隊員求ム
主人公の名前は川原瑠兎《かわはら りゅうと》といいます
仲良くしてやってください
そいつらは“ナイトウォーカー”と呼ばれている。半年前くらいから出没するようになった異形の生物達だ。
瞳が血のように赤く、血涙を流し、頬は痩せこけ、何処に向かっているのか判らない足取りで夜の街を徘徊する。夜しか出ない。だから“ナイトウォーカー”だ。
さっきまで話していた者が突然目玉をぎょろつかせて襲ってきた、という通報に端を発した騒ぎに、恐らく世界中の誰もが驚愕し、恐怖したことだろう。残念ながら俺はそれを実感出来なかった。
何故なら、俺は騒ぎの中心である街にいたからだ。
騒ぎの中心となったのは日本T県某市、中高生やサラリーマンなどが住む住宅街とそれなりに繁盛している商店街が主なこの街のほぼ中心に俺の家はある。極一般的な中学三年生活をだらだらと過ごし、春が近づいてきたあの凍て付く様な冬夜に暢気に散歩なんざしていたことを俺は後に死ぬほど後悔し、歓喜した事はこの際良い。ただ、俺は騒ぎのかなり早い段階で“異変”に気付きその後の街封鎖に大きな功績を残した。
突然超常的な生物が出てきても、“日常”は無くならなかった。ナイトウォーカーは日に日に数を増やして勢力を増して、騒ぎから半年もしたら日本の約三分の一は呑まれているのに、だ。
一般的な生活をしていれば、無理しなきゃナイトウォーカーに害をなされる事は無い。皆そう考えている。
その考えの半分は正しい。
「まあ、そんなんただの幻想に過ぎねえ、と俺は考える」
「…………何言ってんだお前」
俺は呆れて、俺の窓際の席の前の席に後ろ向きに座る友人の顔を見やった。実に憎たらしい笑顔で俺を見下げる行為は非常に癇に障るが、ここで暴れても仕方が無い。自重だ。
五時限開始間際の教室は独特の緊張感がある。この何かを待っている教室が俺は好きだ。
「いや、瑠兎聞けって。奴らが現れてからこの世界は変わったけど、現在は異常だって。お前もそう思うだろ?」
「お前のうざい喋り方の方が異常だ。…………でも、まあ、一理あるか」
「だろ? だろ?」
友人、達也は身を乗り出して、俺の机に置いてある教科書類を全部押し退けた。何冊か落ちたが達也は気にせず、出来た空間いっぱいに新聞を広げる。
達也は、今朝の朝刊だ、一面記事の端っこの小さな広告を指差して興奮したように叫んだ。
「見ろよ瑠兎。ここ、“SOWの新規加入者募集。限定一人”。下に番号まであるぜ、おい。SOWってSword Of Wandering knights“彷徨う騎士の剣”だよな」
SOWはこの街で活動している民間警備隊。扱っているのは他の部隊が請けない仕事、要するに夜限定何でも屋だ。迷子捜索、物の運搬、遺体回収、夜逃げの手伝い、何でもござれなグループで街では二番目くらいに人気がある。
「なあ、なあ、どうする? SOWに入れるかもだぜ? バイトとしちゃ割が良いって聞いたし、応募しようかな」
「ただのバイト感覚で申し込まないほうが良いぞ、達也。知り合いが国営警備隊にいるが大変そうだ。毎日遅くまで走り回って、あいつらにビクビクして。お前じゃ三日と持たないな」
「やっぱり? 俺じゃあ無理だよなぁ」
達也は納得したのか、興奮しまくってたわりにあっさり引き下がった。落とした教科書を拾って元の場所に置いてくれた。直後に先生が入ってきた。
黙って席に戻った達也を尻目に、俺は片手で携帯を開いた。メール受信件数、38。心底、携帯を二個持ってて良かったと思う。何しろ依頼メールが流れたら困ってしまうから。
そう、俺はSOWの隊員、ラビだ。SOWは基本小数鋭の隊だが、最近依頼が増えてきていて人手が欲しくなったので、このように応募形式にしてみた。
その宛先が俺の携帯であることに異議を唱えたいところでもある。が、SOWの四人の中で最年少なため、無理やりに言うことを聞かされてしまった。不甲斐無い。
携帯を操作してメール文を開く。それぞれ“とてもSOWに入りたい”と自分をアピールしている。どれも今一つだ。
本鈴が鳴った。慌しく生徒たちが席に着き、号令の後授業が始まる。しかし俺は授業を聞かずに、机の下で携帯を弄り続ける。先生の喋る事に興味が無いわけではないが今の自分の“仕事”の方が俺にとっては大事だ。
本当に目ぼしい人がいない。変に偏った自己紹介文や、悪戯メール、入る目的がずれていたり。面倒だ、全員不採用にしてやろうか。
気分転換にと外を見ると体育の授業を行っているクラスでちょっとした騒ぎが起こっていた。体育倉庫にナイトウォーカーが一人紛れ込んでいて、気付かなかった体育教師が襲われた様だ。倉庫の暗がりから大量の血液が溢れ出して、生徒はそれを遠巻きに眺めるだけだ。教師はもう殺されてるな。
校庭の惨状に気付いた生徒が驚いて窓から離れた。それを横目にメールを見続ける。
女子の一人が果敢にもバット片手に倉庫内へ乗り込む。誰も止めようとはしない。女子が暗がりに消えて数秒後、奥から流れ出る血の量が倍になった。遠く様子を見守っていた女子生徒が叫び声を上げさらに離れる。声がしっかり聞こえた。
その声を聞きつけて、教壇でお金の歴史を熱く語っていた先生が漸く窓際に立ち、直ぐに倒れた。情けない。
「血見たくらいで倒れてたら、殺されるな。…………ん?」
女子が出てきた。右手に血で染まったバットを提げている。暫く女子は所在無さげにきょろきょろと辺りを見渡していたが、不意に俺の方を向いた。
いや、俺を見てる。目が合ってる。それから、にっこりと微笑んだ。
心臓が跳ねた。
邪気など無いきれいな笑顔。体操着の白に血の赤が映えてコントラスト。ショートカットの髪すら血で染まっているのに良く笑えるな。
まあ、そういう人を求人中なのだが。
平静を取り戻し、視線を窓からはがして携帯へ注ぐ。と、ある人からのメール文が目を引いた。
『名前、武内志之。
SEX、女。
職業、学生、殺人鬼。
好きな物、ナイフ。好きな者、川原瑠兎君。
好きな喪の、家族。好きな色、黒、赤。
趣味、夜街徘徊。特技、人を殺すこと。自慢、殺すときに躊躇しないこと。
アピールポイント、肉体労働も出来ますが情報にも強いです 』
こいつはふざけてるのか?
校庭を今一度見ると、変わらず女子はこちらを見ていた。また微笑んでくる。
「じゃ、この子採用で」
The、ちまちま更新
志乃ちゃんみたいな事履歴書に書いたら駄目よ
っというか履歴書には好きな物欄とかないか




