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王と王

 盾の陰から炎弾を発射しようとしたらしい兵士がPKTの銃弾に倒れる。


「返答がなければ、ここで配下ともども死ぬだけだ」

「ふざ、けるなッ!」


 砲塔から叫んだ姫様の声が聞こえていないかとも思ったが、反応を見る限り、そういうわけでもなさそうだ。

 というか、盾持ちの兵士が少しずつヘルベルから離れている気がする。

 人望、あんまないのかも。


 もはやここまでと思ったのか、銃器と向き合うよりは勝ち目があると踏んだか。ヘルベルは盾の陰から立ち上がると、腰の長剣を抜いてBTR(こちら)に突きつける。


「掛かってこい、ヒューミニアの“混じり者”が! エルロティアの玉座に着く真の王が誰か、教えてやる!」


 不安そうな子供たちに笑顔で手を振り、クラファ殿下は天井のハッチから屋根に出る。


「貴様は車内(ここ)にいろ。何があっても動くな」

「しかし、卑怯な真似をするかも……」

汚い手(それ)も含めて“王の器量”だろう。わたしの力がどれほどのものか、見ているがいい」


 ショルダーホルスターを外し、UMPサブマシンガンと一緒に屋根へと置いた。嵩張る装備はあらかた外して、武器は腰に下げた細剣だけになった。


「ああ、これは失くすといかんな。少しだけ預けておく」


 そういって最後に振り返ってポトリと、ぼくの手に何かを落とす。

 それは、小さな古い鍵だった。ブレードに切り欠きはなく、解錠機能があるようには感じられない。素材や装飾や埋め込まれた魔石は高価そうなものだが、まるで“象徴的な形態を模しているだけ”という印象があった。


「姫様」

「覚えておけ。それは、()()()()わたしのものだ」


 マークスの知識にはなかったけど。ぼくも知らなかったけど。それでも、わかった。これが……

 従僕(サーバント)の隷属を解く鍵なのだと。

 “隷属印”の力を解放すると、身の破滅と引き換えに人外の力を手に入れると聞いたが、それは主人(あるじ)の権利だ。従僕自身が行うことはできない。この鍵に出来るのは。

 隷属契約の解除だけ。


「クラファ殿下」


 振り返った姫様に、ぼくは車内から告げる。


「ここに、宣誓を。もし御身(おんみ)に何かありましたら、ぼくは全ての力を持って、エルロティアを、そしてヒューミニアを滅ぼします。人種の別なく人民を根絶やしにし、国土を更地(さらち)にいたします」


 さすがに予想外だったのか、姫様は呆れたように首を振って少しだけ口元を綻ばせた。


「魔王を従僕に持った覚えはないんだがな?」

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