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異世界 花嫁修業  作者: あべ鈴峰
2/16

ある晴れた、昼下がり

「そりゃ、世界から来たのは、お前が初めてじゃないからさ」

「えっ?……無い。無い」

沙弥は、両手を振った。そんなお手軽な話なわけない 。何か秘密が、隠されいる。

「本当だよ」

だが、真顔で 否定されて固まる。


……二人 の手慣れた態度を考えると 一概に、嘘だとは言えない 。私を見て女子高生だとわかったのは 、私より先に 誰か来ていないと、知りようが無い。

「……」

異世界へ来るなんて 、宝くじに当たるくらいの奇跡だと …思っていたけど ……。もし、それが本当なら 、何人来てるの?

「百歩譲って 、そうだとして、 何人いるの ?」

「そうだなぁ〜。60人くらいかな」

「 60人?!」

沙弥は、思わず大声を出した。


もしそうなら絶対、テレビや新聞で 取り上げている。

連続女子高生行方不明 ……否、連続女子高生拉致事件…。

否、否。有り得ない。 パニックになりそう 。

サムが、指折り数えながら話を続ける。

「 他にも、東都、山北、南海があるから……全員で1000人くらいだろう」

「1000人!」


話がどんどん、大きくなって 、ついていけない 。

こめかみを押さえた 。

「でも、 男とか子供も混じってるから、女は半分くらいかな 」

「サム。犬を忘れてるぞ 」

犬?犬まで召喚してる の?全く意味が分からな。何で、そんなことするの?目的は何?

「無差別に誘拐…拉致 してたの?」

「仕方ないだろ 。引き上げてみないと、わからないんだから」

「大袈裟だな。誘拐じゃない。釣りだよ、釣り」

(まったく、人を魚みたいに 。しかも、入れ食いときた。人間には知性というものがある 。そう簡単に騙されるはずない )


もっと、何か…こう…特別な力を使ったに違いない 。

「 人間は魚より、ずっと大きくて重いんですよ。そんな事できるはずないじゃないですか」

「「出来るよ 」」

「何を根拠に、そんなこと言うんですか?」

二人の自信満々の答えに、沙弥は半ば呆れながら聞く。

「「 それ」」

二人が口を揃えて、私の手を指差す 。

「?」

指さされて、握ったままだったと手のひらを開くと、キラリと光るモノが…。

そうだ。これを拾った途端、あたりが眩しく光って …。「そっちの世界の女も宝石に目がないからな」

サムガ片眉を上げる。

確かに綺麗だと思ったけど 、別にネコババするつもりじゃ …。

人聞きが悪いと口を尖らせる。

「落し物を拾ってる時に、偶然見つけて 、間違って拾っただけです」

「はい。はい」

「恨むなら宝石に目がくらんだ、自分を恨め 」


でも、こんな何の変哲もないものが 異世界に召喚できる仕掛けが、してあったなんて信じられない 。

「本当に…私がこれを拾ったから 、こっちの世界に来たんですか ?」

確かめると、二人が声を揃えて頷く 。

「「そうだ」」

「……」

「もう一度に握ってみろ。帰れるかもしれないぞ」

ロブに言われるまま 素直に、もう一度に握って 手のひらを開く。すると キュンという金属音を立てて、 一瞬で細いブレスレットに 変形して、気を付けば手首に収まっている。

「それには 、逃走防止の 術が、かかっているから 、逃げても無駄だ」

「これで逃げられなくなったな」


「騙したのね !」

沙弥は二人を睨みつける。脳天気な 二人組だからと油断した。

そういえ、 この二人は 拉致犯だった。

「 逃げたければ、逃げてもいいぞ 。遠くに逃げれば、逃げるほど締め付けられるらしいから。どうたした 試してみるか?」

サムが面白かって挑発してくる 。

本当かどうか怪しい。でも、 何かの魔法が、かかっているのは事実だ 。


沙弥は相手にしないで 、ブレスレットの目を落とす。

クルクルと回してみたが外すところがない。

「これって、どんな仕組みになってるんですか?」

ブレスレットを太陽にかざすと 細い何かが 動いている。 激しく振ると 、激しく揺れる 。

(スノードームを見たい…)

