飛びたかった子ども・ナパーム
二十二人目の子ども
「飛びたかった子ども・ナパーム」
ナパームは、トリのように空を飛びたかった子どもです。
いつも空を見上げていてトリに嫉妬しています。
ナパームは自分の身体とトリの身体を見比べます。
どちらの身体にも悩む頭が生えており、目標をみつける二つの眼がパチクリしています。
腕を翼のように広げれば風を感じる事だって出来るので、外見的にはどこが違うのか分かりません。
ですがナパームとトリは何かが大きく違うのです。
ナパームは今日も胸のハートを燃やして挑戦します。
かけっこで鍛えた脚で広場の乾燥した大地を走りながら、腕をばたつかせます。
そしてタイミングを見計らい空に向かって思いっきりジャンプ。
ピョンピョンとその繰り返しです。
まるでひこうきごっこをしてはしゃぐ子どものようですが、遊んでいるわけではありません。
ナパームは今日も飛べませんでした。
次の日ナパームはゴツゴツとした岩場の坂道を上り、見晴らしの良い場所にいました。
景色を眺めに来たわけではありません。
急な坂道を利用して飛ぶ気なのです。
後ろに2、3歩下がり崖に向かって走り出します。
崖へピョンと飛び出して景色がヒュンと下降すれば、急な坂道を勢いよく下っていきます。
下って、下って
あーーーーー
と思ったら、
崖下に到着していました。
ナパームはキョトンとします。
頭上を物騒なトリがうるさい音を立てながら通り過ぎていきます。
あのトリは身体が硬そうで翼は生えていますが、脚は見当たりません。
ナパームとは似ていません。
それでも飛べています。
飛ぶには何が必要なのでしょうか?
あのトリのように何かを失えば良いのでしょうか?
ナパームは夕空の下をとぼとぼと帰ります。
家まであともう少しの所でカツンと足に違和感を感じます。
何かが落ちています。
それは砂埃をかぶった大きく細長い筒です。
誰かの落とし物でしょうか?
ナパームは首を傾げながら、その落とし物をつつきました。
その瞬間ビュンと筒の中に閉じ込められていた風が飛び出し、ナパームの身体を拐って一気に吹き上がらせます。
うわー、飛べたー。
ナパームは、大喜びです。
空中でクルクルと回ると、腕を翼のように広げて大地を見渡しました。
身体に心地よい風を感じます。
翼を舵のように動かせば、どこにだって飛んで行けます。
羽のある虫も、翼の生えたトリも、物騒なトリも、あんなに小さく見えます。
ナパームは翼を羽ばたかせて空の上を目指します。
空を飛び出て宇宙に出ます。
宇宙では、お星さまがたくさん見えます。
こんな形をしていたのかと興味深々です。
宇宙の果てには、いったい何があるのでしょうか。
いけばもう戻って来れないかもしれませんが、あんな退屈な大地に戻る理由なんて、もう忘れてしまいました。
飛びたかったという小さな夢は、空を上る程にどんどんと大きくなっていきます。
ナパームは翼を羽ばたかせて一気に上へ飛んでいきました。
大地では、お腹を空かせた人間がパーティの準備をしています。
ダチョウの丸焼きをテーブルに置いて、ナイフとフォークを使い小皿に取り分けていきます。
人間はグラスを片手に、こう言います。
ナパーム、発射記念おめでとう。
ナパームは、宇宙の果てを眼に焼き付けた、
しあわせな子どもでした。




