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剣の存在しない魔法世界で、私だけが「斬る」という概念を持っている~刀姫転生、世界法則を一太刀で否定する~  作者: さとう
第二章

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BOSS・『木星』のユピテル①

 深呼吸をすると、周囲が良く見えた。

 樹木。闘技場の地面を突き破り、立派な木が何本も生えている。

 樹齢何年かな……百年以上なのは間違いない。そんな木が二十本以上、いきなり生えてきた。

 攻撃の意思なのか、それともまだ『可愛い』なんて抜かすのか。

 ユピテルは、ダメージらしいダメージはない。さっき指を切断した時も、すぐ治った。

 私は剣を向ける。


「あなた、どうすれば死ぬの?」


 質問する。こいつならペラペラと喋りそうな気がした。

 だが、ユピテルは首を振る。


「無理だね。『八極星(ベツレヘム)』は原初の天上人。神の世界を見守りし者たち。不老不死。死ぬことはない。私は、完璧な存在なのさ」

「だから、そんなに余裕なのね。でも……この刃でなら、死ぬかしら」


 オウマの刃を見せつけると、ユピテルの眉がピクリと動いた。

 私の持論だけど……『不老不死』なんてない。

 命ある者には必ず『死』がある。アレイスターの話だけど……天上人は食事もするし、睡眠も取るし、性欲もある。完璧って言うなら、食事の必要なんてないし、排泄だってしない。


