伝説未満 18
桜花賞の枠が決まったので、全力で予想しなければいけません。
ふと気が付いたら、土砂降りの雨に中に一人
立っているって自分がいるいることに気が付いた。
なぜ、こんな所に立っているのだろう?
そう考えている間にも、雨はただひたすらライズに降り注ぐ。
ところが、物凄い豪雨だというのに雨粒が体に降り注いでいる感覚が全くない。
ただ感じるのは、降りしきる雨によって足元はぬかるんでいるようだな、というくらいだ。
この感覚と同時に、これは夢だ、という根拠のない確信を得る。
昔、聞いたことがある。
夢とは、自分の体験したことの復習のようなもの。
村に来るために豪雨の中を進んだ記憶が、この夢を見させているんだろう。
そう考えると、感覚のない雨粒に対する恐れは無くなった。
これは「夢」なんだ。
何も恐れることは無い。
記憶の断片を繋ぎ合わせた夢の中でしか見る事の出来ないショーのようなものだ。
思い返せば、魔王を倒すことに全てを注いでいた頃の自分は
ひとたび目を閉じて眠りについてしまったら、再び目覚める事が無いかもしれない。
という恐怖に怯えながらも睡魔に抗えず、眠りにつく毎日だった。
だが、今のライズにとっては、あまり楽しいとは言えない夢であっても
受け入れる事が出来る、と思っていた。
この夢がここで終わるのなら・・・。
降り続く雨は、いつの間にか体の自由を奪う程の勢いを見せる。
膝から腰、肩にかけて徐々にライズの動きを奪うのは、恐らく
村人の冷ややかな視線が彼の心を蝕んでいたからだろう。
やがて雨は肩から首、顔までも埋め尽くしてなお
勢いはとどまる所を知らず、一層激しさを増すようだった。
降った水に全身が沈み、ただぼんやりと空を見上げるだけの状態になって
いまさら、激しい雨の感覚が体を覆い尽くす。
それは割と不思議な感覚だった。
水の中にいながら、雨に打たれるのを感じる。
今までに感じた事のない、未知の領域。
次第に意識が遠くなっていく。
なにげに思ったのは、もうそろそろ夢の時間は終わりだな・・・。
水中で浮き上がろうといているのか?
それとも沈み続けるのだろうか?
感覚を失い、ただぼんやりと水中から空を見上げると
あれほど厚かった雲間から微かな光が射しているのが見えた。
ようやく、ゆっくりと眠れる。
少しづつ広がる光は、安息を与えてくれるのだろう。
やがてその光の中から何かの影が下りてくるのが見えた。
よく見るとそれは手のようだ。
ただしそこに実体は無く、ただ手の形をした影がゆっくりとライズに差しのべられた。。
全く無意識に左手を差し出す。
するとその影がライズの左手首をしっかりと握った。
その瞬間に、突然激しい痛みによって覚醒するライズ。
それは魔王から受けた左肩の傷によるものだった。
激しく動揺しつつ、目覚めた彼が感じたのは
眠りについてから、どのくらい時間がたったのだろう?
ということ。
ふと部屋に来るために使った照明に目をやる。
するとそれは、まだ一時間ほども減っていなかった。
僅かな浅い眠りの間に起こった夢は、改めて思い出そうとしても
上手くはいかない。
覚えているのは、差しのべられた手とその感触だけ。
諦めた彼が全身が汗びっしょりの自分に驚きながら
目覚めの原因となった肩の傷を見ようとした。
そんな彼の目に映ったのは、今ではもう
唯一覚えている差しのべられた手の感触。
それはライズの左手首にしっかりと刻まれていた。
ちょっとだけ、わき道。
それはある村に住む一匹のネズミのお話です。
彼はこの村で生まれ、この村で育ちました。
根城は、とある宿屋。
もう長くその屋根裏に居ついています。
そんな彼の得意技は、宿泊客の荷物から極上の餌を探し出す事。
この宿に泊まる客は、他国の美味な食材をいっぱい持っています。
それはまぁ、期待外れの時もあるんですけど・・・。
でも今日は、なんだか期待できそうな客が入って来たので
客が寝るまで様子を見ようと思います。
いつものように天井裏から眺めていると、早速ベットに倒れ込んで
軽いいびきをかき始めています。
これはもう、極上のターゲットです。
いつもは寝るまでに長い時間をかける事も少なくありません。
しかし今回は・・・。
思わず笑みがこぼれます。
でも、油断は禁物です。
人間には浅い眠りと深い眠りがあるようです。
今までの経験から、寝入ってすぐに行動して
どれだけ多くの獲物を逃したかわかりません。
でも、幾多の失敗を糧にして
待つ事の大切さを学んだ彼は
天井裏から「標的」の様子を伺うのです。
どうやら、寝入りばなに夢を見ているようで
何やらもがいています。
でも、これも想定内。
やがて深い眠りについたら、少々暴れたって
起きることは無いのは過去の経験で知っています。
今はただ、その時を待つだけ。
そんな「標的」が微かに左手を上げます。
すると、薄明かりに照らされたその影が不自然に延び
「標的」の手首をつかんでいます。
今までにないこの光景に
ただ見つめる事しかできませんでした。
その後飛び起きる「標的」に、思わずびっくりして
天井裏から逃げ去ってしましました。
そしてこのネズミは、再びこの宿に現れる事は無かったようです。
今日はいっぱい書く過ぎたので
明日は少ししか・・・。
だって、桜花賞がありますし!




