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剣の存在しない魔法世界で、私だけが「斬る」という概念を持っている~刀姫転生、世界法則を一太刀で否定する~  作者: さとう
第二章

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シエスタ姫の言葉

 報酬……どうしようか迷っていると、シエスタ姫、グレーテル姫が来てくれた。シエスタ姫が察してくれたのか「そろそろ食事の時間ですね。イチゴ様も一緒に」と言ってくれた。

 おかげで、皇帝とその家族と食事……緊張したけど、なんとか無事に終わらせた。

 泊って欲しいとのことだったので、甘えることにした。


「ね、ね、イチゴ。一緒にお風呂行こ!! お城のお風呂、すっごいんだよ!!」

「えっと……」


 王族と一緒に風呂なんて、許されるのかな。

 シエスタ姫を見るとにっこり微笑んで頷いた……まあ、いいのかな?

 というわけで、三人でお風呂……と思ったのだが、なんと王族専門の洗体師が十名、一緒に来た。


「えと……」


 シエスタ姫、グレーテル姫にとって当たり間なのか、ドレスを脱がしてもらってる。

 私の服も脱がそうとしてきたので、謹んで遠慮する。

 服は自分で脱ぐと、そのまま持っていかれてしまった……ちなみにオウマは刀のまま、脱衣所に布で包んで置いてある。


「さ、行きましょう」

「あ、はい……」


 全く裸身を隠さずに浴場へ……なんだか私だけ恥ずかしい。

 タオルで身体を隠し、浴場内へ。


「わあ……」


 広い。

 大理石の浴場だ。浴槽はとんでもなく広く、壁の至る所からお湯が滝のように流れ出ている。綺麗なランプが浴場内を照らし、お湯からは香油の香り、花弁まで浮かんでいた。

 見とれていると、二人の姫は洗体師に身体を洗ってもらっていた。私の方を三人の洗体師が見てる……うう、これ、洗ってもらわないとダメなのかな。

 

「イチゴ、どうしたの?」

「どこか具合でも……?」

「あ、いえ」


 シエスタ姫、察しはいいけど、なんで私が困惑してるかわかってない。

 まあ……生まれてずっと、お風呂では誰かに洗ってもらうのが普通の生活だったみたいだし……誰かに洗ってもらうなんて、この歳では恥ずかしい。

 すると、洗体師さんがじれたのか、私のタオルをはぎ取った……は、速い!!


「さ、お身体と髪を洗いますね」

「あ、あの、自分で」

「さあ、こちらに座ってくださいね」

「まあ、綺麗な黒髪」

「お身体も綺麗ですね~」

「あ、あの、その、へんなとこ触らないでくださいっ!!」


 お風呂がこんなに疲れるなんて……私、王族の生活はムリ!!


 ◇◇◇◇◇◇


 夜、シエスタ姫の部屋でお喋りしていた。

 グレーテル姫は喋っているうちに寝てしまい、シエスタ姫のベッドへ。


「この子、自分の部屋があるのに、よくここで寝ちゃうんです。ふふ……もう十四歳なのに、姉離れできない子」

「……可愛いですね」

「ええ。本当に……」


 シエスタ姫は、グレーテル姫の頭を優しく撫でる。

 慈愛。でも……彼女は優しいだけじゃない。厳しさも持ち合わせている。


「私は、この国の次期女王です。妹はきっと、国外に嫁に出されるでしょう。楽しい時間は、もうすぐ終わります……だから、甘やかしたくなっちゃうんです」

「…………」

「イチゴ様は、私をどう思いますか?」


 いきなりの質問。

 まっすぐ私を見ていた。ここは、誤魔化しちゃダメな気がする。


「王族としての気品を持ち、威厳もあるように思われます。シエスタ姫が女王となれば、この国はますます豊かになるでしょう」

「……そうですね。私は、この国を豊かに、笑顔溢れる国にしたいと思っています。それに、支えてくれる人もいますし」

「それって……婚約者ですか?」

「ええ。その……いい人なんです。幼馴染で……」


 頬を染め、モジモジするシエスタ姫……ああ、政略結婚とかじゃない、恋愛結婚っぽい。幸せそうで何より……うん。

 結婚……私は興味ないし、無縁かな。


「彼は王族入りしますけど、王はデュミナスの血筋と決まっていますので、王にはなれません。私が女王で、彼が宰相として支えて……って、す、すみません、こんな惚気みたいな」


