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ふこしあ  作者: 山口かずなり
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さいごの子ども・ンゴン

四十七人目の子ども


「さいごの子ども・ンゴン」


ンゴンは、顔の見えない、陰湿な子どもです。 


カビ臭い部屋で、絵本をお尻から読み、気になる場面に親指を挟み、顔を近付けます。


すると、途端に夜が訪れ、お日さまが眩しく描かれている場面からオーブンの焦げた香りが漂います。


物語を読んでいると、無邪気な子どもたちが、しあわせになるまでの話が五十音順に書かれている事が分かってきます。


そして、話の終わりには、「‥は、しあわせな子どもでした」と、他人事のように終わるのです。


この「しあわせ」と書かれた文字は、ほんとうに、「しあわせ」を表しているのか、もしかすると、とんでもない裏の意味を秘めているのではないかと、ンゴンは、夢中になるのです。


何故なら、アルトは、生まれずに死んで、


イートは、どうぶつたちに喰われて、


ウルは、甘やかされて、


エツコは、三途の川を渡って、


オリーブは、遭難後に焼死して、


カイノミは、猟銃に撃たれて、


キックは、ボールを追いかけて轢かれて、


クルトンは、恋人にボートから捨てられて、


ケルベロスは、泥棒と戦って、


コールは、神隠しにあって、


サンドリヨンは、人を殺して、


シェリーローズは、人間ドールにされて、


ステルスは、子ども好きに誘拐されて、


セルは、独房に囚われて、


ソープは生まれつき身体が弱くて、


タイラントは、時間の渦に呑まれて、


チャックは、口止め料を食べて、


ツインクルは、双子で喧嘩して、


ティアラは、ギロチンで首を落とされて、


トレインは、列車で圧死して、


ナパームは、不発弾で爆死して、


ニードは病に倒れて、


ヌエは、2階の窓から飛び降りて、


ネイビーキャップは、釣り竿が避雷針になって、


ノロは、ウイルスにかかって、


ハピネスは、父親と寄り添って、


ヒートは、砂漠でまぼろしを見て、


フローズンは、凍死して、


ヘルは、地獄に落ちて、


ホワイエは、死神に狩られて、


マリスは、友だちの後を追って入水して、


ミラは、呪文により消滅して、


ムーンは、小グマにちょっかいを出して、


メロウは、デートに出かけようとして足を踏み外して、


モナは、絵画になって、


ヤーニングは、タネも仕掛けも無くて、


ユニは、馬乗りで撲殺されて、


ヨーンペインは、劇薬をお腹に隠して、


ラインは、幽霊に手招きをされて、


リキュールは、酒に呑まれて、


ルールは、クレーンに顔面をぺしゃんこにされて、


レイドは、囮にされて、


ローズマリーは、吊り橋で首吊りして、


ワサビは、思い人に毒殺されて、


ヲメガは、星になって、


みんな、さいごは悲惨だったからです。


もしかすると、このしあわせという文字、死と死を合わせるから、しあわせなのかもとイジワルに考えてしまいます。


そう思えるのは、ンゴンがまだしあわせになっていないからです。


ンゴンは、まだ生きています。


ヘンテコで変わり者の作家は、さいごの子どもまで、しあわせになってほしいと筆を走らせます。


ほら、ずっと前から、焦げた良い香りが漂っているでしょう。


きっと、遠く離れた両親が「あなた」の為に「おいしい」あれを焼こうとしているのです。


ねぇ、ンゴン、あなたの名前も、五十音から始まる名前でしょ?


しあわせになれない子どもなんていないんですよ。


だから、あなたも、しあわせになって。


桃色のお部屋、お母さんのお腹から、何も知らずに出て来たんでしょう?


しあわせになる為に。


ンゴン、そろそろ鏡を見てきて、


見た?


‥‥‥‥


‥‥‥‥


あらあら、あの子も、いっちゃったようですね。


じゃあ、代わりに、あなたが様子を見てきてあげて。


見た?


その顔。


見たらきっとここには帰って来れないだろうから、いつも通りに皮肉を言ってあげる。


「あなた」は、子どもたちの不幸を読んでいられる、


しあわせな子どもでした。


「完」

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