表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ふこしあ  作者: 山口かずなり
20/47

王族の子ども・ティアラ


二十人目の子ども



「王族の子ども・ティアラ」



ティアラは、のっぽな女の子です。



くず色の髪をし、頭を白い城塞の冠で飾り、首には鋼鉄のチョーカーを巻いています。



これは王族と民を判別する為の印です。



王族も民も、見た目は同じ人間なので、こうしておかなければ、わからないのです。



ティアラは、生まれた時から国のシンボルとして扱われているので、何故か特別扱いされています。



着ている服は、優秀なお針子が仕立てたオーダーメイド。



上品な白いドレスには、民が洞窟からせっせと掘ってきた光る石が散りばめられていて、民の闇が深いほど、美しいのです。



ティアラは、両親の真似事をして、そのお礼に、民と握手を交わします。



上下関係のはっきりとする会話を交わし、自分の育ちの良さを何気なく伝え、護衛の合図を見て、わかれの際には、胸の辺りで手を振り、上品にさようなら。



民は、二つに分かれて、城塞へと続く道を開きます。



ティアラを見ながら国旗を振り、もう片方は、眩しそうに眼を細めます。



護衛たちに守られながら、両親と共に、城塞の中へ帰っていくと、一番頑丈な部屋の窓から、民を見守ります。



その間も、今を必死に生きる民は、ツルハシを両手でせっせと振って、自分たちが掘ってきた鉱石で、国のシンボルを輝かせ続けます。



これは民の使命。



そう、国から学んだからです。



では、ティアラには、どんな使命があるのでしょうか?



ティアラは、城塞の見張り台から、民のもろい家が密集する向こう側、民が働く鉱山を眺めます。



城塞と、鉱山は距離が遠いのでしょう。



民の姿も、働き蟻のように見えて、それが鉱山の出入口で、うごめいてるようにしか見えません。



ティアラは、護衛から受け取った双眼鏡で、鉱山の出入口を覗き込むと、ツルハシを握りしめた民が出てきます。



服も顔も真っ黒に汚れていて、どんな表情をしているのかも分かりません。



出てきた一人が、ツルハシを地面に叩きつけます。



それを見たティアラは、びっくりします。



ツルハシが、傷まみれです。



あんなツルハシでは、次に振った時に壊れてしまいます。



ティアラは、困り顔で護衛に頼みます。



あの民たちに、新しいツルハシをあたえてください、



今より頑丈な。



民は、ティアラの護衛から、頑丈なツルハシを受け取ります。



その事が余程嬉しかったのでしょう。



護衛たちの姿が見えなくなると、抑えきれない感情を露にします。



ツルハシを振り上げて歓声を上げます。



記念日万歳!



ティアラは、その様子を見張り台から、両親と共に微笑ましく眺めていました。



民は、これまで通りに鉱石を掘り続け、王族の暮らしを潤わせます。



ティアラと両親は、民から愛されているのです。



民に会いに、護衛を連れて城塞から、外へ出て来ます。



何か贈り物でもいただけるのでしょうか。



ティアラが期待に胸を踊らせていると、民が突然二つに分かれて、広場までの道を作ります。



ものものしい雰囲気です。



道の先には、民からの贈り物が見えてきて、それは、銅像ではなく、ギロチンでした。



ティアラは、両親の後ろに隠れて、護衛に守られる中、物騒な贈り物を見上げます。



ギラリと光る斜めの刃が、自由落下する瞬間を待ち望んでいます。



民は、嫌なものを見ているかのように、眼を細くして、ティアラと両親を見ます。



ティアラは、ここではじめて気付きます。



自分たちが愛されているのではなく、恨まれていることに。



民は、言います。



首に巻いた鋼鉄のチョーカーをここで首ごと切り落とし、我々を平等に扱え、と。



民の歓声が上がります。



ティアラは、悲しくなります。



運よく王族に生まれて、しあわせが、常にそばにあると信じていたのに。



これで何もかも終わりです。



ティアラと両親は、ついに、運に見放されたのです。



まさか、こんな時に地震が起こるなんて。



大地が上下左右に激しく揺れて、叫び声を上げます。



人々は、人形のように揺さぶられ、大自然の力には敵いません。



強がっていたものも、弱音を吐いていたものも、同じ恐怖を感じて、揺れがおさまるまで、何かにつかまり、倒れたりして、待つばかり。



終わったかと思うと、最後の一撃がドカンと来ました。



国は、静かになりました。



静けさの中、微かに声がします。



しぶとく生き残った者の声です。



ティアラと両親の身体は、瓦礫に埋もれ、身動き出来ません。



腹より下を噛まれています。



上品な服に血がにじんで、声が出る程に痛いのです。



それでも運に見放されてたまるものかと、生き残ろうとします。



誰か、誰か助けてください。



瓦礫の隙間から、ティアラの両親が手を伸ばします。



その手を城塞から駆けつけた護衛が、見つけて握ります。



さぁ、頑丈な城塞へ帰りましょう。



護衛の道案内で、瓦礫の町の中を歩いて帰ります。



その道中、瓦礫の隙間から手が垂れていても、枯れた枝だからと見て見ぬふり。



燃える建物の中で手を振る民には、いつものように手を振り返す事もなく、護衛の後を続いて、救おうともしません。



民より王族という、優先順位が邪魔をしているのです。



無事に、城塞へ帰れば、門を閉じて籠城です。



城塞には、民から搾り取ったこれまでの蓄えがあり、きれいな飲み水もあります。



ティアラは、怪我を負った腹部を手当てしてもらい、水を飲んで落ち着くと、両親のそばで、民に嫌われていた事を思い出し、また悲しくなります。



母親は、ティアラを抱き寄せて、ふるえるくず色の髪を撫でました。



城塞の外では、多くの民が怪我を負い、食べ物も、水も飲めないと、民同士の争いが起こり、病にかかります。



ティアラの父親は、民を不憫に思い、人数が少なくなってきたのを見計らって、護衛たちに、王族の蓄えを分けあたえるように言います。



なんて優しい父親なのでしょう。



ティアラは、父親を尊敬します。



民は、怪我を手当てしてもらい、食べ物と水を飲み干します。



これまで通りに、働けるようになりました。



民は、命の恩人である王族へ、贈り物を捧げます。



それは、民と王族をひとつにする贈り物、



ギロチンでした。



やはり、愛されているのですね。



ティアラは、城塞の冠をかぶった



しあわせな子どもでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