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待ち合わせは3番スタジオ

作者: 奈々


ハッピーエンドの定義について考える。


お別れがバットエンドだとは限らない。

結婚がハッピーエンドとも限らない。


人生にはゴールはない。


別れにはきっと、ハッピーエンドとバットエンドの両方があって、他人に戻る恋人たち。


一生を寄り添う2人は終わりが来ない。

死がふたりを分かつまでは。

________________________________________


じめついた地下にある音楽スタジオ。

高校生〜おじさんまでたくさんの人が来る。


そこが私のバイト先。

フリーター生活をしてどれくらいだろう。


ここは時間がゆっくり流れている。

大学を卒業して就職もせずにここに残って

もう、3年になる。


バイトは週5シフト制。

もう一つ派遣のアルバイトをしてる。


貯金も目標も特技もない。

誰にも必要となんてされない。


そんな私に呆れて彼は別れを決めた。

もう、別れて2年経つのかな。

目標があって、キラキラしてた。

あんな生き方ができたらいいのに。


そう思いふける開店1時間前。

午前9時を時計が指す。


ここ最近の楽しみは、出勤前に

誰もいないスタジオの薄暗闇の中で

ぼーっとコーヒーを飲むこと。


近くにあるタリーズに寄ってコーヒーを買う。

早番の日に会うお兄さんとは顔見知りになった。

今朝も「これからお仕事ですか?」

と笑いかけてくれた。


接客してる上で私も常連さんに同じようにする。

でも、すると、される、ではやっぱり違う。


誰かに気にかけてもらえる。

その暖かみが心地いい。

梅雨の時期、太陽を見ることもなく一週間が過ぎた。

そのせいで最近はとても寒い。


天気なんて気にしなくても

いつも薄暗い地下にいるけれど。


春の暖かさを懐かしく感じる。

雨で濡れた手をコーヒーで温める。


なんて、何もない人生なんだろう。

そんな虚無感が私を覆う。


お店をオープンしスタジオ練習に入る

駆け出しのバンドマン、文化祭に向けて練習する高校生、趣味でバンドを楽しむおじさま達を迎える。


いつもと同じ日常が流れる。


17時30分過ぎ、そろそろ帰ろうかと荷物をまとめ

今日の遅番の子に引き継ぎをしていると


タリーズで働くお兄さんが来た。

思わずお互いに「っあ…」っと声が漏れた。


少しの沈黙の後

「いつも来ていただいてる方ですね!ここで働いてらっしゃったんですね!」

っと言われ戸惑っていると、

遅番の子に「あれ、お知り合いですか?」


っと話しが膨らんでしまい、コーヒーを買って出勤してることを話す。


「そんなことより、バンドやっていたんですね。」

っと、私がいうとお兄さんは


「ええ、高校時代からやってるメンバーで本気でデビュー目指すって20代後半になって仕事辞めてやってて、俺ら馬鹿ですよね」

っと笑った。


とても、羨ましいと思った。

何かを変える勇気を持ってること。

同じ目標を持てる仲間がいること。

先が見えない未来に笑いかけられること。


「えっと…お姉さんもバンドやってたりとかするんですか?」

っと聞かれ

「高校から大学でギターボーカルしてました。今は全くですよ!」と答えた。


それから、3ヶ月。

彼はよくスタジオを使ってくれるようになり

お店を閉める時間に練習があると仲間達との

打ち上げにも呼んでくれるようになった。


少しずつ、惹かれ合うようになった。

まだ付き合ってはいない。


こっそり、暇な時間を見つけて2人でスタジオに入ってギターセッションをする。

そんな時間が愛おしかった。


私の生活に新しい光が輝きだした。

そして、それを皮切りに変わりだしたような気がした。

前向きに物事を考えて、就職活動を始めた。


もちろん、決まってはいない。

でも、大丈夫。


そして今日も、いつものように

君のいるタリーズでコーヒーを買う。


最後までお読みいただきありがとうございました!


音楽スタジオってちょっと怖いイメージ持ってる方もいると思うのですが、私が学生時代にアルバイトをしていたところは、とても楽しい場所でした。

たくさんの人がワイワイと未来や目標について話したり、喧嘩したり。

歌ったり泣いたり。色んなドラマがありました。


スタッフ同士で暇だから顔出しに来ました〜

とか、常連さんのライブに行ったりとか。


ただスタジオを借りて声を張り上げてみるだけでも良いので行ったことのない人は是非遊びに行ってみるのもオススメです。

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