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終
「リィール、大丈夫か?」
ふらついたワタシを、隣を歩く体の大きな夫がすかさず腰を抱く。
「ああ、ありがとうバスティ。大丈夫だ」
そう言って離れようとするが、彼の大きな手のひらは腰を抱いたまま離れてくれない。
歩きにくいと文句を言おうと上を向けば、愛しげな手つきで大きく張りだしたワタシの腹を撫でられた。
中からぽこぽこと、その手を蹴るのを感じる。
彼もそれを感じたのか、顔が笑み崩れた。
「元気な子だな」
「誰に似たんだろうな?」
ちょっと意地悪く彼を見上げてそう言えば、軽く唇を啄まれる。
「俺、かな」
素直に認められてつまらない。大人の包容力か。
「ワタシだって、義父に怒られるくらいやんちゃだったんだからな」
彼の手からすり抜けて、頬を膨らませて先を歩く。
初夏の風を受けて、頭の高いところで縛った髪が舞い、給仕長とオーナーから贈られたゆったりとしたスカートのすそがふわりと広がった。