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決戦!

・・・・・・嘘である。この物語はまだ続く。



恥ずかしい話なのだが、シダバーに囲まれたあと、混乱したおれは手足をムチャクチャにふりまわした。寝転がった姿勢で。だだをこねる子供のように。



で、そのムチャクチャにふりまわした手足で、シダバー十体を全員ぶっ倒してしまったのである。



我にかえり、立ち上がると、シダバー達はみんな地面に倒れたまま動かなくなっていた。



状況を理解したあと、おれは両手で顔をおおった。

「ええぇ・・・・・・」

なんか猛烈に恥ずかしい。



あまりにも、情けなかったので、作者も思わず完結させそうになってしまったみたいだ。



遠くから見ていた少女が言った。

「ダッセェ」

「ち、ちがうんだ、少女よ!おれのやりたかった戦いはこんなのじゃ・・・・・・」

少し離れた場所で様子を見ていた、餅とユウ・Uーも、あきれた表情をしている。

「おまえ、ふざけてんのか?」

とユウ・Uー。

「真面目にやってくださいよ」

と餅。

「だからちがうんだって!」

おれはあたふたしながら、必死で言い訳を考えた。



そのときだ。





「なんだおまえは」





聞き覚えのある、抑揚のない声が響いた。




背筋が冷たくなった。



記憶が、ずぐりとよみがえる。



忘れていない。この声、忘れられるわけがない。



黒い感情がわきあがる。怒りで頭が熱くなってゆく。



おれは、振りかえり、ゆっくりと上を向いた。





スーパーマーケットの屋上に、そいつはいた



白い裸の女体に、蜘蛛の形をした頭を持つ怪物が、こちらを見下ろしていた。



「クモシダバーァァァッ!!」



おれは怒鳴った。



クモシダバーは、がくんと首をかしげた。

「その声は聞いたことがあるな。おまえは昨日のおまえか?姿形が違うようだが。わたしの部下を倒したのは、おまえか?おまえのようだな。本当に、おまえは一体何なのだ?」

「てめえ、よくも親父を!」



おれは高く跳躍した。そしてスーパーマーケットの屋上まで飛び、クモシダバーにむかって蹴りを放つ。



しかし、かわされた。



クモシダバーは、軽やかにジャンプし、宙を舞い、電柱の上にのった。



屋上に立つおれを見て、首をまたかしげながら、クモシダバーは言った。

「昨日と違って、動きが安定しているな。その鎧のせいか?その鎧は何だ?」

「クモシダバー、おまえだけは、絶対に許さない」

「それはどういうことだ?怒りにまかせて、わたしを倒すということか?」

「そうだ!」

「それは無理だ。おまえは確かに強い力を持っているが、弱点がある」

「・・・・・・なんだと?」

「いまからそれを教えてやることにする」



クモシダバーは、こちらに向かって、大量の糸を吐き飛ばしてきた。



おれはそれをよけると、屋上から飛び降りて、地面に着地した。



しかしクモシダバーは、まだスーパーマーケットに向かって糸を吐き続けた。



狙いがおれじゃない?



とまどいながら、様子を見ているうちに、スーパーマーケットの建物全体が、蜘蛛の巣で覆われ、真っ白になった。

「さあ、いく」

クモシダバーは、糸の端をつかむと、ぐん、と腕を振り上げた。



すると、信じられないことが起きた。



バキッ・・・・・・バキャバキャッ、バキャキャキャキャッ、バリィッ!



地面のアスファルト道路が、大きな音を立ててひび割れたかと思うと、糸に覆われたスーパーマーケット全体が、地面から剥がれ、空中に持ち上げられたのだ。



クモシダバーが、糸をひっぱって、スーパーマーケットを持ち上げたのだ。なんという強度の糸か。



バケモノだ。



あらためて、そう思った。



呆然と見上げていると、クモシダバーは糸をつかんだ腕を振り下ろした。



すると、スーパーマーケットは、おれから少し離れた所へ向かって落下していた。



そこには、少女がいた。



「しまった!」

クモシダバーの意図を察して、おれはすぐさま飛んだ。



そして少女の前に立つと、両腕をあげて、落ちてきたスーパーマーケットを受け止めた。



ごおうっ・・・・・・




「くおおおおおっ!」

凄まじい重みが、本当に、シャレにならない重量が、全身にのしかかってくる。



骨がきしむ。筋肉が、ぶちぶちと切れてゆく。




べきべきっずず・・・・・・




両足が、道路に沈み始める。



「・・・・・・早く・・・・・・逃げて・・・・・・」

かすれた声で少女に話しかける。

あまり長時間、支えていられそうになかった。



しかし少女は、おれの足元で気を失っていた。あまりの出来事に、ショックが大きすぎたようだ。



「くそ・・・・・・どうすれば・・・・・・」

「さあ、どうする?」

クモシダバーが、目の前に立った。そして、がくんと首をかしげて言った。

「これがおまえの弱点だよ。昨日もそうだった。わたしには理解できないが、おまえは他の命を守るために、自分の命を投げ出そうとする。馬鹿だ。とてつもない馬鹿だ。愚かだ」

