表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/9

My sweet sister

自分の顔とかってあんまり意識しないよな








『OK。それじゃあ、調べておくよ』

「ああ、悪いな」

『良いって。それより新入りの子、ちゃんと来るんだろうね?』

「怖気つかなきゃ来るだろう。自称殺人鬼だぞ?」

本気(マジ)もんだったらどうするのさ。僕ら殺されちゃうんじゃない?』

「それは困る。俺は兎に角、お前らは確実に()られるだろうから」

『酷い、きっと僕だけ殺されて皆は悠々と自衛隊に通報するんだろ』

「有り得る。その時は皆で仇は取ってやるよ」

『そう願うよ』

 それじゃあ、と言い残して携帯を閉じた。通話の相手はSOW内きってのインテリであるキール。少し気になることがあって、それの調査をお願いした所だ。

 キールはとあるIT会社に勤めていて、仕事の隙間を縫って引っ切り無しに来るファンからのメールや“仕事”の依頼メールなどの整理をしてくれている。

 携帯を机の上のスタンドに立て、自分のパソコンを開いた。メールボックスを確認してみると、キールのパソコンから転送されてきた依頼メール、自衛隊や他の警備隊からの告知メールなどが雑多に詰め込んである。

 その中から依頼メールだけが詰め込まれたボックスを開いて確認する。新規受信メールは五つ。一度キールのパソコンが受けたメールを、彼が依頼内容をまとめた上で俺のパソコンに送ってくる。それを必要なメールだけSOWのメンバーの携帯に送る。こうすることで一日一日のやるべき“仕事”が明確になるのだ。

 今日届いたメールは、一つが迷子の捜索。二つが遺体(、、)回収。一つがこの界隈に多数出現している“白犬”の討伐依頼。最期が一ヵ月後に控えた夏祭りの護衛に関しての追加依頼。この五つだ。

 迷子探しが最優先になるだろう。その途中に“白犬”と“遺体回収”を済ませれば良いか。夏祭りに関しては保留、ということで。

 最期以外のメールを各携帯に転送する。間も無く俺の携帯もスタンドに刺さったまま震えた。

「夏祭り、か」

 夏休みが近づいている。俺の通う学校は夏休みに入る前に期末テストがあり、成績が芳しくないのが露呈してしまう時期だ。成績が悪いのは勉強してないからなのだが。

 去年の夏は、俺は一体何をしていただろうか。全く思い出せない、今の高校に入るために一生懸命勉強していた筈なのに。それさえも覚えていない。

 変じゃないか? 一昨年や一昨々年の夏は鮮明に覚えているのに。俺は記憶力は悪くないほうだ。だから勉強もやれば出来る。でも去年のことだけ覚えてない。

 頭痛がしてきた。何か大事なことを俺は忘れている。

「お兄ちゃーん。ご飯だよ!」

「…………今行く」

 階下で妹が呼んでいるので去年の夏について思いを巡らすのは諦めた。腹も空いてる。

 俺の家は二階建てだ。幸運なことに一度もナイトウォーカー共に押し入られたことも無く、家族は全員健在である。パート勤務の母親と掃除機の会社に勤めている父親と一浪して有名国立大学に入ろうと必死の兄貴、中学二年生の妹。残念なことに諍い無く円満な家庭とは到底言えないが。

 リビングに足を踏み入れると熱心に議論していた父親と兄貴が会話を中断して俺を見る。むかつくほど非難がましい目つきで異物(おれ)を見る。

 特に何を言うでもなく席に着いた。直ぐに妹が俺の分の白米をよそって持ってきてくれた。礼を言って受け取る。

「お兄ちゃんの学校でナイトウォーカー(あいつら)が出たって本当? 怪我無い?」

「してない、平気だ」

「そう? 世の中物騒だよね」

 この可愛い妹の名は兎希(とき)と言う。この家庭で完全に邪魔者扱いされている俺を慕い、恋うてくれる唯一の人間だ。大人びて見える外見と、子供らしい可愛い模様のカチューシャが相対的な魅力を引き出していて、茶色の長髪が風になびけばそこだけ春。友人が言うには俺は立派なシスターコンプレックスだそうだ。

 兎希が隣の席に着くのを待ってから、並んで手を合わせる。はい、頂きます。

「今日ね、友達と喋ってたら好きな人の話になって、私“お兄ちゃん”って答えたんだけど、そしたら皆が…………」

「兎希、食事中は喋らない」

「ごめんなさい、お兄ちゃん」

 反抗期真っ盛りな我が妹は父親や兄貴の言うことを聞かなくなっている、のに俺の言うことだけは素直に聞くのだった。お兄ちゃん万歳ってんだ。

 二人で会話も無く静かにご飯を食べる。そんな俺たちを兄貴と父親が害虫でも見るような眼つきで睨んでいた。

 俺はかなりの早食いで、今日も妹より早くに食べ終わった。

「ごちそうさまでした」

 父親とは目も合わせずに席を立つ。食器を片づけてお茶を二人分汲んで持ってくる。猫舌だから、熱々のお茶をかなりの時間をかけて飲み干した。その頃には兎希も食べ終わっていて、ちらちらとこちらを見ながらお茶に口を付けていた。

