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6.山本里美(18歳)の元日

姉の真由美が結婚をし、そして次の姉の明美も既に結婚が決まっている。

昨年の正月には皆が揃っていたのに、もう今年は姉妹では自分だけがこの家にいることになった。

正直言って、自分もこの家から出たかった。



元日の朝、悪いタイミングで生理がやってきた。

思っていたより少し早い。

煩わしいとは思うものの、今月も「無事」だったことの証でもあるから、嬉しさも半分ある。


両親には知られてはいないが、里美には彼氏がいる。

同じ高校の2年先輩で、現在は大学生だ。

学校帰りによく立ち寄るコンビニで声を掛けられた。

彼が先輩だとは知らなかったのだが、ふとした話から先輩だと分ったのだ。

それがきっかけで、急速に親しくなった。

彼の部屋にも遊びに行くようになる。

当然の成り行きで、性交渉を持つようになった。



この正月休み、実は、彼から旅行の誘いがあった。

スノーボードをしに、長野の祖母宅へ行かないかとの誘いだった。


里美は母親の直子に相談をした。

もちろん、女友達と行くのだと嘘をついた。


だが、母の答えは冷たいものだった。

「今年は、2人のお姉ちゃんがいなくなっているからね。せめて、里美だけは家にいてよ。」

そう言われてしまった。

母がそう言う以上、父が賛成してくれる筈はない。

彼氏には、その辺りの事情を説明して「ゴメン」と謝った。


それでも、彼はその旅行に出かけた。

どうしても祖母に会うのだと言っていた。



元日の朝、生理で重たくなった身体を引きずるようにして食卓へと座った。

毎年の儀式のように、父親からは「お年玉」と書いたポチ袋が渡された。

中を見ると、5千円札が3枚入っていた。

「お姉ちゃんたちの分を里美に入れておいたんだ。」

その父の言葉に、里美は黙って食卓を離れた。


「里美、どこに行くの?」

母の直子の声に、お腹を押さえる仕草をする。

母には、それだけで生理中だと伝わるようになっている。


「お父さん、来年はあの子もここにはいないかもね。」

「どうしてだ!」

「だって、あの子、東京の大学を目指しているのよ。

きっと、今から勉強を始めるんでしょうよ。」



(完)



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