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剣の存在しない魔法世界で、私だけが「斬る」という概念を持っている~刀姫転生、世界法則を一太刀で否定する~  作者: さとう
第二章

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試合開始

『あの青いやつ……異端審問官だな。しかも、かなり強い……異端審問官の中でも上位に位置するやつだろ』

「かもね。でも……私の方が強いわ」

『だな。まあ、油断と慢心には』

「気を付ける。さて、切り替えるわ」


 とにかく、これから大会だ。

 というか……異端審問官に見つかった以上、情報共有されているとみて間違いない。『管理者(アドミニストレータ)』の介入は確実ね……まあ、斬ればいいけど。

 私は控室へ。十人ほどおり、視線が集中する……が、ため息を吐くしかない。


『大した事ねぇなあ』

「……同感」


 たった今、青髪の異端審問官と顔を合わせたせいか、控室にいる人たちがどうも雑魚に見える。

 十人いるけど……十秒あれば全員殺せそう。

 オウマを手にし、私は近くの椅子に座った。

 すると、一人の男が接近してきた。


「ガキ、しかも女か。ここがどこだか……」


 私は無言でオウマを抜刀し、男の喉元に突きつけた。


「近づかないで」

「……ッ」

「昂ってるの。まだ……死にたくないでしょ」


 殺気を込めた目で睨むと、男は黙りこんで下がる。

 まずいな……あの青髪の男に会ったせいなのか、かなり昂ってる。

 早く戦いたい、早く斬りたい……ものすごく、身体が疼いてきた。


『イチゴ、落ち着けよ』

「わかってる、わかってるわ……でも、止められないのよ」


 私は笑っていた。

 きっと、お姫様みたいな綺麗な笑顔じゃない。醜く歪んだ毒の花みたいな笑みだ。

 私は、昔の私に近づきつつある。

 それがとても嬉しく……同時に、少しだけ怖かった。


 ◇◇◇◇◇◇


 ◇◇◇◇◇◇


 一方、ハイドとアレイスターは。

 観客席を二つ確保し、周囲の状況を確認していた。

 椅子の数は二万以上。出入口は五十以上ある。出入口の幅も広く、一斉にでもなければ混雑することは少なそうな場所だった。

 アレイスターは、ちょうど対面にあるガラス張りの個室を指さす。


「あそこが『貴賓室』だね。情報によると、『木星』のユピテルは毎年、あそこから試合観戦をするらしい。今回は一級異端審問官を二人連れての観戦だ」

「つまり……その二人を排除して、ユピテルを殺すのか」

「うんうん。いや~、一級異端審問官で残念だよ。『八極星(ベツレヘム)』の護衛だし、特級を期待したんだがねぇ」


 アレイスターが残念そうに言うと、ハイドが眉をひそめる。


「……特級?」

「あれ、知らない? 特級異端審問官は、『管理者(アドミニストレータ)』の中では『八極星(ベツレヘム)』に次ぐ四人の審問官だよ。せっかくなら、特級異端審問官の身体が欲しかったんだけどねぇ」

「……お前、ホント気持ち悪いな。とにかく……最優先事項は『木星』の抹殺。それと、『火星』の居所を聞き出すことだ」

「はいはい。イチゴくんもだけど、キミもかなり野蛮だねぇ。戦わずとも、他にやり方なんていくらでもあると思うよ?」

「無理だ。オレは異端者だぞ……この世界に転生した時点で、『管理者(アドミニストレータ)』たちにマークされる。普通なら、イチゴみたいに記憶を抹消されて生かされ、危険性がないと判断された場合は輪廻転生に戻される。前世の記憶を取り戻すことなんて普通はありえねえし、見つかれば粛清される」

「まあ、そうだねぇ」

「だから、やるしかねぇんだ。対話なんてできねぇ。殺して、伝えるしか……」


 ハイドはかなり入れ込んでいた。

 アレイスターは「ふむ」とハイドを観察する。


「冷静じゃないねぇ。イチゴくんもだけど、キミたちは感情的だ。もう少し、穏やかにいこうよ」

「……お前、何なんだ?」

「んん?」

「異端者のくせに、いろいろ知ってるし、記憶も変わってないんだろ? 自分の前世のこともよく知ってるし……どうやって天上人を欺いてるんだ?」

「さあねぇ。フフフ……それは内緒かな?」


 アレイスターは、胡散臭い笑みを浮かべてウインクした。


 ◇◇◇◇◇◇


 ◇◇◇◇◇◇


 目を閉じ、研ぎ澄ましていると……係員が控室に入って来た。


「これより第一試合を始める。名前を呼ばれた者、会場へ!! 登録者名イチゴ!!」

「…………」


 私だ。

 立ち上がり、ゆっくりと係員の前へ。

 登録証を確認し、会場へ続く通路へ案内された。


「この先に進め」


 そう言い、係員は下がる。

 私は頷き、変身する。

 欠けた仮面、白くなる髪、ジッパー付きの黒衣、腰のベルトには二本の刀、『六天魔王』……この姿に変わると、落ちつく。


『それでは第一試合!! 腕試しで大会参加!! 得体の知れない魔法を使い戦う謎の美少女!! 今大会最年少、イチゴ選手ー!!』


 恥ずかしい紹介ね……偽名で登録すればよかったかも。

 会場内の声援が私に叩きつけられる。これほどまでの喝采を浴びたことはないから、かなり新鮮な気持ち……正直、悪くないわ。

 私は舞台に上がり、待つ。


『きたきたー!! こちらは前回優勝者、希少属性『光』を操る魔法戦士、クレイス選手だ!! 甘いマスクに女はメロメロ、その強さに男もメロメロ、隙のない魔法の申し子が、今回も参戦だぁぁぁ!!』