 リビングを出る。後ろから兄貴の怒声が追いかけてきた。

「なあ、もうそんなこと止めてくれよ! お前は本当はあいつなんかのいも「うるさい、あんた何か知らない! お兄ちゃんはお兄ちゃんでしょ!? じゃあ、良いじゃない!」

 ああ、もう、あいつ等死ねば良いのに。妹を叱るのは構わないが、妹を怒るのは許さないぞ。

 自分の部屋に戻る。時計を見るとまだ五時半だった。

「もう、うるさいよあいつ等。私がどうしようが私の勝手でしょ」

 間を空けずに兎希が俺の部屋に入ってきた。部屋の中ほどまで歩いてくると苛立たしげに部屋の中を歩き回る。

「無茶は駄目だ」

「分かってるよ、お兄ちゃん」

 結局ベッドの上に落ち着いた。それを横目に夜からの“仕事”に備えて準備をする。

 SOWは民間の団体である。それが何を意味するかというと、自衛隊等の国営団体とは違い銃刀法違反が俺たちを縛るということだ。通常ならば。

 ナイトウォーカー共は身体の構造は人間と同じで、その脆さ(、、)も人間と同じだ。つまり、奴らと対等以上に渡り合うには“人殺しに流用出来る武器”が一番良い、ということなのだ。

 しかし、日本(この国)には銃刀法違反という法律があり、民間人がナイフや金属バット片手に往来を自由に歩きまわれるような事は許されない。“武器”は所有しているだけで罪にとわれる。

 だがナイトウォーカーが世界に現れた際国際的に一つの条約が結ばれている。“民間人保護、及び人類存続のための苦肉の策”とまで言われたその条約は、夜、この場合奴らの活動時間つまり日没から日の出迄のこと、の間に限り民間の警備団体に武器の携帯を許可するものだ。“武器”は国に申請したものでなくてはいけなく、またそれで人を殺したら(、、、、、、)罪にとわれる。

 この条約のおかげで俺達は自由に動ける。但し、“SOWのラビ”ではなく“川原瑠兎”ならば警察のお世話になってしまう。面倒だが仕方の無い事だ。

 まず、黒の半袖シャツとポッケが沢山付いている暗緑色のズボンを穿いた。ズボンのポッケの中にはライターや小さなナイフ、その他必要な小物を入れている。それから、とあるいかがわしい店で購入したアーマーベストを着る。アーマーベストには追加で付けたベルトが背中に付いていて細長い物を保持出来る様になっている。

 ドッグタグを首から下げた。消音のバンドが付いていて、ちゃらちゃら音がしないようになっている。二枚組みの両方共に、表には俺の名前、血液型、201-702-165という俺の誕生日のもじりの数列、FIGHT BRAVELYの文字が、裏には“A BLACK RABBIT WITH RED EYES OF SWORD OF WANDERING KNIGHT”と刻印されている。

 携帯スタンドの横に置いてある黒い飛行士用ゴーグルを適当に付けて、鏡の前に立った。母は“身嗜(みだしな)みは、きちんとせよ”と口癖のように言っていた。おかげで鏡を見る癖は付いたが、おかしな所を直す癖は付いていないためいつも友人に注意されてしまう。

「お兄ちゃんゴーグルくらいちゃんと着けようよ。ズボンもベストを巻き込んじゃってるし」

 兎希が直してくれた。持つべきは、兄思いの妹だ。

 さて鏡には、勿論俺が映っているわけだが、どうだろう。こうして見ると異様な格好とも言えるではないか。アーミーベストに顔の半分以上を()おう漆黒のゴーグル、首にはドッグタグを下げていて金属バット片手に夜の街を闊歩するのだ。通報されてもおかしくない。

 口の端を上げて笑ってみた。思ったより自然な笑みだった。

「…………ちょっと早いけど、行くか」

 クローゼットの奥から出したブーツを履き、金属バットを手に窓枠に足をかける。玄関を使わないのは、兄貴達に知られたくないのと跳ぶのが好きだから。

 兎希の方を振り返ると、妹は頬を軽く膨らませ可愛らしくご立腹の様だ。ああ、夏なのに早く出かけるのが気に入らないのか。

「今日は一緒に寝るか?」

「え、良いの!?」

「お前が良ければな」

「全然! 断る訳無いよ! やったぁ!」

 夏の間は夜が短い。俺は夜が、夜の方が好きだから少し残念でもあるが、妹と触れ合う機会が増えるのであれば、俺はそれを歓迎しよう。万々歳だ。

 そっと、兎希の髪に触れる。一つ言っておくが、俺は一般的には背が低い方に分類される。だが、幾ら俺でも妹よりは高い、ぎりぎり。

「Good night rabbit」

「And you」

 さあ、頑張ろう。夜が始まる。短くても永い夜が。

 窓から身を乗り出せば、何処までも落ちて行く(飛んで行ける)ような錯覚に引き摺られ、身体が地面に吸い寄せられる。でもそんなこと気にしてたら月には一生届かないのだ。

 だから、今日はまだ満月じゃないけど、お月様目指して空に跳んだ。





うい、兄貴の名前とか決めてないです

つくづくネーミングセンスが無いなと思った

しかし、兎希は全然いい名前だと思う


この世界では夜で民間業者に加入していれば

ナイトウォーカー共に何してもいい

それってちょっと怖い話だよね

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