「斬ればわかるかしら、ね」

「……やれやれ。仕方ないな、少し……わからせてあげるよ」


 ユピテルが指を鳴らすと、闘技場全域に爆発的に『樹木』が生えて来た。

 でかい、しかも成長速度が異常だ。


『イチゴ、見失う!!』

「わかってる!!」


 樹木がカーテンのようになり、闘技場がまるで『森』のようになってしまった。

 私は木々の間を走り、ユピテルを探す。


「チッ……」

『樹木。それがこいつの能力か……天上人は「天力」を使って戦うって聞いたが……こいつはそんな次元じゃねぇ。斬れるか?』


 私は双刀で木を斬る。


「斬れる。というか、普通の木ね」

「恐らく、膨大な天力をエサにして、樹木を急成長させているんだろうねえ」


 木々の間から、アレイスターが表れた。

 こんな状況でも変わらず「やあ」なんて手を上げて近づいて来る。

 私は変身を解くと、近くの木がいきなりへし折れ、ハイドが現れた。


「おう、無事だったか」

「荒っぽいねぇ。木々に罪はないだろうに」

「うるせ。おいイチゴ、お前は無事か?」

「ええ。とりあえず……近くに気配はないわね」


 ハイドも変身を解き、近くの木を軽く蹴る。


「木を成長させる能力か。大したことねえ……って言いたいが。この樹木がデュミナス帝国全域に生やせるとかなら話は変わってくるな」

「そうだねぇ。まあ、できると思うよ。彼、ヒトが好きみたいだし、この国を壊したくないとは思うけど……でも、壊すと決めたらあっさり全部壊しちゃいそうな気もするねえ」

「……この闘技場のある区画。被害をここだけに抑えるわ。アレイスター、オウマ、三人でやるわよ」

「ああ」

「え~? だから僕は研究者で医師。野蛮な戦いは、喧嘩好きと狩人に任せたいねぇ」


 アレイスターは文句を言い、ハイドは睨む。

 だが、私は言う。


「じゃあ好きにしなさい。ユピテルを殺したら、身体は灰にするから」

「えっ」

「ハッ、そりゃいいな。イチゴ、情報は?」

「お喋りなヤツだったから、すぐわかったわ。アルティニアっていうところにいるみたい」

「アルティニア? 隣の領地だな。よし……先が見えた、感謝するぜ」

「ええ。あとは、この状況を切り抜ける」

「ちょ、待ってくれないかな」


 珍しく、アレイスターは困ったような、慌てたように言う。


「あら、あなたまだいたの? 何か用事?」

「いや……あ~、わかった。わかったよ……僕も協力するよ。やれやれ、イチゴくんにしてやられたよ」


 すると、近くの樹木が動き出す。

 そして、葉っぱが振動し、声が聞こえて来た。


『やあやあ。少しは反省したかな?』


 ユピテルの声だ。


「何を反省するの? それに、反省するのはあなたの方じゃない? 謝り、二度と人の世界に干渉しないっていうなら、許してあげないこともないけど?」

『ははは。気が強いねぇ。まあ、私も大人げなかったよ。だけど、生意気なキミは少し反省が必要だね。しばらく、この森の中で迷うといい』

「あなた、このまま逃げるつもりじゃないでしょうね」

『逃げる? ははは、なぜ私が逃げる必要があるんだい?』

「そうよね。ふふ……そうねぇ。もし逃げたら、私たち……そのままアルティニアに行って、『火星(マーズ)』に言うわ。ユピテルに戦いを挑んだけど、逃げられた……って。そんなこと言われたら、あなた未来永劫、『火星(マーズ)』に馬鹿にされるでしょうね」

『…………』


 ユピテルから返事はなかった。

 そして、葉っぱが急速に枯れ、それ以降何も言わなかった。

 アレイスターは笑う。


「あっはっはっは!! ああ面白いねぇ。イチゴくん、ああ言えばユピテルが逃げないと思ったのかい?」

「なんとなくね。ああいう手合いは自分より下の存在に馬鹿にされても何も感じないけど、同列、各上に言われるのは我慢できないタイプ……そう思っただけ。ま、正解だったようね」


 こう見えても、人生経験は豊富なのよね。

 どうやら、ユピテルも同じのようだ。


「さて、あとはここを抜けて、ユピテルを探してブチのめすだけだ」


 ハイドが拳をパシンと合わせる。

 アレイスターも帽子を被り直し、私は髪を払う。

 すると、木々が脈動し、枝が不自然に伸び始めた。


「どうやら、やる気になったようね」


 枝が槍のように鋭利になる。そして、不自然なくらい伸び、動き始めた。


「さあ、始めましょう。ここからが……本当の闘いよ」


 私、アレイスター、ハイドが変身し……木々が襲い掛かって来た。


 ◇◇◇◇◇◇


 まずは何をすべきか? 


「さて、僕から情報敵強をしよう。天上人は無敵ではない、天力という魔力に似た力を持ち、飛行のための翼を持つ以外は、僕らとそう変わりない存在だ」


 アレイスターが帽子を押さえながら言う。

 私に向かって先端の鋭い枝が飛んできたが、私は全て斬り払う。

 ハイドは、右腕から細い筒を出し、それを木に向けて火を放つ。木々は燃えるが、表皮からジワジワと水が染みだし、すぐに消えてしまった。


「チッ、燃やせると思ったんだがな」

「続けていいかい? 天上人はもともと、天力を持つ。それを、頭にあるリングで増幅させているんだね。まさかのまさか、あのリングは外付けの増幅装置だったよ。『天力輪』と……全く、センスのない名前だねぇ。位の高い異端審問官ほど、高性能なリングを手にすることができて、天上界では身分を見極めるための道具でもあるようだ。ははは、見栄っ張りなところはヒトと変わらないねぇ」


 アレイスターは、枝をひょいひょい躱しながら喋る。

 

「回りくどいわね……何が言いたいの?」

「つまり。ユピテルも天上人である以上、ヒトの性質を持つ存在ということだよ。頭、心臓を潰せば死ぬ。不老不死など言ってるけど、そんなものは存在しない。調べたところ、天力というのは細胞の劣化を抑える力があるから、不老の原因はそれだろう。つまり……ただ長生きなだけさ」

「殺せる、ってことね」

「ああ。心臓、脳を完全に破壊すれば死ぬと思うよ。ユピテルや他の『八極星(ベツレヘム)』は、これまでの人生で、そこまでのダメージを負うような経験は恐らくない。死なないっていう自信だけで、死ぬほどの傷を受けたら死ぬってことが理解できれない。イチゴくん、キミなら教えられるんじゃないかい?」

「そうね。そのために……私の刃がある」


 オウマの能力、『万物両断』を使えば斬れる。

 私の剣技、オウマの能力を合わせた斬撃を心臓に叩きこんで首を両断してやる。

 すると、ハイドが言う。


「……問題は、ここから出られるか、だな」


 森は、規模を広げていく。

 瓦礫が崩れるような音も聞こえて来た……たぶん、闘技場全体に木々が生え始めているんだろう。


「さあて、ワクワクするねえ。イチゴくん」

「そうね……ふふ、斬り応えがあるわ」


 相手は、神様じゃない。

 私の刃で、斬り伏せてやる。

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