表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣の存在しない魔法世界で、私だけが「斬る」という概念を持っている~刀姫転生、世界法則を一太刀で否定する~  作者: さとう
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/33

キレる

 不思議だった。


「…………オウマ」

『ああ、キレてるな』


 異端審問官が、私の足元に何人も転がっていた。

 全員、四肢を切断され首を両断した。

 不思議と、負ける気が……というか、勝ち負けじゃない。

 

「な、なんだ、こいつ」

「神器……神がヒトに与えし奇跡。なんて力……」


 異端審問官……何級だろう?

 少なくとも、三級以上。でも……この人たちは、私を殺せない。

 不思議だった。本当に……理解できない。


「ねえ、あなたたち……もっと強いヒト、いないの?」

「なに?」

「弱いわ。もっと、もっと……私が斬れないくらい強いヒト、いないの?」

『イチゴ』

「わかってる。別に殺人衝動が起きたわけじゃない。事実を確認しているだけ……」


 欠けた仮面、素肌の見えている右目で異端審問官たちを見る。

 全員、怯えが見えた。

 双刀を手に、だらりと力を抜いているだけなのに……それだけなのに、誰も襲ってこない。

 異端審問官……数は二十以上、いやもっといる。でも、でも……弱い。


「来て、私と……斬り合いましょう?」


 そう言うと、異端審問官たちの後ろから一人の大男が現れた。


「下がれ。こいつは、お前たちでは対処できん」

「ウリエル様……」

 

 ウリエルと言われた男が前に出て、頭のリングを輝かせ、八枚の翼を広げた。

 手には黄金に輝く槌。大人十人くらいでも持てるかわからない大きさで、それを片手で持ち、私に向かって突きつける。


「貴様……『八極星(ベツレヘム)』の一人、『木星』のユピテル様を殺害した異端者だな?」

「ええ、そうよ」


 周囲が凍り付いたような気がした。異端審問官たちが愕然としている。

 

「う、ウリエル様……それは、どういう」

「後に、天上界でも発表があるだろう。原初の天上人である『八極星(ベツレヘム)』の一人が、殺された……そこの異端者に」

「う、嘘ですよね……不滅の、『八極星(ベツレヘム)』が……」

「し、死んだ、なんて」

「事実だ。受け入れよ」


 私を無視して、異端審問官たちがどよめく。

 膝をつく者もいれば、涙を流す者もいる……私としては、不老不死とか不滅とかなんてあり得ないと思ってるし、むしろ私が殺したから何とも思わない。

 ウリエルは言う。


「貴様の目的は何だ。『火星(マーズ)』アイレース様の殺害か?」

「それは、私の役目じゃない。そうね……復讐に付き合ってるだけなんだけど、私の世界を勝手に滅ぼした天上人や、勝手にこの世界に連れて来て『管理する』とか抜かす天上人は、殺そうと思ってる。大元が『八極星(ベツレヘム)』なら……全員斬るのもいいかもね」


 ウリエルに刀を突きつけると、歯を食いしばって叫んだ。


「ほざけ人間風情が!! 貴様は……ここで殺す!!」

「フン。天上人風情が……誰が、誰を殺すですって?」


 ウリエルが大槌を振り回して向かって来た。

 私はウリエルを斬るべく、刀に力を込めるのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 ◇◇◇◇◇◇


 ハイドは、右拳を『エレクトロンアーム』へと変形させ、左手を『レールガン』に変形させる。

 両足の噴射港から火を噴いて跳躍し、レールガンを連射する。


「『月護(げつご)』」


 アルシエノが杖を振るうと、薄紫色の光が球体となって包み、弾丸を防御する。

 ハイドは舌打ちし着地、直接殴るべく右腕を帯電させて接近。

 拳を振るうが、杖で受け止められた。

 全力で放電もしたが、ダメ-ジがない。

 さらによく見ると……アルシエノの武器は杖でも錫杖でもない、『鍵』だった。


「ねえハイド。なんでわたしがあなたの両親を、故郷を滅ぼしたと思う?」

「……あ?」

「理由は簡単。わたしね……ハイドの世界が、大嫌いだったから」


 嬉しそうに、両手を広げてアルシエノは言った。

 仮面からでもわかる。アルシエノは喜んでいる。


「月のない世界なんて、地獄だった……あの世界での私は力がなかったから、普通の人間として、あそこで生きるしかなかった」

「……」

「でもね、ある日……アイレース様が来てくれたの。わたしにこの子、ムーンライトを与えてくれて、わたしの世界にあった『月』を、あの世界に持ってきてくれた。わたしは……やっと、生きることができた」

