1 最強の帰還
ウィシュト帝国帝都城門前
「あー。帰ってきた…って感じだな。」
俺は呟く。そして久しぶりの気持ちいい空気を思い切り吸い込む。ここは空気がいい…。そしてそのまま中に入ろうとすると、門兵に止められる。
「待て。入国審査を受けていないだろう。」
「は?何言ってんだよ。俺が誰か知らねえのか?」
「有名なのかどうかは知らんが、少なくとも俺は知らん。こっちに来い。」
「は?おい。ちょっと待て。俺は国王と知り合い…」
「そんな訳あるか!国王陛下が貴様のような薄汚い人間と知り合いなはずがないだろう。」
こいつら…。ほんとに俺のこと知らねえのか?つーか、俺の話聞く気ねえな!?ふっざけんな!ぶっ飛ばすかこいつら…。両手を握りしめて、振り払うために足を踏ん張る。そこで、誰かに声をかけられる。
「貴方は…。お、おい!何をしてる貴様ら!この方が誰か知らないのか!この方は…!」
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城内応接室
「あっはっはっは!ま…まじか。不審者と間違えられて城門で止められるとか…。ぶふっ。それはさいっっこう!しかも顔覚えられてないとか!傑作すぎでしょ!!」
「黙れ…。殺すぞ。」
「おお怖っ!君に言われるとシャレにならないからやめてよ。」
俺の前で大声で笑ったり、大きく肩をすくめたこいつは、国王だ。全くもって国王に見えない、威厳のあるようなやつらの中に混じったらどう考えても調子乗ってるバカにしか見えないこいつが、国王だ。 そして俺の隣に座ってるのが、宰相のーー。
「あー…。」
「どうかされましたか?」
「いや、お前…。」
「は、はい。」
「名前なんだっけ?」
「ぶふっ!!」
名前をど忘れして、聞くとまたバカが爆笑する。うぜぇ。宰相は少し顔を引きつらせた。そしてため息をついて、
「マイルズです。その、クライヴさん。こいつの名前は覚えてます?」
あーそうだ、マイルズ。そして、マイルズはバカを指差した。
「あー、リロイ。だよな?」
「正解っ!やっぱ親友の俺ことはよく覚えてるんだねー。どうだマイルズ!」
ドヤ顔を決めるバカ。俺はため息をついて、マイルズは舌打ちをした。ああ、ちなみにこいつらは幼馴染で、仕事の時以外は基本的にこんな感じだ。
「はあ。ったく。1年ぶりに帰ってきてみれば門兵には不審者扱いされ、そのあとギルドによる暇もなく王城に連れてこられ、挙げ句の果てにはバカの相手をしなきゃならねえとかどういうことだよ。」
「申し訳ありません。このバカがわがままを言ったばっかりに…。都合のいい時ばかり王命だとか言いやがって…。」
「ちょっとちょっと!さっきから思ってたけどさ、2人ともバカバカって。知ってると思うけど俺王様だからね?普通なら不敬罪で牢獄行きだよ?」
マイルズは話が通じるな。名前覚えとくか。にしてもバカは相変わらずだな。都合のいい時ばっかり王命を使うって言ってたが…。こいつならしかねない。というか絶対する。
「なるほど、不敬罪か。なら死刑か?それとも国外追放か?全然構わねえぞ。投獄するってんなら、俺は牢壊して逃げるけどな。」
「そんなことする訳ないじゃん!俺がクライヴ殺したり追い出したりすると思う!?」
「しねえな。だから迷惑なんだよ。」
「ひっど!」
別に生への執着はない。他国に行っても別に俺としてはなんの問題もない。困るのはこの国の方だからな。…それより、金が…。ギルドに依頼達成を伝えて来なきゃいけねえのに。バカのせいで遅れるじゃねえか。急がねえと、俺の金が待ってる。
「ああ、そうだ。クライヴさん。門兵のせいか分かりませんけど、依頼受けて外に出てた冒険者に帰ってきたことが知られたらしいんですよ。ギルドへいく前に遭遇すると依頼達成報告が遅れてしまうかもしれないので、急いだ方がいいと思いますよ。」
「なんだと!?それを早く言え!じゃあな!俺はもう行く。おいバカ、次くだらねーことで王命使いやがったら金に変えて使うからな。」
そう言って応接室を飛び出し、そのまま窓から外に飛び降りる。その後ろから、バカが
「え!?ちょっ!意味わかんないよ、それは!?」
とか言ってたけど知らねえ。もしやったとしたら、あいつが悪い。何が何でも金に変えてやる。それより今は、依頼達成報告のが大事だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!