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剣の存在しない魔法世界で、私だけが「斬る」という概念を持っている~刀姫転生、世界法則を一太刀で否定する~  作者: さとう
第一章

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冒険者として

 帰り道。私はウキウキ気分で歩いていた。


「はぁ~、やっぱり剣はいいね。斬るってすごく楽しい」

『わかるわかる。でもよ、オマエ絶対に異端審問官に目ぇ付けられたぜ。すぐにどーこーなるわけじゃねぇけど、たぶんなんかあるぜ』

「気にしないわ。それより……もっと身体を鍛えないとね。今の私が若いころの私と同じなら、筋肉が付きにくいタイプだから……ん?」


 ふと、帰り道の途中で見つけたのは、大きな建物。

 その看板には『冒険者ギルド』と書かれている。


「冒険者……確か、迷宮調査をしたり、魔獣狩りをする人たちだっけ」

『なんでも屋っつーか、個人傭兵みたいなモンかもな』

「……冒険者」


 魔獣狩り。

 私のいる国……『マルセリア王国』の外には、魔獣が存在する。

 知識では知っていたが、冒険者や王国騎士団による討伐、さらに数多くある迷宮調査など、冒険者の仕事は事欠かない。

 現に今も、数多くの冒険者たちが出入りしている。


「……ねえオウマ。冒険者って私でもなれる?」


 さすがに、制服のまま冒険者ギルドに入るわけにはいかない。

 オウマに聞くと、適当な返事が返って来た。


『知らね。キョーミあんなら……』


 すると、六天魔王がモヤとなり路地裏へ消え、そこから人間体のオウマが現れた。


「調べといてやるよ。ククッ、あとで部屋に行くぜ」

「うん、お願いね」


 オウマ、こういう時に情報収集させるの役立つかも。

 人間体のオウマ……定期的にこき使うのありかもね。


「おい、こき使うとか考えてねぇだろうな」

「……さあね」


 私は、誤魔化すように家に帰るのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 夜、部屋に戻ったオウマは、人の姿のまま話し始めた。


「名前さえあれば登録はできる。まあ、最下級からのスタートだがな」

「最下級?」

「冒険者には等級があんだよ。三級スタート、二級、一級、特級の四段階。冒険者ギルドにいたのは二級が少し、三級がほとんど、一級は数人、特級はいなかった。特級ってのは、冒険者でも最高レベルの強さを持つ連中で、国とかの依頼を受けて戦ったり、迷宮調査してるらしいぜ」


 オウマは、私が用意していた果実水の瓶をゴクゴク飲む……飲食、できるんだ。


「でもまあ、オマエ……貴族令嬢だしなあ」

「簡単よ。変装すればいい。どうせソロで行動するんだし、学園が休みの日しか冒険者はやれないけどね……うーん、学園を辞めて家を出るって方法もあるけど、どうしようかな」

「まあ、まずはお試しでやったらどうだ? それに……変装するなら俺に任せな」

「……何する気?」

「決まってんだろ。変身だよ、変身」


 次の瞬間、オウマは寝間着姿の私に、モヤの状態で纏わりつく。

 そして、モヤが形となり、衣服となる。


 見た目はシンプルに黒一色なんだけど、その分、形と線がすごく研ぎ澄まされてる。

 上は体にぴったりフィットするノースリーブのトップス。

 前に一直線のジッパーが入ってて、着ると自然と背筋が伸びるような気がした。


 肩は少しだけ露出してるけど、軽さ重視だから。動くたびに邪魔にならない。

 腰から下がスカートみたいに見えるけど、何層にも分かれた布が重なってて、歩くと静かに揺れる。

 全部が左右対称じゃないから、影の形まで計算されてる感じがする……なに、このデザイン。


 太ももの横にはベルトとバックル。武器を固定するための場所。ここに六天魔王を差すみたい。

 手元は指先が自由になるグローブ。握った瞬間、刃と私の感覚がちゃんと繋がるように、薄くて、でも守るところはちゃんと守ってくれてる。


 衣服だけじゃない。顔の四分の三を、漆黒の仮面が覆っていた。右目部分だけ肌が露出しており、まるで欠けた兜をかぶっているようだ。

 それだけじゃない。


「な……髪の色、白くなってる!?」


 髪が真っ白になっていた。

 

『黒と白、オマエにピッタリだぜ。ちなみに服は俺のデザイン……昔のお前が着ていた戦闘服をイメージした。髪色を変えたのは、白髪だとオマエってバレないと思ったからだ。いい感じだろ?』

