2 宴会にしましょう
冒険者ギルド
「ふぅ。見つかってねえな。」
城を飛び出して、冒険者ギルド本部前にたどり着いた。マイルズが言ってた冒険者達はまだ来てねえみたいだ。いたとしてもフードを被ってるから、バレねえはずだ。
ドアを開けて中に入る。入ってみると、昼間っから酒飲んでるやつばっかいるじゃねえか。ここには冒険者以外も来るとはいえ、鍛冶屋のドワーフがいるのはおかしいんじゃねえか…?仕事サボって何してんだ。変わってねえなぁ。1年前と同じ、騒がしいギルドのままだ。
変わらないギルドの様子を見て、安心したとこで受付に向かう。そして、
「ミーナを呼んでくれ。」
「え?ミ、ミーナさんですか?…あの、今ミーナさんは忙しくて…。その、少し待ってもらえますか?」
「火急の用だと伝えてくれ。「クライヴが帰ってきた。」ってな。」
「え。は、はいっ!ちょっと待ってください!」
そう言って受付嬢は慌てて奥に入っていった。新人か?やっぱ俺のこと知らねえんだな。たった1年でこんな変わるもんなのか?…バカに綺麗な服でも借りるべきだったか。
そこで待っていると、急に後ろから衝撃が来る。振り返ると、目つきが悪いどこにでもいそうな冒険者が立っていた。
「おいおい。なんだァ?テメェはァ?」
「テメーこそなんだ。そっちからぶつかってきて、謝罪もなしか?」
「ぎゃははは!テメェ、俺様が誰か知らねェのかァ?」
「ああ、知らねえな。雑魚に興味はない。」
汚ねえ笑い方だな。喋り方からして雑魚じゃねえか。
「んだと?俺様はなァ!たった5ヶ月でBランクになったゲイブ様だぜェ?そんなことも知らねェのか!テメェは世間知らずのボンボンかなんかかァ?ぎゃはははは!」
5ヶ月もあってまだBランクか。そんなんで偉そうにしてんのか…。やっぱ雑魚だな。
「だから、雑魚に用はねえつってんだよ。失せろ。」
「あ"あ"!?なめてんのか!テメェ!」
雑魚が剣を抜く。めんどくせえな。どうするか。相手が剣を抜いたんだからしょうがねぇな。剣に手をかける。
バーンッ!!!
後ろから轟音が聞こえてきた。そしてその轟音の直後、俺の名前を呼ぶ声。
「クライヴ!?」
「久しぶりだな、ミーナ。」
フードを脱ぎ振り返って微笑む。俺の姿を見たミーナが、全速力でこっちに向かってくる。そして、
「いつ帰ってきたの!?何でそんなに服がボロボロなのよ!て言うか何でゲイブは剣を抜いてるのよ!?」
大声で叫ぶ。ん?ミーナにしては珍しく、髪は乱れてるしやつれているように見える。なんかあったのか?と考えていると、後ろからミーナよりでかい声が聞こえてくる。
「アニキ!!よくぞご無事で!!!」
「…ああ、お前らか。久しぶりだな。どうだ、ランクは上がってるか?」
ガラの悪そうな冒険者の集団。俺がここを発つ前、アニキつって慕ってくれてた奴らだ。見た目はあれだが、いい奴らだ。
…と、ギルド内が静かになっていることに気づく。ざっと周りを見渡すと、新人もそこそこ居るが、ほとんどが顔見知りだった。そしてそいつら全員に、
「久しぶりだな、テメーら。元気にやってたか?」
と言うと、今の静寂が嘘のように騒がしくなる。ほとんどの奴らが立ち上がって、俺のところに来る。順に挨拶される。全員の挨拶が終わると、ミーナが大声で言った。
「これから宴会にしましょう!クライヴの奢りで!」
「…は?」