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変身!そして・・・



少女は混乱していた。



一体自分の身に、何が起きているのか分からなかった。



つい十分程前まで、平和な日常を過ごしていたはずだった。



朝、赤いランドセルを背負って、友達と一緒に小学校へ行く途中だった。



スーパーの横を通り過ぎた時だ。



空から人が降ってきた。



背広を着た男の人だった。その人は地面に落ちると、ぐえっとうめいて気絶した。



少女が目を丸くしてそれを見下ろしていると、周囲からたくさんの悲鳴があがった。



顔をあげて、少女は絶句した。



怪物が、人を襲っていた。



全身毛だらけの、角を生やした人型の怪物が十体。

長い爪で、通行人を切り裂いていた。血が飛び散った。たくさんの人が、苦しみの声をあげながら倒れていった。

怪物達は、物凄い力で、人々を投げ飛ばした。切り裂いた。地面に叩きつけた。



少女は混乱した。



一体何が起きているのか分からなかった。



やがて、怪物の一体が、こちらに迫ってきた。少女も、横にいた友達も、恐怖で足がすくんでしまい、動けなかった。



怪物が目の前に立った。

そして、長い爪の生えた大きな手を、思いきり振り上げた。



少女は目をつぶった。



その時だ。一人の男が少女の前に立った。そして、怪物を殴り飛ばした。怪物は高く吹っ飛びスーパーの二階の壁にぶつかり落下した。

「大丈夫か?」

男は振り向き、少女に優しく話しかけた。

「・・・・・・あ」

少女は小さく驚きの声をあげた。その男に見覚えがあったのだ。

その男は、少女が通う小学校にの給食センターに、車で豆腐の配達に来る、豆腐屋のお兄さんだった。

しかしその姿は、いつもと違っていた。

シャツの袖かはのびる両腕が、何か異形の鎧を身につけたかのような形をしていた。

そして、腰に銀色に輝くベルトを身につけていた。

いつもの豆腐屋のお兄さんと、雰囲気が違っていた。



他の怪物達が、こちらに注目した。

お兄さんは、静かに構えをとると、怒りの炎を目に宿しながら叫んだ。



「・・・・・・変身!!」



ベルトが激しい光を放った。



ーーーーーーーーーーーー





ベルトが激しい光を放った。





全身がかっと熱くなり、体が変形する。





皮膚表面に出たTF細胞が、白い鎧となり、肉体を包みこむ。





そして、





おれは変身した。









しゅううぅ・・・・・・





変身の際に発した高度の熱で、足元からわずかに煙が出ている。



おれは自分の身体を見た。



金属化した豆腐のアーマーが、頭から足の先にまで、おれの全身に備わっている。



「すげえ」

体内に力がみなぎるのが分かる。かゆみはない。TF細胞が、おれの身体と同調しているのだ。



そのときだ。

「お兄ちゃん!危ない!」

少女が叫んだ。



シダバーの毛だらけの怪物が、五体同時に飛びかかってきた。

おれは即座にかまえ、拳を握りしめた。

「・・・・・・はぁっ」

力をこめ、パンチを放つ。



ごおっ



突風が巻き起こった。

街路樹がしなり、木の葉が宙に散らばる。スーパーマーケットの窓が、びりびりと震える。



そして轟音が五つ。



その一発のパンチで、おれは五体のシダバーを全て吹き飛ばした。

五体のシダバーは高く舞い、げぇっとうめき声をあげて、次々と地面に落下していった。



他のシダバー達は、動揺し、あとずさった。その中の一体が、汚らしい声をあげた。

「オ・・・オマエハダレダ?・・・・・・ナニモノダッ!?」






おれは考えた。そして決めた。



大切な人を守る度胸をつけるために。



勇気をふりしぼるために。



親父が生み出した豆腐の力で、豆腐屋の息子して、戦う覚悟を持つために。



深見勇一郎とは別の、戦士としての名前を名乗ることにした。



そして、おれは叫んだ。




「おれは、白い豆腐の戦士」



勢いよく構える。



「トーフマンだっ!!」




・・・・・・決まった。



「行くぞシダバーッ!」



おれは威勢よく駆け出した。



すると道に落ちていた石につまづいて転んだ。そして、目の前にあった電柱に顔面を強打した。コンクリートの電柱に、ビキッとひびが入った。



「ぐおおおおっ!」



仮面の上から顔をおさえ、しゃがんで痛みに耐えていると、ひびの入った所から電柱がバキバキと折れ、おれの頭上に倒れてきた。



ごつっ



脳天に鈍痛。



「ぎゃああああっ!」



アーマーのおかげで傷はないが、痛い。すげえ痛い。

脳がゆれ、ふらふらになりながら立ち上がり、千鳥足で車道に出ると、トラックにはねとばされた。



「ぶらああああっ!」



おれは高く舞い、げぇっとうめき声をあげて、十体のシダバーのど真ん中に落下した。

シダバー達は、少しの間顔を見合わせたあと、にやりと笑い、チャンスとばかりに倒れたおれを取り囲んだ。



「あ、いや、ちょっと待って!いまのナシッ、いまのナシで!少し前からやり直しさせて!イヤッ、イヤッ!こっち来ないで!イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァッ!!」
























ご愛読、ありがとうございました。




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