「……もう、驚かせないでよ」


 この黒髪、実はかなり気に入ってるのだ……ずっと真っ白だったらどうしようかと思った。

 

『名前も決めてあるぜ。明日はこの姿で、冒険者登録しに行こうぜ』

「そうね……ん、名前は?」

『決まってんだろ……』


 オウマは、自信満々にその名を告げた。


 ◇◇◇◇◇◇


 ◇◇◇◇◇◇


 その日、早朝を少し過ぎた朝……依頼の取り合いが終わり、ギルド内が静かになった頃。

 一人の冒険者志望が、ギルドの中に入って来た。


「…………」


 一言で表現するなら、『奇妙』だった。

 漆黒の欠けた仮面、ノースリーブのジッパー付き黒衣、腰のベルトには魔法の杖が二本収まっている。

 欠けた仮面から、片目だけ露出している。その目が受付にいた一人の女性……冒険者ギルド受付のミユを射止めた。


「ひっ」


 ミユは新人受付嬢。仮面を被った妙な白髪の少女の視線を受け止めるには、経験不足のようだ。

 奇妙な仮面の少女は受付に近づき、言う。


「冒険者登録したいのだけれど」

「あ、は、はい」


 ミユは、無理やり笑顔を作り、震える声で用紙を取り出した。

 少女は容姿に名前を書き、ミユに渡す。

 ミユは書類を確認し、引きつった笑顔で確認する。


「えと、オニヒメさんですね。では、登録完了しました。本日より、三級冒険者として頑張ってくださいね」

「……ええ」


 オニヒメ……こと、イチゴは頷く。

 冒険者についての説明を受け、証である冒険者カードを受け取る。

 それをポケットに入れ、依頼掲示板の元へ。


「……怪しまれてたわ」

『ま、こんな怪しげな仮面の女、怪しまれて当然だろ』

「うるさいわね……とにかく、依頼を受けて外に行くわよ」


 ちなみにイチゴ、今日は『セイン様のお茶会に行く』と言って家を出た。

 イチゴは、薬草採取の依頼書を手に取り、ミユの元へ。


「薬草採取ですね。あの……外では魔獣も出ますし、気をつけてくださいね」

「……ありがとう」


 お礼を言い、イチゴはギルドを出るのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 ◇◇◇◇◇◇


 私は初めて、王都の外に出た。

 外は危険だからと、生まれて一度も王都を出たことがない。そういう人たちはけっこう多いけど……冒険者ライセンスを見せるだけで、こんなにもあっさり出れるとは思わなかった。

 学園の課外授業で、魔獣討伐とかもあるけど……一人で外に出るのは初めてだった。


『おいおい、俺のこと忘れんなよ』

「あなたは私の刀でしょ」

『へいへい。さて、もう外だ。ここからは魔獣の危険もあるぜぇ?』

「その魔獣って……見たことないのよ。私のいた世界でも、そんなのいなかったでしょ? 獣人、亜人みたいなもの?」


 街道を歩き、周囲を見渡す。

 平原、雑木林、森、岩場、川も流れている。

 昔は野外を見ても何も思わなかったけど……今は新鮮な気持ち。


『おいイチゴ、あっちにデカい森あるぞ。魔獣いるんじゃねぇか?』

「魔獣もいいけど、薬草もね」


 とりあえず、オウマの見つけた森に向かってみた。

 じめじめした、陰気な森だった。

 光が差さないのか、薄気味悪い暗さ。

 だが、私は喜んだ。


「オウマ、薬草採取。あなたも手伝いなさいよ」

『えぇ~?』

「オウマ」

『……へいへい』


 変身が解ける。

 髪色が元に戻り、仮面も消え、服装も普段着に戻る。

 私は、足元に生えていた薬草を抜き、オウマに見せた。


「これ、薬草ね。十本で一束、二十束作るわよ」

「これ、貴族令嬢がやることじゃねぇだろ……」

「家を出た時、お金を稼ぐ必要があるわ。その時のために必要なことよ」

「へいへい……」


 さっそく、薬草採取を始めた。

 薬草は、暗くジメジメしたところにけっこう生える。ここは当たりみたいね。

 あっという間に二十束が完成。紐で縛り、まとめて袋に入れる。


「依頼完了。さて、次は……魔獣狩りね」

「そっちが本命だろ。へへ……来るぜ」


 森の奥から、何かが来た。

 オウマがモヤとなり、私の身体を包み込む……黒衣と仮面、腰には二本の刀。

 白髪を揺らし、私は一歩前へ。

 

『ガオルルルルルル……』

「いい獲物」


 現れたのは、一つ目の巨人……名前、なんだろう?

