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剣の存在しない魔法世界で、私だけが「斬る」という概念を持っている~刀姫転生、世界法則を一太刀で否定する~  作者: さとう
第二章

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兄と妹

「…………ぅ」


 身体が重い……風邪を引いた時みたいな感覚。

 目を開けると、オウマの背中が見えた。

 私が起きたのに気付くと、だるそうに私を見る。

 

「おう。起きたか」

「……オウマ」

「寝てたのは五分くれーだな。ま、俺の能力を使った反動だ。使い続ければ慣れるとは思うが、あんま使うなよ。ここぞってときに使うようにしておけ」

「……そうね」


 周りを見渡すと、木陰だった。

 戦った平原の近くにある木の下で、柔らかな風が心地よい。

 目を閉じ、しばし風を感じている。


「おお、起きた起きた。ふふ、可愛い寝顔だねぇ。殺人鬼の寝顔は天使、かな?」

「……最悪」


 アレイスターの顔を見たら、爽やかな気分が吹っ飛んだ。

 

「いやあ、見てくれ。あの子、マキナちゃん……ふふ、トリスに懐いちゃって、まるで姉妹のようだ」


 銀血で作った椅子テーブルに座ったトリスの隣にはマキナがいて、クッキーをモグモグ食べていた。トリスもまんざらではないのか、マキナの頭を撫でているし……何があったのかな。

 すると、近くから声。


「……ケガ、ないか」


 振り返ると、木にハイドが寄りかかっていた。

 私は立ち上がり、首を軽く回す。


「ええ。あなたの攻撃というより、能力を初めて使ったせいで昏倒したみたい。気にしなくていいわ」

「そうか」

「……それで、私が負けた以上、あなたの質問に答えるわ」

「……ああ」

「ハイドでいい? ハイド……あなた、誰を探しているの?」

「…………」


 ハイドは、マキナを見て、そして私を見て言った。


「オレとマキナの故郷を……世界を滅ぼした異端者、そしてそいつを操っている異端審問官……『八極星(ベツレヘム)』の一人、『火星(マーズ)』を司るアイレース……あの女を殺す」


 ハイドは、歯が砕けんばかりに噛みしめていた。

 

「お前ら、『機械』ってわかるか?」

「…………??」


 アレイスターを見ると、肩をすくめて首を振る。


「マキナは、『機王デウスエクスマキナ』っていう神器でな、能力は『兵器の再現』だ。オレのいた文明の機械兵器を再現できる。でも……オレは機械オンチでな。機械兵器とかサッパリでよ……四肢にブースター付きのアームズで殴る蹴るくらい、灼熱砲くらいの再現が精いっぱいだ」

「「…………」」

 

 何を言ってるのかさっぱり……私が『斬る』ことを当たり前に知ってるのと同じ、ハイドにとって『キカイ』は当たり間のものなのかな。

 アレイスターは、興味深そうに聞く。


「それで? きみはあの子とどういう関係だい? どこで拾ったのかな?」

「……マキナは、オレがガキのころから近くに住んでた。ボロ小屋に一人暮らしで、ウチで引き取ったんだ。でも……あのナリから成長しないことが不思議でな、調べたら人間じゃねぇことに気付いた。でも……家族だった」

「……妹、みたいな?」

「ああ。オレの可愛い妹だ」


 ハイドは、トリスに頭を撫でられているマキナを、優しい顔で見ていた。

 だが……すぐに表情が変わる。


「だがある日、ヤツがやってきた」

「……ヤツ?」

「ほほう、きみがこの世界に来ることになった元凶だね!! わくわく」


 アレイスターを黙らせる。

 ハイドは、拳を寄りかかっていた木に叩きつけた。


「アルシエノ……あいつが、オレを……裏切った。あいつは、神器に魅入られて……『火星』のアイレースに魂を売った!! クソ……あいつは、オレの家族を殺して、世界を崩壊させて、アイレースと取引して、この世界に来た。異端審問官として、アイレースの右腕としてな……!!」