「くっ・・・・・・」

クモシダバーが、また糸を吐いた。その糸はおれに膝に巻きつき、強く締めあげてきた。

膝から、ぶしゅうっと、血が吹き出した。

「があああっ」

おれは、がくっと片膝をついてしまった。




ずしいっ・・・・・・




持ち上げたスーパーマーケットが、大きく傾いた。

巨大なコンクリート片が、少女のすぐ横に落下し、砂煙をあげる。



「ほら、どうした?ちゃんと支えておかないと。少しでも揺らすと、また瓦礫が落ちてきて、この娘を傷つけてしまうだろう。ほら、がんばらないと」

淡々としゃべりながら、クモシダバーは、糸をさらに強く締めつけてきた。糸は少しずつ肉に食い込み、骨に触れる。



仮面の下で、歯を食いしばって、痛みに耐えた。

くやしいが、反撃はできない。



少しでも手をはなすと、スーパーマーケットが落ちてきて、少女の体を潰してしまう。



「このまま、足をちぎりとってやることにする」

クモシダバーが、近付いてきた。



その時だ。



「オラァァァァァァァッ!!」



ユウ・Uーが雄叫びをあげながら走ってきた。そしてスーパーマーケットの下に滑り込むと、片腕で少女の体を抱き上げた。



「ユウ・Uーさん!?」

「邪魔をするな人間!」

クモシダバーが、ユウ・Uーに向かって糸を吐こうと、口をガパァッと開いた。



すると、銃弾が三発飛んできて、クモシダバーの顔に当たった。



「ばぎゃッ」

クモシダバーは、顔を抑えてもがき苦しんだ。

おれは銃弾の飛んできた方向を見た。

餅が、拳銃をかまえて立っていた。



「今だ!やれ!やっちまえ!」

少女の体を抱えたまま、百メートル程離れた場所まで走ると、ユウ・Uーが振り向いて怒鳴った。

「・・・・・・よし」

「ばぎゃぎゃぎゃっ!」

クモシダバーが、顔を抑えたまま、背を向けて逃げ出した。

おれはスーパーマーケットをぶつけてやろうと思い、両腕に力をこめた。

するとクモシダバーは、右腕をあげ、その手を強く握りしめた。



スーパーマーケットが崩壊した。



おれの家の時と同じだ。強靭な蜘蛛の巣で締めつけ、一気に破壊したのだ。

「うわわわわわわわ」

山ほどの大きな瓦礫がたくさん降り注ぎ、おれは生き埋めになった。



・・・・・・気がつけば、闇の中だった。



瓦礫の重みが全身にのしかかっていて動けない。



両手両足に力を入れてみたが、無駄だった。アーマーのおかげで、押し潰されずにすんではいるが、やはり凄く痛い。



・・・・・・まずい。このままだと、クモシダバーが、あの少女や餅達を襲ってしまう。

「ふんぬぬぬぬっ」

もう一度力をこめて、腕を動かそうとしたが、周囲の瓦礫が少しぐらついただけで、まったく抜け出せそうになかった。

「ああ、ちくしょう!なんだよもう!」

泣きたくなった。

なんでおれはこうなんだ!こんな大事な局面で、生き埋めになるなんて。



誰も見てないし、ちょっと泣こうかな、などと考えていると、闇に慣れてきた目に、ある物が映った。



それはおぼろ豆腐だった。



目の前の瓦礫にひっかかっている。スーパーマーケットの商品だろう。まわりには、納豆のパックや油揚げもある。



それを見て、おれは思い出した。



朝、餅から教わった、ベルトのある機能を。



おれはすぐに叫んだ。



「モードチェンジ!OboroDofu!!」



ベルトが光を放った。



その光はおれの全身を包み、体の形を変えてゆく。



これがTFシステムの機能のひとつ、TFチェンジだ。



体内のTF細胞を操作し、肉体を、己の望む形の豆腐に変えることができるのだ。









おれの体は、おぼろ豆腐になった。







「・・・・・・・・・・・・」



すごく変な気分だった。



形としては、あれだ。ドラクエのはぐれメタルみたいな感じである。



手がない、足がない、どろどろの状態。気持ち悪いような、気持ちいいような。



「・・・・・・・・・・・・はっ」



いかん。ぼんやりとしている場合ではない。



おぼろ豆腐になったおれは、そのどろどろの体で、瓦礫の小さな隙間を素早くくぐり抜け、外に飛び出した。



日の光がまぶしい。暑くてチャンプルー料理になりそうだ。



地面にべちゃっと降りると、もう一度叫ぶ。



「モードチェンジ!NormalDofu!」



光に包まれ、おれの体は、もとのトーフマンの姿に戻った。



すぐに周囲を見回す。