 クレイスが手を上げると、会場内はさらに盛り上がった。

 私以上の応援……ファンも多いのね。

 希少属性の『光』ね。興味はあるけど……でも、この人って。


『第一試合なのでルール確認だ!! ルールは簡単……死んだら負けだ!! 大会参加条件のひとつに『命を失う場合もある』と書いてあるから、今更無理でしたはナシだぜ? 死にたくなければギブアップだ!! 文句はないよな?』


 ないわ。

 そもそも、戦いっていうのは命のやり取り……ギブアップしますって言うだけで殺されないと思っているなら、かなりの平和ボケね。そして、ギブアップするからと見逃したやつは、背後からそいつに刺される可能性を考えていないやつ。

 決して、ためらわない。

 でも……ルールがあるなら、それに従うわ。


『準備はできたな? それでは、第一試合……始め!!』


 大会が始まった。

 私は双刀を抜刀し構えを取る。

 クレイスは……鞭のような、しなる杖を私に向けた。


「ギブアップは早めに。さもないと……殺してしまう」

「…………」

「さあ、見えるかな?」


 ヒュンヒュンと杖を振ると、まるで鞭のようにしなり……先端が爆発的に増えた。

 

『なるほどな。光属性……屈折率を操って幻惑してる。気を付けろよ』

「ええ」


 まるで、百本の鞭を一人が同時に振るっているようだ。

 クレイスは腕を振り叩きつける。


「ッシャアア!!」


 私はバックステップする。地面が爆ぜ、石畳に細かい傷が付いた。

 そして、クレイスはクルクル回転しながら鞭を振るう……かなり離れているけど、私はゾッとしてしゃがみ込む。

 すると、頭上を鞭が通り過ぎる……おかしい、二十メートルくらい離れたので、届いてる。

 

『あの杖に仕掛けがあるな。普通の杖みたいに見せかけて、実際は伸びるよう改造した杖。さらに、光魔法の幻惑で数を誤魔化し、遠くからの滅多打ち……つー戦法か』

「なら、簡単ね」


 私は身体を低くし、クレイスに突っ込む。


「はは、それは悪手だ!!」


 鞭が私を打ちのめそうと襲い掛かる。

 数が半端ではない。でも……関係ない。


「『塵鵺(ちりぬえ)』」

「なっ……っぎゃああああああああああ!!」


 ボトリと、クレイスの両手が手首から切断され、石畳の上に落ちた。

 私は刀をクレイスの喉に突きつける。


「光魔法で数を増やし幻惑を見せてるようだけど……その全てに対応されたら、本物も斬れる。私がやったのは、幻惑を含めた全ての鞭を斬った……まだやる?」

「う、う……ま、参った」


 クレイスが崩れ落ち、私は刀を鞘に納めた。

 そして、しばし静寂……ハッとした実況が叫んだ。


『しょ、勝者、イチゴー!! なんと、圧倒的!! 前回優勝者を寄せ付けない強さを見せたー!!』


 再び会場が湧く。

 私は喝采を浴び、控室に戻るのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 ◇◇◇◇◇◇


 一方、貴賓室にて。

 スイエルは目を見開き、ユピテルに言う。


「ユピテル様、あれは異端者……そして、神器です!!」

「うん、そうだね」


 ユピテルは、菓子を食べながら肘をつき、うんうんと頷いていた。

 パラシエルが言う。


「異端者を捕縛し、神器を」

「ダメだって。この大会が終わってからでいいでしょー? それに……可愛いじゃないか。あんな女の子が大会に参加して、自分の力を試そうとしているなんて」

「し、しかし……神器は、神の創造物。その力は、神すら滅せることができると……」

「でも、人間が使っている。大丈夫大丈夫、今は大会を楽しまないと」

「ゆ、ユピテル様……」


 スイエル、パラシエルが納得していないのか、それでも何か言おうとした、が。


「しつこいなあ」


 その一言で、二人は黙りこむ。

 『八極星(ベツレヘム)』という、神が直接創造した原初の天上人の苛立ち……そんなものを受けようものなら、ただの天上人である二人は消滅だってあり得る。

 二人は「も、申し訳ございませんでした」と頭を下げ、黙り込むしかなかった。

 ユピテルは言う。


「この戦いが終わったら好きにしていいからさ、今は楽しもうじゃないか」

「「…………はい」」


 スイエル、パラシエルの二人は、返事をすることしかできなかった。

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