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剣の存在しない魔法世界で、私だけが「斬る」という概念を持っている~刀姫転生、世界法則を一太刀で否定する~  作者: さとう
第三章

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得体の知れない何か

 ハイドは、テントの設置を終えた後、いい香りのする方を見た。

 銀色のテーブルには様々な料理が並んでおり、その豪華さに顔をほころばせる。


「おお、美味そうだな」

「トリスの料理は絶品さ。道中、食事に関しての心配はないよ」

「……お前じゃなくてトリスに感謝だな。っと……イチゴのヤツ、まだ水浴びか?」

「そうじゃない? 彼女、髪の毛長いし、洗うのも大変だねぇ」


 アレイスターは適当に言い、手から銀血を分泌……全員分の椅子を作り出した。

 ハイドとしては、アレイスターの分泌液で作られた椅子を気持ち悪いと思っていたが、マキナが何も言わずに座ったこと、旅の荷物を少なくするために椅子など用意していないことを考え、大人しく座る。

 ハイドは話題を変えて言う。


「ところで、ここはどの辺だろうな。地図……」

「ここは、アルティニアのすぐ近く。あと半日も歩けば、『火星(マーズ)』アイレースの管理する領地だね」

「……地図、頭に入ってんのか?」

「当然。歩いた距離や地形から、僕たちがどの位置にいるかも把握しているよ」

「さすがご主人様。素晴らしいですわ」


 トリスがうっとりして笑顔を浮かべる。

 マキナは食事をジーッと見て微動だにしない。

 そして、アレイスターが空を見上げ……硬直した。


「…………わお」

「あ? なんだ、どうした」

「ご主人様?」

「?」


 ハイドが顔をしかめ、トリスが首を傾げ、マキナはヨダレを拭いてハイドを見た。

 アレイスターは口元を歪めて笑みを浮かべ、帽子を取る。


「やはり……この世界は、面白いねえ」


 そして、イチゴが戻って来た。

 オウマも一緒であり、長い髪はまだ濡れている。着替えも半端なのか、シャツ一枚にハーフパンツだけのスタイルだが、本人は気にしていない。

 イチゴは、空を指差した。


「ねえ、あんなのあった?」

「「「?」」」


 ハイド、トリス、マキナが空を見上げ……その動きを止めた。

 

「まあ、あれは……なんですの?」

「僕にも理解できないね。うーん、不思議だ」

「私も知らないわ。というか……大丈夫なの?」

「……俺も知らねぇ」


 トリス、アレイスター、イチゴ、オウマは『それ』が何か理解できなかった。

 だが……ハイド、マキナは違った。


「……クッソが、あれは……アルシエノの力だ」

「……ハイド」


 マキナが、ハイドの袖を掴む。

 そして、上空に浮かぶ巨大な『丸い石』を見て言った。


「あれは『月』……夜に輝く、巨大な星だ」

「つき? 何それ……」

「……なるほどねえ。つまり、あれは……キミの幼馴染、異端者の神器だね?」

「ああ。正確には、あの『月』はアルシエノの世界にあった物だ。アイレースがこの世界に持って来たのか……アルシエノの神器は、あの『月』の力を利用できる」


 ハイドは、憎々し気に空を見上げ、拳を強く握りしめた。


 ◇◇◇◇◇◇


 ◇◇◇◇◇◇


 私は、空を見上げる。


「……つき」


 月。聞いたことがない。

 夜空に輝く『星』はわかる。だが……あんな巨大な『星』……じゃなくて『月』は初めて見た。

 ハイドの幼馴染、アルシエノの神器は、あの『月』の力を操れるらしい。


「というか、これまで何度も夜を経験したけど……あんなの見たことないわ」

「そりゃそうさ。この先は『火星(マーズ)』アイレースの管理する領地。知らないから説明するけど、『八極星(ベツレヘム)』の管理する領内は、環境が激変する。あの月も、アルティニアだけの物だろうねぇ」

