24.ラビの活躍
「私は、バニー・レディー、ラビ。あんたたちと一緒にしないでこの怪物!」
ラビはそう言うとその垂れ耳を持ち上げ、コマンドスーツに包まれた。
「グフフフッ」
それを敵と認識したヤモリの怪物は、すかさず口から紫色の粘液を吐いた。それは二人の足下に飛び散り、強烈な酸の匂いに変わってガレージ内に拡散した。地下の警報ブザーが反応し、けたたましく響いた。
「ママ、これは神経ガス。早くこれをつけて」
ラビはガスマスクに変形させた「イアー・ウォーマー」を急いで由樹に投げた。それを装着すると、由樹はエレベーターに消えた。
「さあ、これで思い切り戦えるわね。遠慮はいらない。かかっていらっしゃい」
ラビが右手の指でヤモリの怪物を手招きした。
「ガルルルッ、そうか。お前は仲間ではないのか?」
そう言うとヤモリの怪物は舌を伸ばしその先端を鋭く尖らせた。まるでつららを折る様に「ポキリ」と折ると、それをつかみラビに突きかかった。しかしそれをラビはすべて紙一重でかわし続ける。
「なんてやつ、こいつは変異もできる怪物なのね。初めて見たわ、しかも随分成長している……」
ラビは後方宙返りをして鋭いソードをかわした。着地は手足を同時に着く、いわゆる「四つん這い」だ。
向かってくる怪物の頭を「ぴょん」と跳び越える。怪物はその首を大きく振り、ラビを追った。手をついて着地をしたラビはそのまま長い脚を曲げると、いっぱい力をためた。
充分に力を蓄えたその脚が飛びかかってくる、ヤモリの怪物の胸に深く突き刺さった。
「グルルルッ」
それはラビの足先が尖ったブーツに変異したものだった。だが胸に深く刺さろうと怪物はひるみもしない。
「ズブブブッ」
その脚を胸の細胞が飲み込んでいく。しかしラビはそれを見越していた。ラビは両脚を怪物の胸から抜いた。ブーツが怪物の胸に消えたのを見計らって、ラビはそれを爆破させた。
「ズガガガーン」
趙杢霖と同じく、怪物を引き出そうというのだった。しかしその「ぽっかり」と空いた胸は空っぽだった。
「ウーン、残念。素早く逃げ込んだか……」
そう言ってラビはまた四つん這いになると、怪物の様子をうかがった。
「ギュルルルルロロ。おまえ、よくも……おぽえていろよ……」
すでにふさがり始めた、その胸を押さえながら。変異を解いた怪物の言葉がガレージに響く。「怪物」は地上に向った。閉鎖された広大な敷地の中だ、セキュリティー・システムにより実弾とレーザー光線が一斉に「侵入者」を捉えた。たちまちそれは肉片に変わる。しかし変異細胞は自己再生を繰り返し。遂に橘家を脱出した。塀の外の一般道路に待つ白いセダンの中には男が二人待っていた。
「まあ、上出来だ。『2号』はお前の様に知的レベルは上がらなかったからあんなものだ」
「敵にも、変異生物がいるとは誤算でした。おそらく『マスター・シード』から産まれたものでしょう」
そう、日高に言ったのは、行方が解らなくなっていた「伊織」だった。
「1号はノアの言った通り、学習能力が発達を続けている。やがて『マスター・シード』を超えるかも知れない。その時はそれまで蓄積された能力がお前を無敵の怪物に進化させているに違いない……」
日高は、動き始めた車の中で青白い顔に戻ったモンスターに話しかけた。
「1号よ、早速お前のデーターを使い新たな仲間を作り上げよう。ヤモリの能力程度ではまだ足りない。マスター・シードの変異体はより『ラグ』に近い、雄馬の持ち出した「マスター・シード」はおそらく「シノ」になるはずのものだ。発芽まであまり時間をかけるわけにはいかない、残りのシードはシードのままで手に入れるのだ」
日高はその男にそう命令した。
「あのバニー・レディーと名乗る変異生物はマスター・シードをひとつ持っている、手こずる訳だ」
伊織は突然現れたラビについて、そう冷静に分析した。




