ハーリ
地図を見ながら更に進み、分かれ道を左へ。
「……ハーリだ」
そこで厄介な魔物を見付けた。
幸いにもまだこちらには気付いていない。
ハーリはエリマキトカゲのようなエリマキを持っている猿で、尾は長く、触れると粘り気の強い液体物を分泌しているので、受け止めても切っても武器を駄目にする。
しかも魔法を使い、エリマキを大きく広げ、視界を妨害して石の塊や粘液の塊を作り出して狙撃してくるのだ。
しかも頭がよく、よく人間に遭遇し生き延びたハーリは人の真似をして惑わせてくる。
「さっきはテレサに囮役してもらったから、今回はオレがやるわ」
「何で?」
「だってお前さっきのやつで足挫いてるだろ。少し歩き方変だし、今走り回って悪化したら終わりだろ?」
まじで?
言われてみれば確かに右足痛い気がしてたけど。
これ、挫いてたのか。
我が身ながら気付かなかったわ。
よく見てるなこいつ。
何となくズボンの裾を捲って、足首が少し腫れてた。
ほんとだ。これは無理をしてはダメなやつだ。
「じゃあ任せた」
テレンシオはマオに任せて近くの物陰に隠れた。無理はいけない。
ここでゆっくり戦況観察をさせてもらおう。
「じゃあ行ってくるな」
そう言ってマオは剣ではなく長い骨を持って行った。
待て、なんで骨を持っている。拾ったのか?
いつ拾ったのか気付かなかったが、どうやらそれを武器の代わりにするらしい。
ハーリがマオに気付いて、突然粘液の塊を尾の先から発射した。それを避けたマオはあっという間に近付くと、ハーリの顔面を殴り付ける。
容赦ない。
『ギキイ!!』
しかし、そこは魔物。
すぐさま体制を整えるとエリマキを大きく広げて姿勢を低くする。
『ギャアー!!』
エリマキを素早く折り畳むと、ハーリの周りには大量の石が。
それがマオ目掛けて飛んでいく。
それをマオは骨で上手く弾きつつ、回避する。
すると突然石の軌道が変わり、大きく弧を描いてマオの横側から攻撃を仕掛けてきた。
てっきりそれを先程と同じ様に弾くのかと思っていたが、マオは急いで後方に跳んで避けた。
マオの顔ギリギリを石達が通過する。
そして石はまたしても弧を描いて尾の周りを回り始めた。
そこでテレンシオはようやくマオが避けた理由に気付いた。
尾と石が粘液でできた糸のようなもので繋がり、まるで分銅のようになっていたのだ。
ハーリが粘液の粘り気を調整できるのは知っていたが、こんなにも強くできるとは思っていなかった。
それに、あの動き。
恐らく分銅を扱う人間の動きを学習している。
(一人じゃきついか?)
助太刀に入ろうかとマオを見たところで、テレンシオは驚いた。
マオは予想外の動きを見せたハーリに対して、口元に笑みを浮かべていた。




