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ふこしあ  作者: 山口かずなり
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価値のある子ども・ニード


二十三人目の子ども



「価値のある子ども・ニード」



ニードは、5678916215の価値のある子どもです。



ニードが住んでいたトレジャー家の屋敷の展示室には、ニードにゆかりのある品が、ガラスケースに入れられ展示されています。



一つ目のガラスケースの中には、ニードと母親を繋いでいた「へその緒」が展示されています。



皆、命の管で母親と繋がっていても、離れてる時間が枝のように長くなると、いつの間にか忘れてしまうのです。



その価値、2074922070。



耳をすませば、赤ちゃんの泣き声が聞こえてきます。



あの日、何に泣いていたのでしょう。



はじめての光がこわくて泣いていたのか、桃に触れるように優しく抱かれたのが嬉しくて泣いていたのかもしれません。



その頃の音色は、オルゴールのように優しくて心地よかったはず。



音色に誘われて隣の二つ目の大きなガラスケースの中を見てください。



「ニードのゆりかご」が見えます。



今は誰も揺らしていませんが、オルゴールのリズムのおかげで、揺れているように錯覚するのです。



その魔法のようなゆりかごの価値は、15961170。



眺めていて眠くなったら寝息をたてる前に、隣の三つ目のガラスケースの中を見てください。



そこには「ニードがくわえていた、ほにゅうびん」が展示されています。


 

赤ちゃんから大人まで、忘れる事のないあのくわえた時の感覚。



身体を大きく作る為に、一生懸命チュパチュパ吸ったらゲップを一発して、両親を安心させたはず。



その姿はアルコールを飲み干す大人と似ていて、蘇る記憶に飲んでもいないのに、ほろ酔い気分です。



今は空洞のほにゅうびんですが、かつては愛が注がれていました。



その価値5712826。



思わず口から下品な音をたててしまったら、飲みきれないミルクがこぼれたあの頃を思い出してください。



隣の四つ目のガラスケースの中に展示されているのは、「ゲロのしみついた、よだれかけ」



もう何の匂いもしないけれど、小さな身体の代わりに汚れてくれたはず。



真っ白ではないけれど、何とも言えないきれいな色です。



このシミを作るには高度な技術が必要。



その価値、6442898。



匂いといえば忘れてはいけない、後ろを向いての五つ目のガラスケース。



なかよく一組並んでいるのは、「ニードの靴下」



沢山ハイハイをして、やっと立てた時に、大きな拍手をもらえたはず。



まるで玉乗りを披露したピエロのよう。



その時にはかされていた靴下は、もうどこの店を探しても売っていません。



糸がほつれていても、その価値、20079316。



隣の六つ目のガラスケースには、「ニードがはじめて描いた絵」



クレヨンの持ち方もままならないまま、画用紙の中に描いたのは、グチャグチャな毛糸のかたまり。



分かる人にしか分からない作風は、どんなアーティストにも真似なんか出来ません。



その価値、53821731。



隣の七つ目のガラスケースには、「ニードが遊んだボール」



赤ちゃんだった身体が少しずつ成長して、ボールを落としたり蹴ったり投げたり出来るようになりました。



遊び、学ばせるそのボールの価値。



1082952。



八つ目のガラスケースには、ニードが9歳の誕生日に父親からもらった「蝶ネクタイ」がマネキンの首に飾られています。



とても早かった大人への階段。



ニードは、首がかゆくなると嫌がっていました。



その価値、114125928。



さいごの九つ目のガラスケースは、ニードのお部屋に置かれています。


 

ですが、この中身は空洞です。



ここに展示されていたものは、ニードが持ち去ってどこかに隠れているのです。



それは、この世に一つしかない赤い宝石。



「家族の宝」です。



その価値、5678916215。



トレジャー家は、その赤い宝石一つに懸賞金をかけて、誰かに見つけてほしいと願っています。



その赤い宝石が欠ければ、トレジャー家の宝は、揃わないのです。



優しい大人たちは、さがします。



その赤い宝石を持ち去ったニードを。



ニードは、みんなに探してもらえる、



7971065106の価値のある、



しあわせな子どもでした。


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