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剣の存在しない魔法世界で、私だけが「斬る」という概念を持っている~刀姫転生、世界法則を一太刀で否定する~  作者: さとう
第一章

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錬金術

 私は警戒しつつも、持って来た果実水の瓶を一つ少年……アレイスターに放る。

 するとオウマが文句を言う。


「おいそれ、俺のだろ」

「別にいでしょ。あなた、飲食する必要ないって言ってたじゃない。そっちの子は私のこと不細工呼ばわりしたからナシで」

「別にいらない」


 少女……ピカトリクスだっけ。

 銀のゴシックドレス、ややウェーブがかったロングヘア、敵意に満ちた青い瞳……外見はとんでもない美少女だけど、気が抜けない。

 オウマと同じ存在。それに、さっきの銀色の蠅……この子の力なのかな。

 すると、瓶の先を軽く弾いて吹き飛ばし、少年は果実水を飲む。


「まあまあ、そう警戒しないでくれ。僕も初めてトリスと同じ神器に、そして異端者に会うことができて興奮している……そんなに警戒されると、自分を抑えるのも難しい」

「そう? 殺し合うなら構わないけど」

「だから、やめてくれ。僕は本来、戦いとは無縁の人間なんだ」


 アレイスターは、飲み干した瓶を銀色の液体で包む。すると、瓶が消え去った。銀色の液体も消えた。

 

「これは『銀血』……僕の研究成果だ」

「ぎん、けつ?」

「ああ。銀色の血、と書いて『銀血』だ。僕はね、『錬金術師』なんだよ」

「…………?」


 れんきんじゅつし。

 れんきん、それが何なのか理解できない。


「あっはっは。まあ、わからないよね。僕からすれば、きみの……その、薄い杖もよくわからない。『ピカトリクス』で受けたけど、破壊されるかもしれない恐怖を感じた」


 薄い杖……ああ、刀のことね。

 私が『斬る』のを得意とするように、この人も何かあるのかな。


「ともかく、僕はきみと敵対する気はないよ。僕は、僕のやりたいことをやるだけ。きみもそうだろう?」

「……さあね」

「お近づきのしるしに、なんでも答えるよ。僕に隠すことはないからね」


 ペラペラと、おしゃべりなヤツ……でも、ちょっと気になった。

 私は果実水を飲み唇を濡らして言う。


「あなたが異端者、ってどういうこと?」

「おや、知らないのかい? ここは神が作った『正史世界』であり、天上人が管理する世界。僕らが存在した世界は、この神の世界を摸倣して天上人が作った『分子世界』……分子世界では、神の権能、天上人の権能が及ばない世界でね、僕らは分子世界で『やりすぎた』人間なんだ。そういう人間は、輪廻転生に組み込むと世界がリセットされても不具合を起こす。だから、魂をこの正史世界に持ち込み、天上人が直接管理し、構成させる」

「…………」

「きみ、自分の神器から聞いてないのかい? ああ……詳しく知らないのか」

「うっせえな」


 オウマが不機嫌そうに言う……知らなかったのね。


「で、きみ……自分の世界で何をしたんだい? 僕も人のこと言えないけど、輪廻転生に組み込んでも、分子世界に影響を与えかねない魂なんて、神が世界を作り出してからでも二十例あるかないかだよ?」

「……ただ。殺しただけ」


 何万、何十万と殺した。

 刀を得て、いくつもの流派を見て覚え、自分の流派を作り出した。

 そして、戦場で斬った。ただ、それだけ。

 八十年近い人生で、斬らなかった日はない。

 たった一人で、一国の兵団と斬り合ったこともあった。数万はいたが、楽しかった思い出しかない。

 技が磨かれ、練られ、研ぎ澄まされていく感覚が、あまりにも気持ちよかった。

 善悪もない。ただ斬る。それだけだった。


「いい顔してるね。殺人鬼のような」

「……間違っていないわ。私は、数えきれないほど人を斬り殺した。異端者……そう、この世界は檻なのね」

「ははははは!! 檻、いいね。いい表現だ。でも……自由な檻だ。好き勝手できる。でも、悪いことをすれば粛清される。もちろん……異端審問官を返り討ちにするのも自由」

「…………」

「僕は、好きにやらせてもらってるよ。なにせ、ここは神が直接創造した世界。面白そうなことしかない!! 魔獣とは何だ? 僕の知らない魔法形態、薬学、知識……楽しいことしなかない!!」