目の前に、クモシダバーがいた。





クモシダバーは、おれの姿を見て驚き、肩を震わせた。



「おまえ?何故だ?どうやって瓦礫から出てきた?」



「これがTFシステムの力だ!」



おれはベルトに手を添えて言った。



「このベルトには、実験体となり、傷ついてきたユウ・Uーさん達の想い、研究者である餅達の想い、そして、親父の想い、シダバーから愛する家族を守りたいと願った、たくさんの人達の想いがこめられているんだ!このベルトの力で、おれはおまえを倒す!!」



クモシダバーは、顔の撃たれた箇所から、青い血を流しながら、後ずさった。



「ばぎゃぎゃぎゃっ!?馬鹿な!?馬鹿な馬鹿な馬鹿な!?信じられない信じられない!?人間が人間がたかが人間ごときが!?そんな我々シダバーと同等の力を!?いやそれ以上の力を持つなんて!?ありえないありえないありえないありえないありえないありえない ありえないっ!!!!」



「クモシダバー!親父の命を、人々の命を遊ぶようにして奪ってきた、おまえ達シダバーを、おれは絶対に許さないっ!!」




おれは、構えた。



静かに息を吸う。



ゆっくりと吐く。



そして、呟く。









「モードチェンジ・・・・・・MaboDofu」





・・・・・・ぼぉっ






全身が、緋色に染まる。



高熱が、炎を生み、おれの体を包み込む。





「くそ!くそくそくそくそくそくそくそくそくそくそぉぉぉぉぉ!!」



クモシダバーは、背を向け、空に向かって高く跳躍した。また逃げるつもりのようだ。



「遅いっ!」



おれはジャンプした。



一瞬で、クモシダバーの頭上まで飛び上がる。



クモシダバーは、空中で硬直した。おれの動きが、見えなかったようだ。



おれは、話しかけた。



「・・・・・・クモシダバー、おまえはさっき、他の命を守ろうとすることを、馬鹿にしたよな?」



にらみつける。



そして叫ぶ。



「守る力を、なめんじゃねえぞっ!!」







「マーボークラッシャァァァァァァッ!!キィィィィィック!!!!!!」







麻婆の炎をまとったおれの蹴りが、クモシダバーの体をつらぬいた。



「ばぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」



悲鳴をあげながら、クモシダバーは爆発した。




おれは地面に降り立った。



そして上空に大きく広がる、黒い煙を見上げた。



黒い煙は、ゆっくりと風に流され、霧散していった。



クモシダバーの肉体は、跡形も無く、この世から消え去った。





「・・・・・・終わった」



変身を解く。



ベルトが光を放ち、おれの体は元の人間の姿に戻る。



「・・・・・・疲れた・・・・・・」



元の姿に戻った途端、凄まじい疲労感が襲いかかってきた。体が重い。おれは膝をつき、うつぶせになって倒れた。



声をあげながら駆け寄ってくる、ユウ・Uーと餅の足音を聞きながら、おれは瞼を閉じ、ゆっくりと眠りについた。







こうして、トーフマンの最初の戦いが終わった。





しかし、シダバーとの戦いは、まだ始まったばかりだ。





これからも、数々の困難に立ち向かわなければならないだろう。





そういうわけだから、頑張れ!トーフマン!





負けるな!トーフマン!





人々の平和を守るために!

















(今度こそ本当に)




















































はじめまして、桝田空気と申します。ヒーローものでございます。かなりふざけてます。そもそもなんでトーフマン、豆腐のヒーローかというとですね、もともと、この作品の原形は、実際の豆腐屋に勤めている友人をモデルにして、数年前に、遊びで書きちらかしたものなのですよ。



タイトルが、「仮面ラ○ダーTF」です(笑)。



読み返してみると、なかなか熱くて面白いと思ったので、「トーフマン」として書き直して、公開しちゃいました。



いやあ、変なの書いちゃいましたね。



ホント、好き勝手にやらせてもらいました。



ぼくのヒーロー哲学みたいなもんも、少し交えてます。





読んでいただいて、本当にありがとうございました!!



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