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日録ログダイアリー  作者: 鏡 もち
18/20

1月26日 だから私はマスクをした

「ねえ、わたしキレイ?」

路地裏で女性に声をかけられた。長身で髪が長く、大きなマスクを付けていた。

「目が綺麗ですね」

私は彼女を少し眺めて、淡々と言った。

女性はえっと驚いた様子で、マスクにかけていた手を止めた。

「見せて下さるんですか、素顔」

彼女はしばらく考えているようだったが「化粧を忘れていたので帰ります」と踵を返した。

私は逃してなるものかと彼女の手を掴んだ。

「そんな風に言われたことがないので、自信が、ないんです」

陽は傾き、路地裏には我々の重なった影が伸びていく。私は手を離さなかった。


「わかり、ました」

彼女は決意したように、私に向き直った。そしてゆっくりとマスクに手をかけた。

「その、驚かないでください、ね」

痛々しく耳近くまで裂けた彼女の口があらわになった。私の台詞は決まっている。

「やっぱり、綺麗じゃないですか」


沈む夕日の方角にスキップで去っていく彼女の影が、私の顔に落ちている。

彼女が見えなくなってから額の汗をぬぐうと、携帯を取り出した。簡単な報告を済ませると、事務的な声が返ってくる。

「お疲れ様でした。では社会復帰プログラム第1段階クリア。次のステージへ移行して下さい」

私はカバンから社会復帰プログラムと書かれた冊子を取り出し、2項目を確認した。


このバイト、長続きしないなと思ったが、こんなこと彼女には口が裂けても言えない。

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