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序章
太陽があり、大地があり
そこから生まれるものは皆ひとつ
風、雲、雨、雷、そして草花も動物も、皆ひとつ
昔々
人はそんな自然の中の一部に過ぎなかった
いつの頃からか人は大きな力を持ち
自然を自分たちのものとしようとした
そしてその力を独占しようと争いが生まれた
(彼)は、その流れを変えようとしたのか……
それとも、流れに逆らわずに
もっと違う世界との融合を図ろうと考えたのであろうか
その足跡は
乾いた大地の上に、偉大な遺跡の片隅に
人々の言い伝えの中に……
密やかに今も存在し続ける
ただひたすらに
信じる道を歩き続けた足跡が
(彼)の思いは、今もなお
風になり、光になり、漂い続けているのだろうか
Qan ta munakuni,
Tukuy sonqoywan munakuyki.
K’acha chaska sipas, mikay.
(あたたかな地方の言葉)を彼が低く静かに囁くとき
私の中に押し込められた氷のごとく冷たい想いも
ゆっくりとほぐれていく