雨、のち、晴れ、
また、校内の模擬試験に失敗した。
もう良い加減、フワフワ夢を見ている時期を終わらなければいけないというのに、私は全くやる気が出ない。フワフワだらだらとした毎日を過ごしていた。フワフワしながら、引退したはずの部室に居座り、グダグダ過ごしている。
いかんな、これでは後輩達のお荷物になってしまう。
重い腰を上げ、帰り支度をした。
そんな時、私は同じクラスの金井に言われた。
「なあ、金、貸してくんね?」
学校の中、昇降口でいきなり。
それも、ただ声をかけるのではなく、金井は私の腕を掴んできた。
いくらクラスが同じだといっても、あまり話したこともない金井からそんなことされたら、心臓が止まるかと思った。いや、一瞬止まったんじゃないかな。
それこそマンガではないが、飛び上がりそうになった。
私、金井に何かしたかな? していない。していないはずだ。した覚えがない。
そんな、一見いじめとも見えるような強引な行為に出てきた金井に、私はというと、かろうじて冷静なふりをし、振り返ることしか出来ない。
モブである私になんて事をするんだ、リア充金井。
「おーい、貸して?」
「…………なんで?」
「や、財布持ってくんの、忘れちまって。て、どした?」
私はいつものように答えたつもりだった。けれども、いつもとは違ったのだろう。金井は背を屈め、心配そうに私の顔を覗き込む。
ちょ、ちょっと、それ、その顔、反則。
私は咄嗟に、金井から顔を背け靴箱に向き直る。さすがにいつもの私とは違うと彼も気が付いたのだろう。
「どした?」
少しむっとした声で、金井は私にもう一度問いかける。
「……それ、犯罪」
やっと、それだけを答えることができた。
「え?」
「だからっ」
金井はといえば、訳が分からないといった、なんとも間の抜けた顔をしていた。
やっぱり、反則だよ、これは。
いつものおちゃらけた顔とは違う、真剣な表情の金井の顔がすぐ近くにあるというのは、心臓に悪い。
でも、人気があるだけはある。金井はそれなりに整った顔をしていた。
で、どうして金井は私の腕を掴んでいるんだ? 普通に声をかけてくれたら、私は。
顔が、あつい。
私は、顔が赤くなるのを止められない。でも、不思議な事に、彼の顔も赤くなっていってるような?
「あっ、ご、ごめっ」
そう言うと、金井は私の腕から手を素早く放した。
「おまえのその反応、犯罪」
とりあえず終わり
いや、金井君、あなたの行動の方が犯罪だとおもうのですが。
続かない。