「知らねぇ。 俺たちは魔法に詳しくないからな」

使い方も知らないのに、よく成功したものだ。


「 ところで、どうしてそんなに 異世界の住人を集めてるんですか 」

「さあな、 俺たちは金になるからやってるだけで理由は何だっていい のさ」

見た目は一般人だが、やってることはヤクザと変わりない 。それなのに悪びれた様子も無い。

「それに俺たちみたいな下っ端に、教えるはずないだろ 」

「まぁ…確かに 。それじゃあ、その中に日本人はいましたか ?」

「ニホンジン?」

「私みたいに、黒い髪の黒い瞳の人間です 」

「俺達が釣り上げたのは、二人とも茶色の髪だったし、他所の奴が、連れてきた娘は見てないからな」

「まぁ、行けばわかるさ」

「 全く 、何なら答えられるんですか !」

こっちは少しでも情報が欲しいのに。 何の手がかりも無い。

本当に、この後どうなるの ?漠然とした不安を感じて口を結ぶ。


***


山を下りきると、荷馬車が用意されていた。

だが、もう何も驚か無い。


汚れないようにと 、ログに渡された毛布を腰に巻いて、 人魚のようにコロンと 乗り込む。


ガタガタと凸凹道を小石を弾きなが進んで行く。 飛んだり跳ねたりして 景色を見る余裕もない。

頭 の中に あの歌が流れてくる。

(売られていく よー)

仔牛になった気分だ。


町の中に入った 。

私を見ても誰も何の反応も示さない。日常化してるようだ。

スーパーやコンビニは無い。

でも、道の 両側に 露店が並んでいて、お祭りみたい。

物珍しさにキョロキョロしていると、肉の焼ける美味しそうな匂いが、どこから漂って来る。

そういえば、 昼から何も食べてない。

沙弥は、 慰めるように、お腹をさすった 。


「着いた」

ロブの声に前を 向くと 、大きなレンガ作りの問題が 見えてきた。

「おっきい……」

呆気にとられたまま、 門をくぐると 中に、もう一つの街があった、中央には噴水があって 、大勢の人が行き来している。 3階建ての建物で 右側が食品、左側が日用品が売られている。

「どうして中に、お店があるの?」

「 ここは、ラウドール商会。お前達の言葉で言えば商社だ。ありとあらゆる物を売り買いしている 」

「ここの品は、良い分。 バカ高い」


そうこうしているうちに荷馬車が停まる。

よっこらせと、 降りると鞄を担い直す。

店主 との対面だ。言いたいことも、聞きたいことも山ほどある。


だが、いさ、部屋に案内されると雰囲気に気圧されて言葉が浮かんでこない。

中央に店主らしき人が座っている。 身につけるアクセサリーから素人の私が見ても 身分の高い人だと分かる。


二人の押されて、無理矢理、前に押し出される。

ゴクリと唾を飲み込んだ。とうとう、売られる。

「ケビス様。ご要望の女子校生を捕まえました」

ちらりと私は見ただけでケビスが書類から目を離さずに、机の上の小箱から 金貨を放り投げた 。

「毎度どうも。また、何かありましたら 、お声掛けください 」

「では、失礼します」

ひどい扱いに驚いている私を 押しのけて、ロブ達が、お金を拾うとペコペコと頭を下げて出て行く。

「ちょっと 」

さっさと出て行こうとする二人に 、声をかけるとサムがウインクして出て行く。

全く、薄情な。別に期待してたわけじゃないけど 。


「メアリ。連れて行け」

「はい!!」

大きな声に振り向くと、袖を引っ張られた。 下を見ると 、そばかす顔の少女と目が合う。

この娘が使用人?どう見ても10歳ぐらいだ 。

「お部屋に、ご案内します」

そう言うとさっさと歩き出した。

(私が逃げ出すと思ってないのね…)


しかし、呆気なく終わってしまった、

なんだか、肩透かしを食らった気分だ。


後ろ をついて歩きながら、メアリを 見た。

どう見ても10歳くらいだ。

でも、この 家の使用人なら 色々知ってそうだ。

「私は、沙弥。あなたは?」

「私はメアリです。何か不自由がありましたら、何なりとお申し付けください」

「 私以外にも女子校生がいるみたいだけど、全部で何人いるの?」

「沙弥様を入れると…48人になります」

「そんなに……」

二人の話を本当たった。

「ですので、相部屋になります」

メアリが申し訳なさそうな顔で頭を下げた。問題ないと手を振る。願ったり叶ったりだ。一人にされたら不安で仕方がない。それに同じ境遇の人がいるのは、 心強い。「大丈夫。全然平気」

「こちらになります』

メアリがドアを開けると、先客が振り返る。

その姿を見て沙弥は思わず身構えた。


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