「…………アルシエノって?」


 ハイドは、本当に辛そうな声で言った。


「オレの幼馴染……だった」

「ほほー、幼馴染が神器に魅入られて豹変し、アイレースに忠誠を誓ったと。つまり……キミの世界が崩壊した責任をキミに押し付け、キミは異端者としてこの世界に来た、というわけかい」


 アレイスターがわかりやすくまとめると、ハイドは頷いた。


「アルシエノはオレが殺す。アイレースも殺す。オレが闘技大会に参加しようとしている理由は……『木星』のユピテルを殺して、どこかにいるアイレースとアルシエノに伝えるためだ。オレは、お前らを殺す……ってな」

「う~ん、キミもブッ飛んでるねぇ。てか、死ぬよ?」


 アレイスターが言うと、ハイドが睨む。


「キミ、異端者はともかく『八極星(ベツレヘム)』を馬鹿にしてるよ? あの超常の存在は、その気になれば星一つ軽々砕ける強さを持つんだから、いくら神の創造した神器を持とうとも、敵うわけない」

「あ? だから何だ」

「死ぬって言ってるの。ま、僕はどうでもいいけどね」


 そして、ハイドはアレイスターの胸倉を掴んだ。


「テメェに何がわかる。やってみないとわかんねーだろうが」

「そうだね。まあ、異端者はどうにかできるんじゃない? でも、『八極星(ベツレヘム)』はムリ無理」

「そうとも限らないわよ」


 私がそう言うと、男二人が注目する。


「ここ、神の創造した世界なんでしょ? だったら……この世界を破壊できるくらいの強い力は出せない、出さないはず。それだったら、その『八極星(ベツレヘム)』とかいう天上人との戦えるんじゃない?」

「おーっと、確かにそうかもねぇ」

「……オレは最初からそのつもりだ」


 ハイドは、アレイスターを離す。


「お前ら、何でもいい。神器のこと、異端者のこと、天上人のこと……知ってること、何でも教えてくれ。戦うための情報が欲しい」

「…………」

「僕は別にいいけど、大した情報はないよ?」

「それでもいい。どこにいるかわからねぇが……さすがに『木星』をぶっ殺せば、アイレースとアルシエノも反応するだろ」

「…………ねえ、ハイド」


 ハイドは「あ?」と私を見た。


「あなたの復讐、付き合っていい?」

「あ?」

「はい? イチゴくん、キミ……そこまでお人好しだったのかい?」

「違うわ。どうせ私も天上人に追われる立場だし……どうせなら、その『木星』とかいう天上人を斬ってみたいわ。オウマ」

「あん?」


 クッキーを食べていたオウマがこっちを見た。


「あなたの能力、何でも斬れるのよね」

「おう。神も斬れるぜ。ま、俺は七つの神器で最強の『六天魔王』だからな。がっはっは!!」

「はあ? あなたが最強? 笑わせるわね」

「あ? んだ不細工ブス、テメェのクソ能力で俺に勝てると思ってんのか?」


 喧嘩を始めたオウマたちを無視し、私は言う。


「私、斬ってみたいわ」

「「…………」」


 アレイスター、ハイドがポカンとしている……変なこと言ったかな?

 そして、アレイスターが笑い出した。


「あっはっはっはっは!! いや~、イチゴくんは面白いねぇ。まあ、僕としては天上人の、しかも『木星』の死体、脳が手に入るなら協力してもいいよ?」

「……お前、本気か?」

「ええ。本気……まあ、そんなことしたら間違いなく、この世界で追われるわね」

「だねぇ。それでもいいのかい?」

「別に問題ないわ。来るなら斬ればいいし……ハイド、あなたは?」

「オレは、復讐できればどうでもいい……マキナも同じ気持ちだ」

「決まりね」


 私は言う。


「ああ、でも闘技大会は出たいわね。あなたほどの強者は出ないでしょうけど……」

「……オレは辞退する。『木星』が来るのと、お前らが手を貸してくれるなら……それでいい」

「じゃあ、私は参加する。ああそうだ、戦うなら国内じゃなく、外でね。私の知り合いのお姫様がいる国だし、被害は出したくないからね」

「わかった」

「ふふん、面白くなってきたねぇ」


 こうして、私たちは協力し……最強の天上人の一人を殺すために動き出した。

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