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夜と朝の真ん中

久しぶりの投稿になります。

いったん夜の探索は終了です、です。




 ぐぇ、とか、ぎぃぐあ、みたいな声が口から漏れた。引き潰された人間の声を自前の喉で模倣しながらベルトとベストを外した。ブーツも脱いでビニール袋の中に突っ込む。静かに階下に降りていってズボンとシャツを脱ぎながら脱衣所へ。ズボンのポッケをひっくり返してシャツと一緒に洗濯物篭に放り込んで、歯ブラシとタオルを手に風呂場に入った。

 冷たいシャワーに打たれて歯を磨きながら、ぼんやりと家に帰って来ていた事に気が付く。口を濯いで歯ブラシを置いて、今は何時だろうと思った。分からないのでさっさと上がる事にした。

 寝間着のシャツに着替えて水をお腹いっぱい飲んで自室に戻って、また俺の喉から捻り潰したような声が出た。

 兎希が俺のベッドで寝ていた。確か部屋に鍵かけた気がする、いや気がするだけか。可愛い妹を置いて夜遊びに行く兄への当て付けなのかもしれない。部屋の時計は午前二時を指している。俺の帰りを待っている間に眠ってしまったのだろう。

「おい、兎希」

「ん、お兄、ちゃん? お帰りなさい」

 ベッドの端に腰かけて肩を軽く揺すると、兎希は寝惚けながら俺のシャツを掴んで俺を引き寄せて顔を寄せてくる。猫が愛嬌を振り撒くみたいに可愛く鳴いて、一緒に寝ようと誘ってくる。呆れてため息を吐いてから、やはり嬉しくなってる自分に気付いてまたため息を吐いた。

 兎希を抱き込むようにしてベッドに横になる。それから目を閉じて、欠伸をした。



 夢を見た。昔の夢。


「瑠兎、ほら、お前の妹だぞ」

 父さんが笑って手の中の小さな生き物を見せてくれた。そいつはぶー、と言って僕の指を掴む。離してくれない。

「お前の妹だからな、名前は兎希だ」

 義母が幸せそうな笑みを浮かべて僕を擽る。くすぐったくて身を捩りながら、僕はお兄ちゃんになったんだ、と実感した。

「お兄ちゃんになった気分はどうだ、瑠兎? 父さんには兄弟はいなかったからなぁ」

 父さんを見上げる。逆光で顔は見えない。光が強くで頭痛がする。でも僕は眼を細めて父親の顔を見ようと目をこらしていた。

「ん? ああ、すまんすまん」

 父さんはそれに気付いて、大きな手で僕の視界を優しく覆った。




「おい屑野郎」

「ぅぐあ」

 遮光カーテンの隙間から漏れる光が眩しくて呻く、いや全然違う。誰かが懐中電灯の光を俺に向けて何か言ってる。カーテンは全開、くそ眩しい。脳が焼ききれそうだ。誰かが何か言っているが良く聞き取れない。

「屑野郎、白楼(はくろう)から、俺の妹から離れやがれ!」

 いいからその前にカーテン閉めろ。それから俺の眼球は正常だから瞼を捲るな、攻撃として嫌過ぎるぞ。

「お前なんて、連れ子のくせに、兎希に嫌われてたのに白楼には好かれやがって」

 あー煩い。朝から元気いいな、何か良いことでもあったのかこのくそ兄貴は。俺はまだ寝てるんです、これ以上騒ぐと訴えますぜ。

「くそっ、死ね、お前なんて! ナイトウォーカーに食われ、づげはっ!」

 という訳で暴力に訴えて、煩いアホを蹴飛ばした。アホは壁に激しく衝突して後頭部を打ち付け呻く。朝で腹に何も入れていないのが幸いしたか、流石に吐いてはいない。近い状況にはなっているが。

「忠告はしたし、別に良いよな? おい起きろ、兎希」

「ん、にい、さん?」

 未だに俺のシャツを掴んで離そうとしない兎希の頭を軽く叩いて起こす。くそ眩しいので全開になっているカーテンを閉める。それから漸くちゃんと目を開いて腹を抱えて呻く兄貴を見下ろした。

「が、ぐ、屑野郎がぁっ!」

 なんか復活して勢い良く立ち上がって、つんのめって床に突っ込んだ。今度は顔を押さえて悶絶してる馬鹿兄貴を足蹴に壁にかけた制服を手に取る。手早く着替えて寝惚けてる兎希を部屋に送り返し、兄貴を転がして部屋の外に追い出した。

 時計は七時を刺している。一階では出勤準備に追われる慌ただしい足音が聞こえてた。下に下りていって洗面所で洗顔等々を済ませてカロリーメイト片手に部屋へ戻る。クローゼットに常備しているミネラルウォーターのペットボトルを左手で開けつつPCの電源をいれる。

 メールボックスには安西先生から感謝のメールが入っていた。昨夜の警備員は一命をとりとめたとの事。大したことではないと返信を書きながらカロリーメイトを口に運ぶ。白いブロックを噛み砕いてメール送信。他のメールを確かめる。自衛隊と警察からの告知、他の警備隊や護衛隊のメールマガジン、知り合い達からの生存報告。それらを読み飛ばしてボックスに振り分けていく。

 ふと、差出人不明のメールに目が止まった。このメアドは普段は使っていないからスパムメールは届かない筈。どこでこのアドレスを知ったのだろうか。考えながらメールを開く。一行目、『愛しの黒兎君へ』


『愛しの黒兎君へ。

 やほ、元気してるかい? 聞かなくても分かる事だけど一応聞いておくよ。黒兎君が元気だと僕も嬉しいからね。ちなみにこれも言わなくてもいい事かもしれないけど、僕も元気だよ。ついでにギンも元気だよ。元気過ぎて最近は隠れ家から吠え声が聞こえて近所の人に迷惑かけてる。はっはっは。

 ところで“白犬”の件だけど、僕は一切関係して無いからね。まあ、君が僕を疑うなんてありえない事だけど。飼い慣らされた犬ごときに遅れは取らないでくれたまえ。あんな犬に噛み殺されたりしたら一生恨んじゃうからな。しばらくは外に出てないからいざといった時に助けに行けるか分かんないし。君優しいからね、よく騙されるでしょ。駄目だよリーダーさん、最初に疑うのは身内からってのは鉄則でしょ?

 心配はしてないよ、ただ不安なだけ。君は僕無しでやっていけるのか気にしてるだけ。見てる分には大丈夫そうだけど、まあ見てるだけだから。

 それじゃあ、近い内に会うかもね。怪我しないで。じゃあね、兄さん。

         兎の恋人、銀狼より。』


 これは、何の冗談だ。



意味深回、伏線とか張りたくなっただけなんです。

銀狼くんにもご登場願う日がいつか来るかも分からない。

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