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物語の背景 その1・・・および 登場人物一覧

ここまでお読みいただきありがとうございます。


この物語の舞台は、15世紀{1400年代}前半のインカ帝国・・・現在のエクアドル、ペルー、ボリビアの地域になります。

その風土や慣習、世界観にはなかなか理解し難いところがあるかと思います。



創作にあたり、歴史研究書から地理の資料、ドキュメンタリーなど

多くの資料をつき合わせて、当時の様子を想像して書きました。


そこで、ここでは、

物語の中に出てくる独特の風土や慣習、動物、道具などについて、解説したいと思います。


あくまで私が調べた資料の範囲の聞きかじりの情報です。


そして、まだ研究段階であるこの文化は定説も日々変わっています。

資料によって、またこちらの解釈の仕方で矛盾があるかもしれませんが、ご了承ください。




もちろん、詳しい背景を知らなくても十分ストーリーは分かると思いますので、

面倒な方はこちらを無視していただいて結構です。




はじめに・・・

インカ帝国の歴史そのものは、確実なものではありません。

文字の無かったインカには、記録書がなく、それを知る手がかりは

この国を征服したスペイン人やその子孫の手による記録書クロニカです。

主にスペインの兵士や宣教師が現地人の口承を取材して書いたクロニカは、

取材した現地人の出自によって語る内容が違っていたり

スペイン人がその文化を正しく理解できなかったり、

あるいは政治的策略のために書かれたりしたものなので、

矛盾や歪曲も多いのです。


そこから本当の歴史を導き出すのは、それが書かれた背景を知り、

資料同士をつき合わせて共通するものを探し出す研究です。

主にこういった研究書から、

おそらくこれが正しいであろうとされている歴史を参考にしました。


現在では遺跡の発掘からその年代が分かり、

より正確なクロニカの裏づけが出来るようになってきているようですが。

インカの歴史というのは未だ研究段階なのです。




さて・・


インカという呼び名ですが、これは皇族の総称で、多くは皇帝を指す言葉です。

または、太陽{インティともいう}を指します。


この国の人は自分たちの国をタワンティン・スーユと呼んでいました。

タワンティン・スーユとは、四つの州という意味で、

この国が、東西南北四つの地域{州}から成り立っているという世界観から来ています。


物語ではこの国をスーユと略して呼ばせています。





王はサパ・インカ{唯一の太陽}と呼ばれていました。

皇帝という言葉を当てはめるのは矛盾していますが、

作品の中では、混乱を避けるためと、絶対的権力者という意味合いを強めるために使っています。


サパ・インカはひとりというのが定説でしたが、

同時期にふたり存在したのでは、という説もあるそうです。


宗教的な慣習からなのか、

この頃のアンデスに存在した多くの部族には、ふたりの首長が存在していたそうです。

そこで、インカにもふたりの王が存在した可能性がおおいにあるそうなのです。


将軍が二人同時に存在したというのは確かなことです。

カパック・ユパンキは、ワイナ・ユパンキという相方とともに遠征に出ました。


カパック・ユパンキについての記述ですが、

彼は皇帝の『きょうだい』であり、もうひとりの将軍ワイナもその『きょうだい』であった

という記録があるのですが、

彼らがどのような関係~兄か、弟か、異母兄弟か~であったかは実ははっきりしていません。


本当は皇帝よりもずっと年上の『兄』だったのかもしれません。


作品中では、カパックが皇帝の一番下の異母弟、

ワイナは直系の皇族ではないが、皇帝と同じくらいの年齢と設定しています。




次に気候、風土ですが、


この地域は南半球。

そこで太陽は東から昇り、北を通り、西へ落ちる。

北は赤道に近く暑い熱帯の地域。南に行くにしたがって温暖~寒冷になります。


ただ西の砂漠、中央の高原、アンデス山脈、アマゾンに続く熱帯雨林など

変化に富んだ地形なので、

南だから寒いと言えるわけではありません。


そして、季節は大雑把に分けて

11月頃から4月頃の雨季・・暑くて雨の多い季節・・夏

5月頃から10月頃の乾季・・寒くて乾燥した季節・・冬

になります。


日本の逆ということです。


太陽のまつり(インティ・ライミ)は、6月の冬至{日本では夏至}に行われるお祭りです。

一年で一番夜の長い日に太陽を呼び戻そうと行われるお祭りなのです。





人々の生活について、


作品中にミイラが出てきますが、

人は死んでもミイラとして生き続けるという信仰があったため、

特に位の高い人はミイラとなって崇め続けられました。


皇帝のミイラは生きていたときと同じく屋敷や財産を持ち、

生前の使用人たちが世話をしていました。

そして行事のたびに外に連れ出され、一緒に参加しました。

農村などでは先祖のミイラが祀られ、守り神として崇められました。

だから忌み嫌われるものではなく、崇拝されるものでした。



車輪はなく、馬のいなかったインカでは、移動手段は徒歩。

皇帝だけは人が担ぐ輿に乗っていました。


大型動物は高原に住むラクダ科の動物が主で

リャマ、アルパカ、グァナコ、ビクーニャなどがいます。

家畜としてはリャマやアルパカを飼っていて、荷物の運搬などをさせたりしますが、

人が乗るには適していません。

(一度、ミカイが乗っていましたが・・)


