鉄道マニアの子ども・トレイン
二十一人目の子ども
「鉄道マニアの子ども・トレイン」
トレインは、鉄道マニアの子どもです。
頭に煙突を付けていて、タキシードを着ています。
胸元の窓からは、よこしま模様の線路シャツがのぞいています。
血のように真っ赤なネクタイでバッチリ決めれば、金持ちの車庫から飛び出して、出発進行です。
黒糖色のレザーシューズで走り回って集めるのは、年代物の機関車の模型です。
骨董品店に入れば、眼の中の石炭を燃やして、まだ触れた事のない機関車の模型を探します。
とくに、老人の機関車の模型を見つけるのは一苦労で、トレインが眼を付けたものは、他の鉄道マニアも横から手を出してきて争奪戦となります。
トレインは、そのような争奪戦に何度か勝ち、彼等をガラスケースという名の車庫に並べます。
そして、 勢揃いした機関車の模型たちを少し離れた位置から眺めるのです。
トレインから見たそれらは、まさに絶景です。
彼等は、この世のなによりもかっこよく、命よりも大事な存在で、一度飾れば触れる事も許されません。
ガラスケースの外側からのぞいて、かつての機関車の姿を、本で得た知識を頼りに想像するだけです。
ですが、それだけでは物足りません。
トレインは、機関車に、もっと近付こうと考えます。
大好きな機関車の姿を残せるように、カメラを首からぶら下げて、家から出ていきます。
線路沿いを歩いて、踏み切りの横まで来ると、汽笛のする方へカメラを構えて、機関車の駆けていく姿を切り取っていきます。
真正面の顔、
駆ける脚、
遠ざかる背中、
その一瞬一瞬が貴重です。
今日、さいごの機関車が見えてきます。
次は、もっと近付こう。
トレインは、カメラをぎゅっと握りしめて、足を一歩前へと踏み出しました。
それは、鉄道マニアが大好きなものと向き合う、最高の瞬間です。
シャッターを切り終わり、機関車が目の前を過ぎていきます。
空が、とても綺麗です。
これは良い写真が撮れたのではと、トレインは、線路沿いを歩いて帰ります。
たとえ、後ろがせわしくても気にしません。
今は、どんな写真が撮れたかが気になるのです。
現像された写真を見た家族は、言葉を失います。
トレインは、大好きなものと、べったりできた、
しあわせな子どもでした。




