表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
満月少女 亜矢  作者: 黒瀬新吉
30/67

30.木霊フクロウ

「全く、つかめない。あの日高という男といい、テツというヤツも……」

伊織は強くもない酒に手を伸ばし、ぼんやり部屋の外を見ていた。

「プルルル……」

ZIGからの通信が入った。伊織は聴くばかり、そしてこう繰り返すだけだった。

「イエス……」


日高の言う通り、テツに向かった者はことごとく裏をかかれてしまい、事もあろうにヘリまで奪われたのだ。そのヘリにZIGは搭載されていた武器に襲われたのだ。それは武器庫の大火災となり、ようやく落ち着いたのは三日後の今日だと言う。一刻も早く『マスター・シード』を手にし、そのクローン・モンスターを各国に売らねばならない。

「日高の処分は、任せる……」

赤らめた顔のまま、伊織は敬礼をすると最後にこう言った。

「イエス、ジーザス!」

灰色の「ヤモリ」が窓の外に張り付き、様子を覗いている事に伊織は気付かなかった。


「そうか、テツがZIGを潰してくれればちょうどいい。所詮人知を超えて『シノ』は存在するのだ。俺はそれを垣間見た人間のひとりなのだ……」

ドクは日高修一の『命日』を思い出した。しかし彼の回想する時間は、不粋な警報器のベルに遮られた。何者かが、アジトに攻撃をしてきたのだ。


アジトと名付けてはいるが、機材を搬入している部屋以外は普通の鉄骨だ、軍用ヘリに攻撃されて耐えられるはずもない。一瞬で赤茶けたコンテナだけが地上に取り残された。しかしヘリの攻撃は執拗に続く。そのヘリは国連軍のものだった、地下壕の天井のハッチが開きデータの転送が終わった杢原がシェルターに入ってきた。

「ドク、データの送信終わりました」

「ご苦労、うるさい奴らを始末しろ」

「行け!木霊フクロウ……」


「なんと、国連軍が一瞬で壊滅したのか。そのモンスターは空を飛ぶのか」

善三は国連軍の参謀「(みぎわ) 純人(すみと)」にそうつぶやいた。

「ああ、しかし何故か急に落下していったらしい。まるで力尽きたように、ゆっくりと円を描いて。しかし、地上に立つものは皆無だが、今一歩、地下までは破壊できなかった」

モニターの後ろで黒い人影が動く、それを見た雄馬が安心したように話しかけた。

「お前、やっと席に戻れたのか?」

「ああ、紹介する。趙の娘さんだ」

「初めましてサラと言います」

「ところでテツ、こっちにはいつ戻る?」

それは、まだ決まっていない。それに実は日高は……」


モニターの向こうが衝撃で激しく揺れ、通信が途絶えた。


「ZIGか、それともモンスターの攻撃か?」

雄馬の問いに答えるものはいない、遠い日本ではその詳細はつかめなかった。

一人娘サラが無事な知らせに趙は一安心した。何よりの知らせとなった。

「おそらく、そのモンスターは『ルナティ86』のエネルギーを使い果たしたのだろう。趙たちとはタイプが異なるようだ」

善三の言葉に少し憤慨したのだろう、ラビがふくれて言った。

「私たちは『モンスター』じゃあないわ。『新型(ネオロイド)』には違いないけれど」

「はははっ、新型はよかったなラビ」

趙はそう言うと、新たな「シード・モンスター」を迎え撃つ覚悟を決めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