リャマは食用にもなります。

アルパカはその毛を取って紡ぎ、織物に使います。


また、鉄器のなかったインカでは

農耕に使う鍬は、先を尖らせた木に足を乗せる突起が付いた足踏み鍬です。

足の力を使って、鍬の先を地面に刺し土を掘り返します。


武器{狩りの道具}は主に石や木、青銅などが使われます。

マカナというのは円盤型の石の周囲にギザギザを刻み真ん中に穴を開け、木の棒を通したこん棒です。

斧は、刃が石または、青銅でできています。

そのほか、石をロープの両端に括りつけたボーラ

縄で編んだベルトに石を入れ、投げて飛ばすワラッカ

発射機の付いた投槍器などもありました。

接近戦では斧やマカナ

飛び道具としては投石器や槍が使われました。





時代背景としては、


この物語の時代・・・1400年の前半は

インカの国土は首都クスコの周辺から

チャンカ族を倒したことで手に入れた西の領域と

コヤ族から手に入れた現ボリビアのチチカカ湖周辺まででした。

インカよりも強力な勢力を誇る部族がまだ多数存在し、

常に緊張状態が続いていました。

そこで皇帝は将軍カパック・ユパンキを遣わして征服地域を大きく拡げていこうとします。


しかし、この将軍は地元の民を虐げることはせず、

友好関係を結ぼうと好意的に接します。

そんなことから地方に残る伝承の数々が彼を偉大なインカと語っています。

インカ族に否定的な感情を抱く被征服地でも

彼のことは好意的に語られているのです。




以上、私が取材した範囲・・での雑学でした。

物語はこのような舞台で展開します。


最初に前置きしたように、インカの歴史はまだ解明途中なので、

ほかにもいろいろな説があることを付け加えておきます。




-----------------------------------------


(ここまでの登場人物と用語)


登場人物


●カパック・ユパンキ{ユタ}

タワンティン・スーユ国{インカ帝国}の皇帝の弟。

十六歳で成人し皇帝の片腕として働く。若いが並外れた武術の腕前と統率力を持つ。

のちに将軍となりスーユの軍を率いて遠征に出る。

幼名はユタ。ミカイにはユタという名の金細工職人と名乗っている。


●ミカイ

緋の谷に住む農民の娘。明るく活発な少女。

首都クスコに花を売りに来てユタと出会い、ユタに想いを寄せる。

織物が得意で、薬草に詳しい。


●パチャクティ皇帝

タワンティン・スーユ国の皇帝。カパックの腹違いの兄にあたる。

絶対的な権力を持ち、逆らう者を容赦しない冷酷さもある。


●ワイナ将軍

古くからパチャクティ皇帝の片腕として数々の戦いを経験してきた勇敢な戦士。

カパックとともに二大将軍として軍を率いる。


●トパ皇子{トゥパック・インカ・ユパンキ}

パチャクチ皇帝の次男。

カパックとは皇族の中で年齢が近いため、兄弟のように育ってきた。

負けず嫌いで、早く遠征に出て活躍したいと願っている。


●ワコ

カパックの母親。

近隣部族のキリスカチェからスーユの皇帝に嫁いだが、カパックを産んですぐチャンカ族との戦いに出征し、戦死した。


●ビラコチャ

前皇帝、パチャクティとカパックの父

創造神の意



(カパックの側近)

●アリン・ウマヨック

軍の参謀として活躍する老貴族。

様々な部族の言葉が分かり、通訳として活躍する。


●スンクハ

常に冷静な判断力を持つ。

武器のひとつ、星型の石をつけた棍棒マカナの達人。


●クッチ

柔軟な体と敏捷性を持つ、陽気な小男。

ハート型の頭をしている。

調査官としてたびたび緋の谷を訪れては、カパックとミカイの仲立ちをする。


●ハトゥン

とがった頭をした、力自慢の大男。

南方にあったコヤの国の出身。クッチとともにカパックとミカイを見守る。


●ワラッカ

小柄だが頑丈な体をもつ、無口な男。

石加工の技術に優れ、土木工事などを指揮する。

武器のひとつ、投石器の達人。


●アティパイ

長い手足をもつ長身の男。

長槍の達人。


(チャンカ族)

●アンコワリョ

チャンカ一族の長。せむしの大男。

カパックに忠誠を誓い、クスコ郊外の鉱山で仲間とともに働く。


●キータ

チャンカ一族を率いる呪術師。

予知能力があり、カパックの運命を最初に会ったときから見抜いていた。

南へ移住して命を終える。


(緋の谷)

●大祖母さま

緋の谷のアイユを見守る老婆のミイラ。

人の頭の中にメッセージを伝えて会話する。人の未来を見抜くことができる。



用語


☆スーユ=タワンティン・スーユ

 インカ帝国の呼び名


☆クスコ

 スーユの都


☆チャンカ

 スーユに滅ぼされた一族


☆アイユ

 村


☆インティ・ライミ

 冬至に行われる太陽の祭り


☆チャスカ

 明けの明星、物語では花の名前


☆リャマ

 ラクダ科の大型動物


☆マカナ

 武器のひとつ、こん棒


☆インティ

 太陽神、太陽


☆イリャパ

 雷神、雷


☆コリャ・スーユ

 南州、南の地域


☆キープ

 縄文字、縄の結び目の色や形や数で、数や言葉を伝える


☆チャスキ

 情報を伝えるために国中を行き来する飛脚



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