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4.高木浩介(34歳)の元日

2年前に美鈴と離婚した浩介は、つい2ヶ月ほど前に再婚をしていた。


美鈴との間は決して上手く行ってなかったとは思っていない浩介である。

口うるさい母の多岐と若い美鈴の間でいさかいが絶えなくなって、とうとうあのような事になってしまった。

そう考えていた。


あの当時、母との別居も考えたが、既に父が癌で死んでいたから、母をひとりにすることを決断できなかった。

一人っ子として育てられ、母の影響を強く受けて育ったこともひとつの理由だったのかもしれない。


母の多岐は、孫に当たる雄太を手放さないよう強く主張した。

「高木家の跡取りなんだから」が言い分だったが、浩介自身は、子供がさほど好きではなかったこともあって、それには固執しなかった。

それよりも、家庭内で母と嫁が揉める状況から逃れたいと言うのが本音だった。



再婚の相手、真由美は、母の多岐が選んできた。

美鈴の時には自分が惚れて結婚を申し込んだのだが、今回は、多岐の主張を全面的に受け入れた。

容姿や女としての器量より、母親とうまくやってくれることのほうがより重要だとの考えによる。


真由美は初婚だった。年齢は30歳。

写真を見せられたときにも感じたことだが、器量も悪いし体型もかなり太り気味だ。

これまで結婚できなかったのは当然だろうと男の目からは思える。

だから、正直、少しは不満はあった。

一緒に外を歩く気がしない。


だが、それでも「この再婚は正解だった」と思うようになっている。

ひとつは、多岐との関係である。非常にうまく行っている。

仕事から帰っても、美鈴の時のような険悪な雰囲気がまったくない。

まるで本当の母娘のように、女2人の笑い声が聞こえるのだ。

さすがに多岐が自分で選んできただけのことはある。


もうひとつは、夜の夫婦生活である。

美鈴は自分からそれを求めたりもする、どちらかといえば積極派だったが、真由美はすべて浩介任せなのだ。

浩介がしたいと思えば素直にそれに従ったし、そうでないときには、何も言わずに自分の布団に納まった。

まさに浩介の意のままだった。



元旦の朝、食卓には真由美が初めて作ったという雑煮があった。

「お母様に一から教えていただきましたが・・・・。」

そう言って出したものだったが、浩介が口にすると、それはまさに子供の時から食べ親しんだ「お袋の味」だった。


「真由美さん、今年は子作りにも頑張ってくださいね。」

多岐の嬉しそうな顔が何年振りかに見られた元旦である。



(完)



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