表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ふこしあ  作者: 山口かずなり
15/47

大家族の中にいる子ども・セル



十四人目の子供



「大家族の中にいる子ども・セル」



セルは、首から懐中時計をぶら下げている、真面目な子どもです。



朝、部屋の中で、たくさんの兄弟たちと一緒に目覚めると、規則正しい生活を始めます。



セルは、兄弟たちが立ち並ぶ、長い列の一番端に立つと、皆が元気かを確認する為に、自分も元気よく朝のあいさつをします。



そして、母親が作ってくれた朝食を、それぞれの神さまに感謝していただくのです。



この限られた時間の中、兄弟たちは昔の話をします。



耳たぶに穴の空いた兄は、昔、店で盗みを働いて、両親に怒られた事を笑いながら話し、



食事がすすまなくなった弟は、水の注がれたコップに突き刺さったストローをスプレー缶のように見て、ボーッとしておりました。



セルは、自分の拳をじっと見ます。



そして、兄弟や両親の顔を見て、自分には家族がいる、と優しい笑みを見せるのです。



食事と皿洗いを終えると、生きていく為に必要な仕事をしに仕事場へと向かいます。



仕事場は歩いていける距離にあるので、少しだけ気分が楽です。



セルは、仕事場で機械いじりをします。



機械いじりでミスをすると、自分の体の一部が削れて、汗水の他にも涙や血がこぼれ落ちて、あちこちが痛くて、塗り薬がしみりますが、セルたち兄弟は、そこで我慢というものを学ぶのです。



懐中時計の針が仕事から出ていく時間を指していれば、そこから解放されて、自由時間です。



セルたち兄弟は、その限られた時間の中で、物陰に隠れて春本で自分を慰めて、溜まっていた唾を吐き出したり、趣味の世界へ逃げ込んだりして、息抜きをするのです。



セルは、たまに、外へ出たくなります。



外へ出る時には、いつも父親が付き添いで歩いてくれて、セルが悪い子どもにならないように、見守ってくれているのです。



セルは、父親と一緒に歩いて港へと向かいます。



そこには、プカプカと大海原に揺られる船が見えました。



船は、鎖でつながれていて、そこからは動きません。



セルは、船を見ながら、腕時計の時間を気にする父親へ訊きました。



いつかは、あの船に自分も乗るのでしょうか。



父親は答えます。



お前は良い子だから、きっと乗れるよ、と。



セルは、自分の拳をじっと見ました。



さぁ、家へ帰ろう、



セルは、船に背を向けて、今まで歩いてきた道を戻っていきます。



家に帰ると、兄弟たちが何してたんだよと、次々に話し掛けてきました。



その背後で、時間通りに玄関の扉が閉まります。



懐中時計の針が、夜食の時間を指しました。



時間は進み続けています。



どんな時間も無駄には出来ません。



セルは食事を終えると、皿洗いをして、せわしいお風呂に入って、歯磨きをして、夜は余計な事を考えないように眠るのです。



セルは、住む家がある、



しあわせな子どもでした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