぼくを咎める。やっぱダメか。軍事機密だもんな。


「クラファ、構わんぞ。彼我の兵力差を知りたいんだろう。常備兵力は、二百だ」

「え?」


 そんだけ? という言葉を辛うじて呑み込む。練兵場にいる七十人を見ても練度が高いのはわかるけど、さすがに二百じゃ戦争できないと思う。

 もしかして、自衛隊的なコンセプトの軍? 専守防衛で遠征能力はカット、職業軍人は下士官以上だけ、みたいな。


「コルニケアは国民皆兵って()()があってな。税が低い代わりに軍備が薄い」


 建前って、王がいっちゃって良いんだ……と思ったけど、良いわけがなく。サシャさんが苦虫を噛み潰したような顔で見ている。口を挟まないのは、余計な話をしてる状況じゃないという気遣いだろう。


「国土の中央部が狭くて入り組んだ鉱山、おまけに鍛冶屋も多いって土地柄だからな。敵の侵攻に対して抵抗するだけの武器も力もあるが、それは軍でも兵でもねえ。ただの叛徒だ」

「陛下」


 他国の人間を前に、さすがに度が過ぎると思ったのか、サシャさんがやんわりと止める。アルフレド王は彼女を(なだ)めるように手を振って笑い、真顔になってぼくを見た。


「そこで訊きたい。あいにく()()()()()()()は他にもあってな。ケウニア相手に割ける兵員はこの七十が限界だ。マークス、勝てると思うか?」


 王様と姫様とサシャさんと。視線がぼくに集まる。

 たぶん、射撃練習をしている兵士たちも、こちらの会話が気になってはいるんだろう。たまに、射撃間隔が乱れている。

 良くないな。気が散ったままの射撃訓練なんて、危なっかしくてしょうがない。


「あはははははッ! “勝てるか”、ですって?」


 いくぶんわざとらしい手ではあったけど。ぼくは大きく笑い声を上げた。

 案の定、こちらに背を向けていた射場の兵士たちが反応し、ピタリと射撃が止む。

 彼らに聞かせる目的だとは王様も――サシャさんと姫様も――理解しているのだろう。無礼な行いを咎められることはなく、王は苦笑混じりの目顔で“続けろ”と促してきた。

 ちょうどよく静まり返ったところで、ぼくは芝居掛かった感じに両手を広げる。


「ご冗談でしょう。陛下が心配するべきなのは、()()()()()()ですよ」

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