灰かぶりの子ども・サンドリヨン
十一人目の子ども
「灰かぶりの子ども・サンドリヨン」
サンドリヨンは、灰色の長い髪を おだんごにして家のお掃除をする、まつげがくるんとした美人な子どもです。
家のお掃除ばかりをしているので、着ているお洋服もほこりだらけで、所々ほつれています。
また家のどこかで呼び鈴が鳴っています。
家族のような三人の女が、3つの呼び鈴を手に、こう言います。
「サンドリヨン、お掃除は終わった?」
「サンドリヨン、わたしのお洋服は?」
「サンドリヨン、サンドリヨン」
その度にサンドリヨンは、ほこりまみれになっていくのです。
でも、辛くなんてありません。
サンドリヨンには、叶えたい夢があるのです。
そして、その夢を応援してくれる友だちだっているのです。
一人は、泥棒ネズミで、もう一人は、どこからともなくやってくるハエ取りグモです。
泥棒ネズミは、家族が出掛けると、それを見計らったかのように、ひとりぽっちのサンドリヨンに会いに来ます。
そして、サンドリヨンに外の世界のお話を大げさに聞かせてから、サンドリヨンがくれたチーズをかじって出ていき、
ハエ取りグモは、時々、自分のまわりを飛んでいる、目眩のような黒いハエを食べてくれるのです。
次は、家族が食べ終わった夕食の後片付けです。
サンドリヨンは、そのような事を7才の時から、10年以上続けておりました。
サンドリヨンが自分の部屋で眠ろうとすると、黒いハエが、また、自分のまわりを飛び始めました。
「サンドリヨン」
そのやさしい声のする方を見ると、ハエ取りグモがいました。
ハエ取りグモは、その正体を現します。
長く黒い髪を床に垂らして、その8本ある内の一番長い手に、先端が三日月の形をした杖を持ち、サンドリヨンに訊きました。
「あなた、しあわせになりたいかしら」と。
サンドリヨンは、迷うこともなく頷きます。
そして、手招きをされて、お庭へと出ました。
「この井戸の、前辺りがいいかしら」
ハエ取りグモは、その光景を隠れて見ていた、泥棒ネズミに気付きました。
「あなたがちょうどいいわ」
三日月の杖をクルクルと振り、魔法をかけました。
すると、泥棒ネズミの腹が風船のようにふくらみ始めて、腕や脚が蔓のように伸びて、灰色の馬車に変身しました。
サンドリヨンは、素敵な馬車を見て驚きます。
ハエ取りグモは、サンドリヨンにも魔法をかけました。
サンドリヨンの、ほこりまみれでしぼんだ洋服のスカートは、蒼白く輝きながらふくらんで、鳥籠のようなドレスへと変身していきます。
サンドリヨンは、驚きながらも、クルクルと回って見せて喜びました。
「さぁ、その馬車に乗って、好きな場所へとおいきなさい」
「けれど、あの3つの呼び鈴が一つでも鳴ったら、あなたにかけた魔法は解けてしまうから、急いで帰ってくるのよ」
サンドリヨンは、ハエ取りグモと、約束を交わすと、灰色の馬車に乗る前に、やりたい事があると、3つの呼び鈴を井戸の奥底へ、隠しました。
これで、この魔法が解けることはないでしょう。
サンドリヨンは、自分で夢を叶えた、
しあわせな子どもでした。