 身長は三メートルくらい、青白い肌、手にはへし折った丸太を持っている。


「……素敵」


 ゾクゾクした。

 魔獣。こんな、人でも獣人でも亜人でもないバケモノが、この世界にはいるのだ。

 斬り応えがある。私の剣技を試すチャンスがある。ワクワクする。


「ふふ、オウマ……やるわよ」

『……』

「オウマ?」

『……気ぃ付けろ!! 来る……!!』


 オウマが叫んだ瞬間、上空から何かが飛んで来た。

 銀に輝く『礫』のように見えた。それが上空から降り注ぎ、一つ目の巨人を穴だらけにしたのだ。

 

「……礫、じゃない」


 最大級の警戒をする。

 銀のつぶては、つぶてじゃない……『蠅』だt。

 銀色の蠅が大量に飛んでいた。そして、一つ目の巨人を包み込むと、そのまま倒れ……蠅が散ると、そこに残っていたのはただの骨だった。

 肉が、全て食われていた。


「おやおや、おやおやおやおや……フフフ」


 銀色の足場に乗った何かが、ゆっくり降りてきた。

 

「これはこれは、フフフ……ようやく会えた。フフ、フフフ」


 男の声だった。

 銀のロングコート、鍔付きの帽子、銀のグローブ……何より、男の顔は髑髏だった。

 髑髏の仮面で顔を覆い、眼窩から青い瞳が見えた。


「初めましてかな、僕と同じ『異端者』に会うのは。フフ……興味深いねぇ」


 敵……そうとしか思えない。

 私は腰を落とし、二刀の柄に触れ、目の前の『銀のガイコツ』を殺すべく駆ける。

 抜刀し、刃を交差させて同時に切裂いた。


「『青鷺火(あおさぎのひ)』!!」

「おおっと!?」


 斬った。

 確実に手ごたえがあった……が、私の刃は止まっていた。


「なっ!?」

「くっ……やるね」


 銀のガイコツは、『一冊の本』を手にし、私の刀を受け止めていた。

 ショックだった。

 私の刀が、刃が、こんな本に止められた。


『イチゴ、下がれ!! こいつは……』

『下がりなさい、下郎』


 バチン!! と、反発しあうように刀と本が爆ぜた。

 距離を取り刀を構えると、銀のガイコツは本を見せるように突きつける。


「待ってくれ。やりあうつもりはないよ。言っただろう? 僕はキミと同じ『異端者』だ」

「…………」


 すると、銀のモヤに包まれ、ガイコツの男の変身が解けた。

 銀髪青眼の少年だった。学生服を着て、片手に本を持っている。

 すると……本が銀のモヤに包まれ、人の姿になった。

 銀髪の、ゴシックドレスを着た少女だった。十六歳くらいだろうか……とんでもない美少女だ。

 少女は敵意丸出しで言う。


「不細工女。それ以上、ご主人様に刃を向けるなら……後悔させるぞ」

「ぶ、不細工女? 私のこと?」


 すると、私の変身も溶ける。

 人型のオウマが、銀の少女に向かって言う。


「おいテメエ……俺の愛しいご主人様に不細工だと? 眼ぇ腐ってんのか? ブチ殺すぞ」

「醜男がご主人様の前で喋るな」

「あぁ? どう考えても、俺のが男前だろうが」

「あ?」

「あぁ?」


 険悪になるオウマと少女……っていうか。

 私は言う。


「あなた、誰?」


 オウマと少女のやり取りを見て笑っている少年に言う。

 少女が私を睨んだが、少年は少女を制して言った。


「初めまして。僕はアレイスター……キミと同じ異端者さ。そしてこの子は神器の一つ、聖典『ピカトリクス』……キミの刀と同じ存在だ」

「ご主人様。あんな醜男と一緒にしないでください」

「同感だ。オマエみたいなクソ不細工と一緒なんてたまんねーな」

「あっはっは。仲良くなれるといいねぇ」

「……で、何か用?」


 私はまだ警戒している。

 いきなり現れた理由。それを知らないと信用できない。

 少年……アレイスターは、楽しそうに言った。


「ああ、この子が『私と同じ気配がする』っていうから来ただけさ。キミの人生の邪魔をする気はないよ。でもまあ……興味はある。キミの話を聞きたいね。もちろん、僕の話もしよう」

「敵になるかどうかは、話次第ね。いいわ……お茶にしましょうか」


 こうして、私は出会った。

 今後、幾度となく関わり合いになる少年……アレイスターと。

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