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名前だけの子ども・アルト
一人目の子ども
「名前だけの子ども・アルト」
たくさんの子どもたちが、桃色のお部屋から外へと出ていきます。
けれど、「アルト」という子どもだけは、外に出ていくのを嫌がりました。
アルトは、部屋の中に残りました。
危険ばかりの外よりも、安心安全な中にいる事を選んだのです。
アルトは、不幸にもしあわせにもなれずに、自分の指をしゃぶっていました。
外では、出ていった子どもたちの泣き声や、笑い声がします。
もちろん、悲鳴も。
アルトは、そこにいて正解だと思いました。
ですが、外から女の人の泣き声が聞こえた時、アルトは外へと出ていこうとしなかった臆病な自分が嫌になりました。
次こそは外へと出ていけるように、アルトは、部屋の中で瞼を閉じました。
アルトは、バースデーケーキを食べられませんでしたが、誰かに嫌な事もされずに、
しあわせな子どもでした。