「ふっざけんな……お前は、普通の女の子だったじゃねぇか。オレと一緒に遊んで、マキナのことも妹みたいって言って、オヤジや母さんにだって好かれていたじゃねぇか……!!」


 ハイドが胸を抑えて言う……アルシエノと違い、苦しんでいた。

 だが、アルシエノは「あはは」と微笑む。


「ぜんぶ嘘に決まってるじゃん。わたし、絶望していたんだよ? わたしは、わたしの世界で『月の巫女』だったのに……信者を大勢『生贄』したことで、異端者とされた。しかも、この世界じゃなくて、分子世界の一つに送られた……それが、あなたの世界」

「……」

「ハイド、わたしね。いい子なんかじゃないの。月のために大勢を生贄にした悪い子なの。そして……それが、今でも間違ってないって思ってる」

「生贄……」


 ハイドは、ブルリと震えた。

 アルシエノは頷く。


「わたしの世界ではね、月は神聖な世界。そこには神様が住んでいるって。年に三回、神が舞い降りる日があって、その日に月の神はヒトを喰らうの」

「……は?」

「『月神』……わたしは、選ばれた巫女。月神のために祈り、生贄を捧げ、舞を奉納し、また祈る。わたしの人生は月神と共にあるの。だから……この世界にある新たな月にも、生贄を捧げないといけないの」

「……おまえ、まさか」

「うん。アイレース様はね、『好きにしていいよ』って。ふふ、この『火星』の大地のヒトたちを、わたしの信者にして……その魂を月に送る。ねえハイド……わたしさ、ハイドがいてくれたら、すごく嬉しい」

「……何を」


 ハイドは拳を構えるが、アルシエノは変身を解いた。

 手には鍵があり、それを弄び……ハイドに突きつける。


「ねえ、ハイド。わたしのために、わたしの幼馴染として……力、貸して」


 アルシエノが近づいて来る。

 ハイドは動けなかった。そして、変身が解け……ほんの二メートル先にいるアルシエノが、ハイドの胸に鍵を近付けようとしていた。

 このままでは、まずい。だが……ハイドの身体が動かない。

 そんな時だった。


「『双睛断(そうせいだん)』!!」


 二人の間に割り込んだイチゴが、アルシエノの『鍵』を叩き斬った。

 だが、鍵には傷一つ付かず、地面に転がる。

 鍵は紫色の煙となり、アルシエノの傍でヒトの姿になった。


「……いたい」

「ムーンライト、大丈夫?」

「うん。あいつ、きらい」


 ムーンライトと呼ばれた少女は、イチゴを指差す。

 そして、アルシエノもまた……ハイドに向けたのとは種類の違う殺意を向けた。


「邪魔ねぇ……死にたいのかな?」

「……それ、こっちのセリフなんだけど」


 イチゴもまた、強烈な殺意をアルシエノに向ける。

 そして、ハイドに言う。


「ハイド。結果的には、あなたがこいつを殺せればいいのよね」

「……イチゴ、お前、何を」

「だったら、私がこいつを半殺しにするわ。手足を落とせば、大人しくなるでしょ」


 刀を向ける。

 アルシエノは面白そうに微笑み、鍵をイチゴに向けた。


「あなた、ウリエルは?」

「あの大きなヒトなら、バラバラにして殺したわ」

「ふ~ん……まあいいわ。じゃあ、今日はここまでね」


 紫色の煙が、周囲を包み込む。

 そして、アルシエノが言った。


「バイバイ、ハイド。また会おうね」

「アルシエノ──……」


 一瞬で煙が消え……そこにはもう、誰もいなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