 アワアワと、シエスタ姫は慌てる……かわいい。

 私はクスっと微笑み、手で制した。

 シエスタ姫は頬を染め、深呼吸して紅茶を飲んで落ち着く。


「うう、私の馬鹿……」

「ふふ、仲がよろしいようで」

「そ、そういうイチゴ様はどうなんですか? アレイスター様とは……」

「…………」

「ご、ごめんなさい」


 あれ……私、どんな顔してるのかな。シエスタ姫が申し訳なさそうにしてる。

 というか、アレイスター……あいつと恋仲なんて無理だし、あいつは人を実験素材にしか見ていないし、性欲とか死んでる気がするわね。

 シエスタ姫は軽く咳払いし、真面目な顔になる。


「イチゴ様。武闘大会に出るんですよね」

「ええ」

「あと九日……どうするのですか? 魔法の訓練をするなら、魔法騎士団の演習場を一つ、貸切ることもできますが」

「大丈夫です。冒険者ギルドで、討伐依頼を受けて魔獣狩りをするつもりです。まだまだ、本来の力にはほど遠いので……」


 戦いの勘を取り戻さないと。

 前の世界、晩年のころの実力……研ぎ澄まし、オウマの能力がなくても全てを斬ることができた。三万の軍勢を一人で斬った時みたいに、研ぎ澄まさないと。


「……イチゴ様。一つ、いいですか?」

「はい?」

「……あなた様は、大会参加の他に、何か目的があるのですか? 例えば……『木星(ジュピター)』のユピテル様、とか」

「…………」


 この人は、優しくて厳しくて、見る目がある。

 無言でいたせいで、すでに気付かれた。

 だが、シエスタ姫は何も言わない。


「……闘技場区画内でしたら、仮に全壊しても国営には影響がありません。住人の避難ルートなども倍に増やし、当日は警備メインではなく、避難誘導をメインとした布陣を組みます」

「……シエスタ姫?」

「先ほど……マルセリア王国から報告がありました。白髪、黒衣、仮面をつけた二本の杖を振るう何者かが、三級異端審問官を殺害し逃走した……と」

「…………」

「私は見ました。私たちを助けたイチゴ様が……そのようなお姿に変わったところを」


 変身したところを見られたのは、その時だけ。

 これは……誤魔化せないな。


「……私は、シエスタ姫やグレーテル姫が思うような、立派な人間ではありません」

「…………」

「多くの人間を殺した殺人鬼。『斬る』ことに魅了された、救いようのないクズです。私は……」

「イチゴ様」


 シエスタ姫は、私の手をそっと握る。


「……アナタの手は、こんなにも温かい。私たちを助けてくれた、優しい手です」

「……シエスタ姫」

「どうか、お好きなように……後悔しないよう」


 シエスタ姫は「そろそろ寝ましょうか」と、ベッドに入る。

 ていうか……え、私も同じベッド? うそ?


 ◇◇◇◇◇◇


 翌日。

 城から出ると、アレイスターが出迎えてくれた……最悪。


「やあ、楽しい時間を過ごせたようだねぇ」

「うるさいわね。さて……冒険者ギルドに行くわ」

「おや、なんだかやる気に満ちているねぇ」

「ええ……『木星(ジュピター)』のユピテルを斬るために、もっと研ぎ澄ませないと。ハイドは?」

「彼なら、『鍛錬する』と冒険者ギルドに行ったよ。彼も冒険者のようだからね」

「……行くわよ」


 改めて、やることがはっきり見えた。

 闘技大会に出て、『八極星(ベツレヘム)』の一人『木星(ジュピター)』のユピテルを斬る。

 そのために、私はさらに研ぎ澄ますことにするのだった。

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