テーブルにチップを
「陛下!」
肉の盾になろうと自分に覆い被さって来たサシャさんを、アルフレド陛下は片手で持ち上げ、ソファに座らせる。
「落ち着け。こいつに敵意はない。考えもないがな」
あれ。拙かったか。そうだよね、どう見ても武器だし。危険なのは、ふたりともわかっているわけだし。
「……すみません、サシャさん。陛下も、無礼な真似を」
「すまん、サシャ殿。うちのサーバントは、貴殿が護衛だということさえ認識していなかったようだ。王と同室にいて武器を持つ大罪もだ。申し訳ない。罪はわたしが受ける」
何かいいかけたサシャさんを、王は宥めるように抑えてくれていた。
「すみません、弾薬は入ってないですし、銃口も自分側向きにしたつもりなのですが……」
「マークス。貴様の世迷言を容れると、刃入れしていない武器なら抜いても良いという理屈にならんか」
「……申し訳ありません」
「いや、良い。それでわかった。サーバントが化けたっていうのが事実だったとな。俺は、物の喩えでいったつもりなんだが」
なんやかんやといいつつ、アルフレド王はSKSカービンを手に取って眺める。
「動かして問題ないか?」
「はい。いまは打ち出される弾薬という物が入ってませんので、ただの鉄の塊です。銃身の先にある短剣は刃が付いた物なので、それだけ気を付けてください」
「なぜ内向きに剣を……ああ、起こすと槍になるのか。面白いな」
王は我を忘れて、ぶつぶつ呟きながら銃のあちこちを触り始めた。
「あの、陛下……?」
「無駄です。こうなると、半日は戻ってきません」
「はあ」
対面に座るサシャさんは、かなりご機嫌斜めである。隣に座っている姫様もだ。
今更ながらにやらかしたことを自覚する。考えてみれば当然の話で、さっきまでは交渉を有利に運ぶことしか頭になかった。
「お茶でも、淹れましょう」
「あ、あの、結構です」
立ち上がろうとしたサシャさんを、ぼくは身振りで止める。少しはフォローしとかないと、冷え切った空気が辛過ぎる。
「せっかくですから、お詫びに、ぼくが何か出しましょう」
「……マークス」
「大丈夫です、姫様。今度は、ちゃんとお断りして出します。出すのも、食べ物と飲み物だけなので、危なくないです。ホントに」
なんか、半信半疑な女性陣の前で、ぼくは“武器庫”を立ち上げ、発光パネルに並んだ商品在庫一覧を確認する。
“武器”“車両”“弾薬”“被服”“燃料”などタブごとに分かれた端の方に“糧食”がある。
これまでは慌ただしくてミネラルウォーターとレーション、後は缶詰くらいしか購入してなかった。
何かないかと下の方までスクロールしてみる。
基本的にはサープラスショップみたいなものなので“良い物”は見当たらなかったけど、“面白そうな物”はあった。
「じゃ、出しますよ?」
「何をだマークス。先にいえ」
信用ないな。当たり前かもしれないけど。
ぼくは姫様とサシャさんに伝わるわけないよなと迷いつつ、購入したものを告げる。
「アメリカンスイーツです」




