おっさん登場
トンネルはとても短くて、俺の目には青空が映った。ただ少し、なにかが俺の知っている世界と違った。
「そこで何をしておる!」いきなり肩を乱暴に掴まれ、俺の体は情けないことに、しりもちをついて倒れてしまった。
「いってぇー…。なにしやがる!!」
俺は、起き上がる反動で掴みかかろうとした。だけど、やめた。…なんでって?だって、この男、普通じゃねぇんだもん。俺の知る限り、着物きて、腰に刀さしてるような奴、江戸時代に消滅したはず…。…ナゼここにいる。
「何をしていると聞いたんだ。答えろ、流れ者」威勢がいいおっさんだ。こういう場合、だいたい逃げるが勝ちって言うけど、おっさん刀持ってるし、逃げたら殺されるよなぁ…。
「…トンネルくぐったら、ここに着いちまったんだよ。」
正直に言ってみた。すると、おっさんはニカッと笑って、
「お前もか。…俺も流れ者なんだよ。昭和から江戸に……」
と言った。ちょっと待て!昭和って…結構昔じゃん!!なんで…このおっさんまだ若いんだよ。
「俺の年が気になるか?多分、流されたのが28のときだから、今は100超えてるはずだがな」
「じゃあ、なんでそんなに若ぇんだよ!おかしいだろ!?」
「あぁ。おかしい。こっちに来てから全く年をとらん」
そんな…。俺はずっと大人になりたかった。でも、ここじゃあそんな些細な望みも叶わねぇのかよ。
「…おい。隠れるぞ…」
「は?……ぅわッ!?」
おっさんがいきなり俺の手を引っ張って抱き寄せた。
「なっ…なにすんだよ!離せホモ!」
そんな俺の口は大きい手で塞がれる。
「静かにしろ。殺されてぇのか…」
一体なにが起こってんだよ…。俺はただ、おっさんの腕の中で静かにすることしかできなかった……。