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狐狼

「どのくらい、出て来ると思います?」


 ぼくは慣れない馬の制御に戸惑いながら、クラファ殿下に尋ねる。

 馬は頭の良い生き物で、乗り手の技量と器を見るのだとか聞いたことがある。ぼくが乗る芦毛の馬は、姫様のチョイスが良かったのか事前に説得でもしてくれたのか、“しょうがないなー”とでもいうように望みを汲んで動いてくれた。

 殿下の乗る栗毛は側から見ても楽しげに足を運んでいるから、あっちは本当に認められている乗り手なのだろう。


「ケウニアからの雇い兵なら百、ヒューミニアの軍閥を巻き込んでくるなら五百は来るが……それはなさそうだ」


 殿下は背後に視線を向けて首を振る。二国間を繋ぐ陸路はここだけだ。後は森を突っ切るか、海路しかない。いずれにしろ、あまり現実的ではない。


「ケウニア軍は、ヒューミニアの兵と似たような編成ですか?」

「弓兵の層が厚い。森林に囲まれた土地柄、猟師が多いのでな。盾も手持ちと設置型の併用だと聞く」


 あんまり、銃と相性が良くないな。


「それと、エルフが雇われている可能性を考えておけ」

「え?」

「森の民と呼ばれる耳長族だ。長弓と魔法を使う」


 あんまり、ではないな。銃とは致命的に相性が悪い。


「戦闘は避けましょう」

「なに⁉︎」

「もちろん、可能な限りです。リスクが大き過ぎます。利益もない」


 先ほどの戦闘は、相手がたったの十五やそこら。しかも高度差でアウトレンジから一方的に攻撃できたから勝てたのだ。待ち受けている敵が百となれば、こちらが蹂躙される側になる。

 避けられないなら別だが、確実に勝てる戦いしかしない。姫様に伝えると、意外そうな顔をされた。


「不死者も死を恐れるのだな」

「あんなものは、生涯に一度でも十分ですよ」


 本音をいえば、クラファ殿下を巻き込んでまでリスクを背負いたくない。自分が苦痛を味わうのも望みはしないけどね。


「避けるというが、つまり森に分け入るのだろう?」

「そうです。森の民に対抗できる武器が欲しいですね」

「そんなものがあるのか?」


 知りません。

 ぼくは弱音を呑み込んで、精いっぱいの笑みを浮かべる。


「ないこともない、ってところですかね」

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