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理想と現実
「大丈夫か?」
という言葉は思ったより小さく、レイジェンには届かなかった。
プルタブがこの一言を放つ前に、彼は天使へ向かっていたのだ。
天使の浮かべる笑み。
その口角が上がりきらないうちに、懐へと潜り込んだレイジェンが
渾身の力を込めて天使に放った.
その拳は鳩尾をえぐり、崩れ落ちた天使は悶絶する。
・・・・・・予定だったのだが、どうやらそうでもない。
効いたか、聞いてないか、に関係なく
拳を放った後、レイジェンが言った言葉は
「思ったより、かてえなぁ」
という一言だ。
この言葉は、彼がこの世界に入った時に
最も尊敬し、影響を受けた人の最後の言葉だった。
いつか自分もそんな言葉を残して散りたい。
その思いが成し遂げられた瞬間でもあった。
ただ、残念なことに
レイジェンが拳を放った天使は、思ったより硬くなくて
彼の足元をのたうつように、悶絶していた。
かくして彼の妄想は打ち砕かれ、未だ理想の敵に出会えない自分の不幸を呪っていた。
この様子を見たプルタブはただ
「だ、ダイジョウブですよねぇ・・・・・・」
というのが精いっぱいだった。