 アレイスターは、嬉しそうに笑っていた。

 なんだか、少しだけ……羨ましかった。


「あなた、自分の世界で何をしたの?」

「ただの実験さ」


 恐らく……聞いたら、後悔するのだろう。

 でも、私は興味があった。


「ね、教えて」

「いいよ」


 アレイスターは、別に隠すことでもないしと言わんばかりに、軽く頷いた。


 ◇◇◇◇◇◇


 ◇◇◇◇◇◇


 アレイスターは、『錬金術師』の両親の間に生まれた子供だった。

 錬金術。それは、物質を変化させ、金や不老不死の薬を作り出すことを目指した研究者や実践者である。

 アレイスターが知る限り、『黄金』や『賢者の石』を生み出した錬金術師はまだ存在しない。

 だが……アレイスターには、何が難しいのか理解できなかった。


 なぜなら、アレイスターは……錬金術師として認められた十三歳の誕生日に、錬金術で『黄金』を作り出してしまったのだ。


 簡単なことだった。

 口にするのも面倒だった。

 その成果を、誰もが賞賛したが……アレイスターには理解できなかった。


 だが、新しい興味ができた。

 黄金はいくらでも作れるが……黄金を錬成した結果できあがった『賢者の石』と、賢者の石から新たに生み出した『銀晶聖』という金属が、未知の可能性を秘めていた。


 面白いことに……この『銀晶聖』は、人体と融合することで、人類を『進化』させる可能性を秘めていた。

 アレイスターは興奮した。

 そして、狂気の実験が始まった。

 この時、アレイスターはニ十歳。若く美しい錬金術として、周囲から期待されていた。


 アレイスターは、人を攫い、人体実験を繰り返した。

 膨大なデータが必要だった。

 最初は、両親を使って実験をした。親だからという感情はすでになかった。

 実家を改装し、錬金術の工房として作り直した時、出会いがあった。


「初めまして、ご主人様。私は『ピカトリクス』と申します」


 聖典『ピカトリクス』

 神が作りし七つの神器、その一つが、実家にあった。


 ピカトリクスは、まっしろなページだった。

 そこに『力の法則』を記すことで、自在に扱うことができた。

 アレイスターは歓喜した。ピカトリクスに自身が思いつくも実戦不可能な『錬金術』をひたすら書いた。そして、その力を使い『変身』もできた。

 白いコート、ガイコツの仮面、帽子……特に重要ではなかったが、『戦う力』を手に入れた。


 白濁のスカルフェイス。

 いつしか、アレイスターはそう呼ばれるようになった。もちろん、正体がアレイスターとはバレていない。

 スカルフェイスが現れると、人が消える。

 初めは小さな村だった。次は大きな町。そして小国。

 最終的には、大国の人間が全て消えた。

 アレイスター七十八歳。彼は、『完成』していた。


 そして、彼の前に現れたのは……背に翼をもつ天上人だった。

 

 あなたは、やりすぎた。

 天上人はそう言い、アレイスターを閃光で貫いた。

 これから、あなたの魂は輪廻転生を外れ、神の世界で管理されると言った。


「素晴らしい!! アレルヤ!!」


 死の間際、アレイスターは歓喜した。

 まだまだ、世界には知らないことがある。

 次の舞台は神の世界……そこで、新しい実験を始めようと、胸に『ピカトリクス』を抱いて絶命した。


 ◇◇◇◇◇◇


 ◇◇◇◇◇◇


「おしまい」


 アレイスターは語り終え、パンパンと手を叩いた。

 オウマは欠伸をして言う。


「オマエもイチゴと変わんねー虐殺者か」

「虐殺者はひどいなあ。僕は糧となった命は無駄にしていないよ? あれだけの犠牲の上で得たデータをもとに、体内に『銀血』を精製する器官を新しく作って移植したんだ。おかげで、万能な銀血を大量に精製できる。この臓器の素晴らしいところは、エネルギーを排泄物、老廃物から精製できるということなんだ。トイレに行く必要のない身体というのは便利だねぇ」

「もういいわ」


 気持ち悪い話になったので遮る。

 

「で、あなたの目的は?」

「まずは、この世界の観察だ。くくく、この世界は素晴らしいよ。誰も疑問に思っていないが、僕の存在した世界の数十倍の規模があり、様々な種族が生活している。文化、文明、生息生物、法則……調べ出したらきりがない。まずは数年世界を巡り、世界を観察するつもりだ。何度も言うけど、きみに出会ったのは偶然、まさか神器の所有者がいるなんて思わなかったしね」

「……世界を、巡る」

「おお? いい顔してるねぇ。興味があるなら来るかい?」


 ドクンと、胸が高鳴った。

 アレイスターはニヤリと笑い、顔を近付ける。


「ふふ、面白いことをさらに教えよう。この世界は異端審問官……天上人が管理しているが、それでも全てを管理することはできないのか、争いが絶えなかったり、数多くの問題がある。そういうのを含めて、僕は観察するつもりだ」

「…………」

「おおおお? いいねいいね、いい顔になっている。さて、この小さい国で、異端審問官に監視されながら生きるか、それとも外の世界に飛び出すか……すべてはキミ次第。同行したいなら構わないよ」

「…………」


 揺れた。

 学園生活、貴族令嬢として、異端審問官に監視されて、残りの人生を終えるか。

 それとも……外の世界に飛び出すか。

 私はオウマを見る。


「好きにしな。俺はオマエの刀だ。全ての意思は、オマエにある」


 私はその言葉を聞き……嬉しかった。

 アレイスターは立ち上がる。


「二週間、この国に滞在するよ。二週間後……決意ができたのなら、王都の正門前に。では行こうかトリス」

「はい、ご主人様。ああ……別に来なくてもいいから」


 ピカトリクスは舌を見せ、オウマに向かって中指を立てた。

 オウマが青筋を浮かべ、親指で首を搔っ切るポーズで返す。

 私はそれを見ず、考え込んでいた。

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