伝説未満 1
では、伝説の前の物語の
更に前の物語が始まります。
眼前にあるのは魔王が棲む洞窟。
いよいよその最深部に挑もうとしていたのは
勇者トワ=ライズ。
彼の記憶の中で忘れる事が無いだろう「それ」は五年前に遡る。
まだ世界が平和だった頃。
彼の住むトワの村に勇者を探す一団が現れた。
その一団は、平和な世界を乱す存在を倒す勇者を探している。
そう言っていたような気がする。
突然の訪問者に、自分たちの生活を脅かす存在を告げられ
村人は困惑し、彼らに救いを求めた。
するとその一団は、村人の中から勇者を募り
魔王を討伐するように、そう皆に告げる。
人々の平和な暮らしを守るため。
魔王討伐の旅に出る事を決意する。
恐らく建前としてはこんな感じだった。
その当時の事を今も忘れない。
大きな目標も、目指すべき理想もない、ほんの出来心。
ただ気になっていた娘に見せたかった、身を挺して世界を救う為に勇者に志願する
勇気ある自分の姿。
それがまさか、本当に採用されるとは・・・。
しかも、その当時から「勇者」という存在に対して蔓延していたのが
超絶ブラックな職種だと言う事。
成人したとはいえ、村の外の世界を知らないライズにとって
勇者を初めてから体験するのは、攻撃、回復、魔法など
全てにおいて、ワンオペで行わなければならない。
その上、町に滞在する際には
魔王討伐の勇者と認識されながらも、宿屋でひと時の休息ですら
通常料金を請求され、道具屋、防具屋にも同様の仕打ちを受け続けてきた。
魔王を倒したいんだったら、無償で宿や装備を提供してくれよ!
何度叫びそうになっただろう?
そんな長かった旅も、もうすぐ終わる。
ライズは装備を整え、意を決して洞窟に足を踏み入れた。
本編までしばらくかかりそうです。




