下準備①【勇】
かと思ったが。
「ねぇ、おかしくない?なんで俺また連行されてるの?捕獲のオッサン」
晴れて二代目勇者になったテレンシオは捕獲組織リーダーの男に俵担ぎされて連行されている途中であった。オッサンと呼ばれた男は太めの眉を吊り上げる。もともとつり目だと言うのに人相が更に悪くなった。
「オッサンじゃないググルグだ」
「は?ぐーぐる?」
「ググルグだ!!」
一旦テレンシオは小さくググルグと練習したが、どうも言いにくい。なので。
「呼びにくいからぐっさんでいい?」
本名呼びを諦めた。
ググルグの額に筋が入るが、テレンシオはそれに気付かない。
「で、前の質問に戻るけど、なんで俺俵担ぎされて連れてかれるの?勇者了承したじゃん」
「お前が勝手に何処かへ走り出そうとしたからだろう!!何処へ行くつもりだった!?」
テレンシオは少し考えた。
「………、さあ?」
あの時は、じゃあ早く元凶見付けて倒そうとしか頭になかったので、何処に行くとかは何も考えていなかった。というか、このググルグという男、教会にいたときと雰囲気が大分違う。猫を被っていたのか。
「…おまえ、バカだろ」
「は?うっせぇわハゲ」
「禿げとらんわ!!」
「親父が言ってたぞ!銀髪で、なおかつキッチリ髪を結い上げるやつは神経質で髪を痛み付けてるのにも気付かない鈍感が多いからすぐ禿るって!!お前そのものじゃねえか!!」
「ぐっ…!!」
ググルグは言葉に詰まった。
確かにテレンシオの言う通り思い返せば親族の男は若くから額が広いような気がした。
しかし言葉負けしたのが悔しく、いったん深呼吸して心を落ち着かせた。
「…まぁ、髪の話はどうでもいい。それで、お前の質問だが、これから勇者としての力を付けるべく山に行く」
「はぁ?なんで?」
「お前がこれから戦うのはそこらにいる獣じゃない。魔力を得て進化を遂げた怪物や、地から這い出てきた異形のモノだ。普通にやったんじゃすぐに殺される。四年探し回ってようやく見付けた勇者がただのバカな糞餓鬼なのはとても残念だったが、せめて長生きしてもらわんとな!!覚悟しろよ!!神様に認めてもらった以上、私がお前を徹底的にしごいてちゃんとした勇者に仕上げてやる!!!」
クワッとググルグの目が見開く。しかしそれもテレンシオは気付かない。俵担ぎだからテレンシオの顔がググルグの背中側にあるからと言うのもあるが。
「ふーん」
テレンシオは長いググルグの話に飽きていて、話を全て聞き流して青い空を眺めていたのだった。




