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伝説の前の物語  作者: 佐藤太郎
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勧告や忠告でなく、推奨ですらない。

「私が行きましょう」

そう言って出てきたものの、実際は不安でいっぱいだった。

思わず大声で叫んだ言葉は、弱った心が現れたのかもしれない。

本拠地の砦に近づく天使の使者は一柱?

と言って良いのか一人?

なのか、とにかくそれに類する呼称の存在が近づいて来た。

「お前たちは、完全に包囲されている!

大人しくそこから出てきなさい!

悪いようにはしないから!」

砦の門までおよそ三十メートルの所で立ち止まったまま呼びかける。

天使の声は風に乗って、砦の中へと運ばれていく。

その余韻が消え去らないうちに、砦の扉がゆっくりと少しだけ開いていく。

この、あまりに迅速な反応が、天使の心に変化を与えた。

彼の中で、ついさっきまで自身に対して自信を封じていた扉がゆっくりと

少しだけ開いたのだ。

その間に、彼の目の前にある砦の中から現れたのは、年寄りと青年という二人の人間たち。

「さっきの話は本当だろうな!」

これは、まさか神の使いである自分に対して向けられた言葉なのか?

許されない事だ。

だが、そこにいる人間たちは、未だに自分達が劣等種となった事さえ自覚していない。

そう感じた天使の、憐れみに満ちた瞳が二人が映し出されていた。


問いに対する答えを待つ間に、プルタブの掌にはじっとりと汗が滲んでいた。

彼の横ではレイジェンが、疑いの眼差しを向けている。

「ま、そう思われるのも無理はない。

だが、安心してください。

健康的で文化的な、最低限度の生活は保障しますよ。

でなければ、我々の行う実験に影響を及ぼすかもしれないのでね」

爽やかな聞き心地の良い声で答える天使に

「だが、我々は、結局死ぬんじゃろ?」

言葉に棘があれば、天使の体に傷をつけていただろう。

そう思わせるような声でレイジェンが答えた。

「では聞きますが、人間は家畜に対してどんな扱いをしています?

それを考えると、我々の待遇はそれ以上だと思うんですがね」

天使の言葉はレイジェンを沈黙させる。

この時、プツタブの頭の中では激しく駆け巡っていたのは

このっさんは、こんなキャラだったか?

もしや、迷走?

いや、キャラ路線変更、と言う事も考えられる・・・・・・。

悩んだ末、レイジェンはかろうじて

「大丈夫か?」

とだけ言った。

ビビってますね。

私の存在にビビってますね。

砦から出てきた二人の弱さを感じた天使の心がどす黒く変化する。

「大事に扱ってやる、と言っている。

だが、それが気に食わないというなら

今、死ぬか?」

言い終わると同時に二人に向って手をかざす天使の顔には

あの笑みが浮かんでいた。

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