「そうなのね……」


 みんなの視線は月へ向く。


「というか、あれから力を? どうやって?」

「知るかボケ」


 トリスの問いを適当に返すオウマ。

 互いににらみ合ってるが私は無視。我慢できなくなったのか、マキナはご飯を食べ始める。

 私もお腹空いた……椅子に座り、串焼きを手に取り食べる。


「とりあえず……今は食事ね。お腹空いたわ」

「もぐもぐ、おいしい」

「だな。とりあえず、あれは浮いてるだけで害はねぇ。問題は……ああ今はいい」

「では、食事にしよう。トリス」

「はい、ご主人様」

「メシだメシ。ん? おいアレイスター、酒あるなら飲ませろ!!」


 アレイスター、どこから出したのかワインを飲んでいる。

 オウマが欲しがり、トリスが「誰があなたなんかに」とボトルを死守。ハイドとマキナは無視して食事を楽しみ、私も串焼きを食べる。


「今度の敵は、月……ふふ、退屈しないわね」


 ◇◇◇◇◇◇


 翌日、私たちは森を出て、アルティニアに向かって歩き出した。

 私が先頭、意外なことに隣にはマキナ。


「…………」

「……なに?」

「ううん、髪の毛、綺麗だなって」

「そ、そう? ありがとう……」


 神器の一つとはいえ、見た目は十歳くらいの子供……前の世界でも、常に戦いに明け暮れていたし、子供なんて怯えて近づいてこなかった。

 マキナは、私をジロジロ見る。


「イチゴ、って呼んでいい?」

「いいけど……私とおしゃべりしても、面白くないわよ。あっちのお姉さんの方が、優しいし楽しいわよ」

「うん。でも、イチゴとおしゃべり、全然してないし……だめ?」

「い、いいけど」


 どうしよう。

 ハイドを見ると、意外なことにオウマとおしゃべりしていた。


「オマエ、どこまで硬い金属作れる?」

「……オレは普段、オレの世界にあった『アルティナイト』って鉱石をイメージしてる。オレの世界では最も硬い材質で、うちの金槌がそれで作られてた。身近にあったからイメージしやすくてな。でも……まさか、イチゴに傷付けられるとは思わなかったぜ」

「オマエ、やるな。不完全とはいえ、俺の刃を受けても傷だけで済むなんて」

「そうか? 硬度に自信はあったが、お前の一撃、見事だった」


 話、弾んでるわね……アレイスターは。


「ふふん」

 

 こっち見てニヤニヤしてる。トリスに手助けさせないためか、本の状態にして手に持ってるし。


「イチゴ、お話しよ」

「……そうね。じゃあマキナ、あなたの力について」

「チカラ? わたし、ハイドのイメージをカタチにしてるだけ」

「えっと……」


 キカイ、だったかしら……そのことを聞きたかったんだけど。

 神器といっても、オウマやトリスと全然違うのね。


「じゃあ……あなたたち以外の神器のこと、知ってる?」


 確か、神の作った神器は七つ。

 六天魔王、聖典ピカトリクス、機神デウスエクスマキナ、そしてアルシエノの神器……あと三つ。

 

「わかんない。神器、作られたころ、意識なかったから」

「そうなの?」

「うん。でも、みんなこの世界にいるよ」

「……え?」

「わたし、わかるの。神器、この世界にある。みんな所有者といる」

「…………」


 この世界に、残り三人の神器所有者……か。


「……ねえ」

「ん、なんだ」

「なにかな?」


 私は、アレイスターとハイドを呼び止める。

 この二人……ハイドはともかく、アレイスターは仲間なんて呼べないけど。


「私たちみたいな神器の所有者があと三人……もし、仲間にできそうなら仲間にしない? もしこの先で、『火星』のアイレースと戦う前に出会えれば、だけど」

「「…………」」

「な、何よ」

「いや……お前がそんなこと言うなんてな」

「意外だねぇ」

「う、うるさいわね……で、どうなの?」

「別に、オレは構わないぜ」

「僕もいいよ。でも……敵になる可能性もある、そのことを忘れないように」

「わかってるわ」


 アルティニアまで、もう少し。

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